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その日以降、チェリルは黒猫をクロロさんと呼ぶようになった。
クロロの方も呼ばれたら反応するので、納得はしているらしい。
しかし怪我が治っていくにつれ、食事への不満は激しくなっていっている。
料理を出すと、びたんびたんと尻尾で床を叩くのだ。
けれどチェリルも同じものを食べるせいか、結局はしぶしぶ食べている。
通常の食事に戻ったときは、やっとかと言うような半眼を向けてきた。
チェリルだって同じ気持ちだけれど、それを言ってもツンとそっぽを向かれてしまった。
クロロを拾ってから、今日ははじめて町に来た。
怪我が心配で、魔法の練習を家の前でやる以外では外に出なかったのだ。
さいわい備蓄はいっぱいあったので問題ない。
クロロを肩に乗せたまま、いつもの薬屋に行くとこんな瞳も毛並みも真っ黒な猫は珍しいと言われた。
たしかに来る途中に見た猫とは一線を画している。
どこか上品なのだ。
「クロロさんて、もしかして飼い猫?」
「ンナ」
帰宅しながら尋ねると、ツンとそっぽを向かれる。
肯定なのか否定なのかわからない。
「飼い主が現われたらお別れかな……それはちょっと寂しいな」
ポツリと呟けば、いつかのように尻尾が首筋を撫でた。
顔はそっぽを向いているくせに、優しいのだ。
町の入り口まで向かっていると後ろから、聞きたくもない声が聞こえた。
「おいチェリル、なんだそいつ」
無視してもついてくるのがわかっているので、大きくため息を吐きながらチェリルは振り返った。
予想どおりにプルートがいる。
その顔は訝しげだ。
視線の先はクロロだった。
「関係ないでしょ。私が来るたびに姿見せて、暇なの?」
どう考えても暇人の行動だ。
クロロもなんだこいつという顔をしている。
そうだよね、そんな顔になるよねとチェリルは心中でうんうんと同意した。
プルートはそんなチェリルの反応に、鼻に皺を寄せる。
あきらかに気に入らないという顔だ。
「使えない落ちこぼれに声かけてやってるんだ。感謝しろよな」
「ンナ」
プルートの偉そうな言葉に反応したのはクロロだった。
ハッと鼻で笑ったようなしぐさで、完全にプルートを見下した目で見ている。
その態度はもう王子様というより王様のように傲慢だった。
「なんかムカつくな、その猫」
「クロロさん、相手なんてしなくていいよ。行こ」
「待てよ!」
プルートの大きな声に、今度こそ眉をしかめて、しかしチェリルはプルートの方を見ずに早足で先に進んだ。
幼馴染なんて聞こえはいいけれど、町に来るようになってからずっとつきまとわれて嫌味を言ってくるのだ。
いい加減に嫌になる。
それももう終わると思うから、我慢だとチェリルは自分に言い聞かせた。




