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そんなことを考えながら歩いていると、二年生らしき集団とすれ違った。
「メルベルナ先生凄いよな」
「魔力豊富なんだろうな。あんな綺麗な魔力石を作れるなんて、並みの魔女や魔法使いには無理だよ」
「教師なんてもったいないけど、特別講師なら本職がほかにあるんだろうな」
そんな会話が耳に入る。
その内容に感心してしまった。
二年の教師だから知らなかったけれど、実力が飛び抜けているらしい。
それに彼らの言うように、特別講師というくらいだから期間限定だろう。
「何してた人なんだろ」
それはチェリルも疑問に思った。
何はともあれ、とりあえず教員室を覗いてみるかとそちらに足を向ける。
プルート達はすでにいなくなっていたので、教員室にいる可能性があると思ったのだ。
教員室に到着すると、とりあえずいきなり突進するのもなと思って、入口からなかを覗き込む。
きょろりと見まわしても、特徴的な長い髪の姿はない。
空振りかなと、戻るために振り返って心臓が止まりそうになった。
振り返ったら、近い距離にメルベルナが立っていたのだ。
(び、びっくりした)
悲鳴を上げなくてよかった。
警戒してた人間がいきなり背後にいたのだ。
そりゃ悲鳴だって出そうになるだろう。
「あら、どうしたの?」
にこりと微笑まれる。
けれどチェリルのなかではギュンギュンと警戒度が上がっていく。
メルベルナの目は、何故か怖い。
それにしてもとちらりとメルベルナの下半身をチラ見する。
そこには膝下までの長い長い髪の毛。
(長いよね。手入れとか大変そうなのに、何でそんなに伸ばしてるんだろ)
チェリルもツインテールをするくらい長いので、手入れの面倒さは知っている。
それにやっぱり目が怖い。
(値踏みっていうのかな。あと視線が胸元なのも気になるんだよね。女が女の胸にそんなに関心よせるかな)
しかも妖艶な美女が、言いたかないけれど棒切れのちんちくりんに。
「少し担任に用があったけど、いないみたいです」
やっぱり関わらないほうがいいかもしれないと、方針変換することにした。
スレッラにも言われたことだし。
それに、もし本当にトライワイトが関わっていて何かよくないことが起こったら心配だ。
「そう、残念だったわね」
「はい、失礼します」
「ああそうだ、猫ちゃん元気?」
メルベルナに背中を向けて歩き出したときだ。
声を投げかけられて、一瞬ドキリとした。
なるべく動揺を悟られないように、振り返る。
「言いましたよ、いなくなったって」
「そうだったわね。仲がよかったそうだから、どうして従を手放したのかしらと思って」
「興味が無くなったから解除したら、すぐにいなくなったんですよ。猫は気まぐれだから」
「主従魔法の気配は感じなかったのに不思議ね」
ギクリとチェリルは体を強張らせた。
そんなことがわかるのだろうかと思う気持ちと、はったりではないかという気持ち。
メルベルナはまるでからかっただけだと言わんばかりに、チェリルに背中を向けてしまった。
その背中に、今度はチェリルが声を投げる。
「先生は猫が好きですか?」
「そうね」
メルベルナが肩越しに振り返る。
「でも私が好きなのは、もっと極上なものよ」
にやりと口紅のひかれた口が三日月の形になる。
その顔にぞくりとしたものが背中を走って、チェリルは「失礼します」と言うなり、早足でその場を離れた。
極上ってなんだ。
(クロロさん目当てじゃないのかな)
極上の猫ではあるけれど、様子からしてクロロのことを指している口ぶりではなかった。
これ以上は関わらない方が賢明だろう。
「……なるべく見つけたら逃げよう」
そんな決意をキッパリと決めた。




