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そして課題も終わり自室に戻る。
トンと肩から床に降りたトライワイトに、気になっていたことを投げかけた。
「ねーライト、森に入れたのって猫だったからだろうけど、あんな傷だらけって何があったの?」
疑問その一をぶつけると、思いきり耳が後ろへ倒れた。
よほど嫌な話題らしい。
これは教えてくれないかなと思っていると、苦々しくトライワイトが話し出す。
「……やっかいなのに目ぇつけられたって言ったろ」
「うん」
「その厄介なクソババアが」
「クソババア」
年齢はわからないが、女性にその表現はどうなのだ。
「そう、そのクソババアが、もろもろ含めて俺の顔が好みだと」
「あー……ああ、うん」
わかる気がする。
ノーブルな雰囲気の綺麗な顔と傲慢さのある表情。
大概の人間は魅了されるだろう。
少年でもそうだったし、十九歳のトライワイトは相当なものだ。
特殊性癖の人間なんかに目をつけられそうだなと、おもわず遠い目になった。
「だから猫になって意地でも戻らなかったら、ああなった」
「ひぇ、だからあんな酷い怪我してたの? まだ追われてたりする?」
おそるおそる聞いたら肯定なのか半目になった。
ご機嫌斜め全開だ。
「あ、でも魔力少ないせいもあるんだっけ。新聞載るほど凄い人なんじゃないの?」
「諸事情」
「諸事情かあ」
これは教えてもらえないらしい。
けれど一応話せる内容は教えてくれるんだからいいかと、前向きに考える。
あとどのくらい傍にいてくれるだろう。
そんなセンチメンタルなことを考えていると、ぎゅむと鼻がつままれた。
おもわず目を瞠ると、十三のトライワイトがチェリルの鼻をつまんでいる。
大声を上げそうになって、ふがっとまぬけな声が出た。
手を離したトワイライトは小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
「なんで戻ってるの」
「ここ最近、ろくでもねぇこと考えてる気がしたからな」
ギクリと体が強張る。
言えるわけがない。
スレッラに嫉妬しているなんて。
すいとトライワイトが目を細めた。
どこか観察するような、落ち着かない目だ。
そして
ゆっくりと唇を開く。
「好きだって言ったら、お前どうする?」
「は!?」
突然の質問に、舌がもつれた。
「な、なに、なにを」
何故いきなりそんな質問が出るのだ。
動揺で体が熱くなる。
けれど、何故そんなことになるのかが、わからない。
十三歳のトライワイトを見て、なんとなく安心した。
今十九歳のトライワイトを見たら、何を口走ったかわからない。
「お、弟みたいに、そう! 家族! 家族だから、私も好きだよ」
「だろうな」
耳まで赤くなっている自覚があるけれど、なんとかそれだけ言うと、トライワイトはあっさりと引いた。
それにぽかんとしているあいだに、猫になってしまう。
「え、いまのなに……」
「別に」
にべもない。
かき乱すだけかき乱さないでほしい。
その日チェリルはトライワイトの言葉が頭をぐるぐるまわって、ちゃんと眠れなかった。




