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そんなことを告げると、トライワイトの眉間に縦皺がよった。
口が思い切りへの字に曲がっている。
「飴」
唐突の言葉。
それに首を傾げつつ、チェリルは丸缶を取り出した。
いつものように飴を一粒取ると。
「三つ」
「何でそんなに?」
「十九に戻る」
端的に答えると、トライワイトは受け取った飴を三粒口に入れて、いつものようにガリッと噛んだ。
その瞬間、一人の青年が現われる。
黒髪黒目のノーブルな外見。
繊細な顔立ち。
少年のときと変わらないけれど、綺麗さのなかに男らしい頬や体のラインがあり、色気すら感じられる。
チェリルよりも随分と背が高く、確かに年上だと理解できる姿だ。
そこにはまごうことなき美しい青年がいた。
「ひ、ひええぇぇ」
口からか細い悲鳴が絞り出た。
驚きすぎて絶叫なんて出来ない。
前髪を鬱陶しそうにかきあげる姿は、やはり高貴なのに少し乱暴さがあり、いつものトライワイトを思い出させた。
「これが元の姿だ」
「ち、ちが、こんなの詐欺だよぉ」
顔がどんどん真っ赤になっていくのがわかった。
とうとう両手に顔を埋めようとしたけれど、それを許してもらえず頬を手ではさまれてしまう。
また情けない悲鳴が出る。
いつもより近い距離の顔に、パニックでチェリルは倒れそうだと思った。
少年のときでさえ、なんだかちょっと動揺したのに、これは駄目だ。
心臓がわかるくらいに早鐘を打っている。
その反応に気をよくしたようにトライワイトが黒い目を細めた。
「俺にさんざん抱きついて、一緒に寝ようって言ってたんだよ、お前は」
再び詐欺だと思う。
耳どころか首まで真っ赤にしながらチェリルは目線が泳いだ。
(たしかに男だ用心しろだ言われてたけど!)
まさかあんな少年がこんな青年だとは思うまい。
「ちが、違うんだからね。私は小さいライトに、いまのひゃっいた」
とうとう舌を噛んでしまった。
「バーカ、ほら見せてみろ」
「ひゃあああ」
唇を指先で撫でられたとたん、チェリルは今度こそ甲高い悲鳴を上げていた。
衝撃で力の入らない手でトライワイトの体を押し返す。
手のひらに触れた胸の感触が固くて、体温もある。
あらためて男の人なのだと、チェリルはあうあうとどうしたらいいかわからないように喘いだ。
「ったく、だから言っただろうが」
トライワイトが黒猫へと戻ると、青年の姿が消えた。
「はひ」
まともな返事にならず、へろへろと座り込んでしまう。
正直腰が抜けた。
その様子にトライワイトが意地悪そうにぴこぴこと耳を動かす。
「夜は別のところに行ってやろうか」
その言葉にうぐぐと唸る。
自分より年上の青年なのだと意識してしまった今、その選択肢も入れるべきだろうかと思って、否と一言で決断した。
「……いやだ」
チェリルの反応に、意外だったのかトライワイトがぱちりとひとつ瞬く。
「どうりで着替えのときとか背中向けてたはずだわ」
「覗きなんて悪趣味なことするわけねぇだろ。ってかチビの姿でも男なんだから警戒しろって何度言ったと思ってんだ」
「もう一緒に寝れない……」
「おい人聞き悪りぃこと言ってんじゃねぇ。一回も寝てねぇだろ」
甚だ遺憾だと黒猫が尻尾をびたんびたん床に叩きつける。
結局もう寝ろというトライワイトの言葉にのろのろと頷くと、チェリルはさっさと支度をしてベッドに入った。




