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そんなことがあったなあと、翌日のスパルタ授業を受けながらチェリルは昨夜に思いをはせた。
トライワイトに朝確認したけれど、チェリルが自力でベッドに入ったと言われて寝ぼけていたのかなと思う。
でもあの体温は、嫌じゃなかったし安心したのに夢だったのかと首を傾げた。
「そういえばライトは魔力がずっとたまらないね」
「まあな」
「満タンにはならないって言ってたっけ。飴あるからいいけど、元から少ないの? 私より魔力ありそうだけど」
「言わねぇ」
取り付く島もない。
他人の魔力なんて、みんなぼんやりとしかわからないものだ。
魔力のコントロールが上手い者は出力を抑えていたりする。
まれに魔力が多すぎて出力を抑えても漏れ出る人間はいるらしいけれど、本当にまれみたいだしなあ、とトライワイトを見た。
(諸事情って言ってたから、元は私より魔力多いんじゃないかな)
あまり詮索してチェリルの前からいなくなったら嫌だなと思い、口をつぐむことにした。
その様子を感じ取ったのか、トライワイトが「休憩は終わりだ」と無情な言葉を吐く。
チェリルは頑張る気はある。
頑張る気はあるのだが。
「おら次は魔法歴史だ」
「歴史苦手だよぅ」
「魔法倫理にするか?」
「倫理はもっと苦手……」
「いいから、このページ頭に叩き込め」
トライワイトは上品な顔立ちなのにお口が悪いからギャップが凄いなと、相変わらずなことを考えながら「うぅー……」と教科書を見下ろした。
「ああ、そういや明日は薬学の座学テストと実技だったな」
トライワイトの言葉にチェリルは頷いた。
第二回目の薬作りの実習だ。
「用意された材料で好きな薬作っていいって言ってたから、今度は魔力増幅薬を作るつもり」
この薬は、使う薬草の種類は教科書にも載っている、よく使われるものとほぼ同じだ。
おそらく明日準備される薬草のなかにあるだろう。
一般的な薬のひとつであるけれど、流通しているものは効果は低いとトライワイトが以前言っていた。
チェリルの効能の高さとは雲泥の差らしい。
チェリルの作るものは本に載っている基本的な作り方とはまったく違う。
微量の隠し味的なものを数種類混ぜるのと、入れる量や順番が独特なのだ。
しかも材料の状態によって、つねに必要な量は変動する。
ほぼオリジナルだ。
そのことを考えて、チェリルは深くため息を吐いた。
「また適当って言われるかなあ。プルートに何か言われそうだけど」
「お前、俺用に作ってるんだから得意だろ」
「まあ……でも通常の作り方は自信ないよ。量ったりしたことないし」
「いつものでいいだろ。お前の作ったあれは見ただけで効能がわかる。よほどのぼんくらじゃなけりゃな」
暗にベヘルマをぼんくらの可能性があると言っている。
一応薬学の教師なのに。
「ああ、でも飴に出来ることは言うなよ。悪目立ちする」
「そうなの?」
「そうだ。言ったろ、そんなこと考える奴がそもそもいねぇって」
「そういえば」
そんなことを言われたなと思い、チェリルは「わかった」と頷いた。
「あとはいつもどおりしろ」
そう笑ったトライワイトの表情は不敵だった。




