出会い
それから、しばらくの月日が流れ、この世界来て1ヶ月が過ぎた。
「……ここだ」
リリィ達は今、草陰に隠れていた。
そして、何かを見つけると、
びゅんっ、と鋭い風が草の間を切り裂き…
「ギャッ!」
小型の魔獣がその場に崩れ落ちた。
「……よし」
リリィはゆっくりと息を吐いて立ち上がる。
最初の頃のような焦りはもうない。
「ピピッ」
ルーが上から降りてきて、嬉しそうに鳴いた。
「うん、ちゃんとできた」
リリィも嬉しそうに笑う。
倒した魔獣を手際よく処理していく。
無駄な動きはない。
「最初の頃よりはだいぶ慣れたかな〜」
ぽつりと呟く。
ルーが「ピピッ」とそうだねっと言うように鳴いた。
家に戻るとすぐに火を起こす。
火加減も、もう困る事はほとんどない。
食べる分だけにして、残りは凍らせて保存しておく。
じゅう、と良い音を立てて肉が焼けていく。
「いい匂い」
リリィは楽しそうに笑う。
「いただきます」
「ピ!」
手を合わせる。
森の探索も料理も魔獣狩りもこれがいつものリリィ達の日常になった。
そして、これから先も変わらずにこの日常が続くと思っていた。
この日もいつも通りのはずだった。
いつもと変わらない森のはずだった。
「……あれ?」
ふと、足を止める。
何かが引っかかる。
空気がいつもと少しだけ違う気がする。
「ルー?」
「ピ……」
ルーが低い声で鳴く。
いつもの軽い声じゃない。
何かを警戒している。
「……なにか、いるの…?」
リリィも警戒してゆっくりと周囲を見渡す。
魔獣の気配とは違う。
もっと……言いようの無い感じだ。
「……ルー、後ろは任せたよ」
「ピ…」
リリィは草をかき分けながら、奥へ進む。
そして——
「……え?」
思わず声が漏れた。
なぜならそこには人が倒れていたからだ。
黒い髪。
血で濡れた服。
地面には、赤い跡が広がっている。
「……人?」
この森で自分以外の人を見た事がないリリィはとても混乱した。
しかも——
「……ひどい、ケガ…」
とても傷だらけだった。
腕も、肩も、お腹にも深い傷が見えた。
服は裂けていて、そこから見える肌も血に染まっている。
「……」
恐る恐る一歩、近付く。
「ピ……」
ルーが低く鳴いた。
「……大丈夫」
ルーを安心させる為、そう言いながらもリリィの心臓は早くなっていた。
「……生きてる?」
そっと覗き込む。
かすかに、胸が上下している。
「……生きてる」
小さく息を呑む。
そして、よくよく傷口を観察すると獣にやられたものとは違う鋭い斬り傷だった。
どうする?
放っておく?
このままなら——
死んじゃう。
「…………」
知らない人。
危険かもしれない。
でも……
「放っておくなんて、できない」
ぽつり、呟く。
「ルー」
「ピ」
「手伝って」
短くそう言うと、リリィは男の体に手を伸ばした。
「運ぶよ」
風を集める。
ふわりと、体を支えるように。
「大丈夫」
意識があるか分からない相手にそっと声をかける。
「助けるから」
その日、リリィの静かな日常は終わりを告げた。




