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魔獣と命

「おはよう、ルー」

「ピッ」

窓から零れる朝日によって目を覚ます、リリィとルー。

「今日もいい天気だね」

「ピ!」

ベッドから起き上がり着替えるリリィ。

この世界に来て1週間以上は経ち、森での生活も少しずつだが慣れてきた。

「今日はもう少し森の奥まで行ってみようか」

「ピィ〜」

着替え終わり、今日の予定を考えながら家を出る。

森をしばらく歩き、所々に生えているキノコや山菜を取る。


「結構歩いたね」

「ピ〜」

異世界に来て暫くは家周辺で見て回っていたリリィ達だが慣れてきたおかげか今日は森の奥を捜索し始めた。

森の奥には見た事ない木の実や植物がいっぱいあった。


「お!」

リリィは足元に野いちごに似た実を見つけた。


(鑑定)


(名称:ミルクベリー)

(種別:果実)

(可食:〇)

(味:とても甘い)

(備考:ベリーの中で1番濃厚)


「食べれる」

リリィは小さく頷いてミルベリーを取りアイテムボックスにしまう。

「こっちは何かな」

今度は、ヨモギのような物を見つけた。


(鑑定)


(名称:ギモール)

(種別:薬草)

(効果:火傷に効果あり)

(備考:擦り潰して使用)


「薬草だ!たすかる」

光属性の癒し魔法が使えるリリィだが、まだ上手く扱えず、切り傷程度しか直せないので薬草系は出来るだけ取り保存している。

鑑定スキルも使っているうちに細かく見れるようになったので知識がないリリィは大助かりだ。


「………あれ?」

森の奥は初めて見るものばかりで鑑定に夢中になっていたリリィはルーがいつの間にか居なくなっていたことに気が付かなかった。

いつもはリリィの上空を飛んでいたり、木の枝に止まりリリィを見守っていたルーなのだが、今はその姿が見当たらない。

「ルー?ルー!」

名前を呼んでも返事がない。

「ルー!どこに行ったのー?」

リリィは周りをキョロキョロと見渡す。

すると、ルーの名を呼ぶリリィに突然の突風が起こる。

「ピピッ」

強い風に目をつぶったリリィだがルーの鳴き声を聞くとすぐに目を開けた。

「ルー!」

「ピィ〜」

ルーはリリィの目の前を飛んで居て、リリィと目が合うとすぐに地面に降りる。

すると、ルーが降りた傍にさっきまでは無かったはずの動物の死体があった。

「……え?」

リリィは突然の事に一瞬固まったが、恐る恐る動物の死体を観察する。

それは小さなウサギのような見た目だが鋭い牙と額に角が生えている動物だった。


「……これって」

リリィはルーを見る。

「ピピッ」

「……ルーが…やったの?」

リリィのその問いにルーはこくっと頷いた。

「……」

言葉が出なかった。

ついさっきまで、生きていたはずのもの。


(鑑定)


(名称:ラビル)

(種族:魔獣)

(危険度:低)

(状態:死亡)

(備考:肉は食用可、皮は衣服や小物に使える)


「……食べられる」

ぽつりと呟く。

胸の奥が少しだけざわつく。

前世でも、普通に肉は食べていたはずだ。

なのに何故ざわつくのかリリィ本人には分からなかった。

「……」

リリィは迷って、それからゆっくりとしゃがみ込む。

「……ありがとう、ルー」

そう言って、ルーをそっと撫でる。

「ピピッ」

嬉しそうに鳴くルーにリリィは小さく笑った。

そして、

「……ちゃんと、いただこう」

真剣な顔でそう呟いた。



「……ちゃんと、いただくね」

リリィはそうもう一度呟いて、ラビルを持ち上げる。

少しだけ、手が震えた。


リリィ達はこれ以上は森を捜索する気も出なく、家に戻る。

家に戻ると直ぐにキッチンに向かう。

ラビルをどうにかしないと。

やり方は分からない。

でも、後回しにも出来ない。

「……」

ラビルをキッチンに置いたリリィは深く息を吸って、包丁を取り出す。

ルーが近くでじっと見守っていた。

「ピピ……」

「だいじょうぶ」

自分に言い聞かせるように呟く。


それからしばらくして——

なんとか食べられる形にすることができた。

どうやら、ルーが血抜きをしてくれていたらしいのでそこまで大惨事にならなかった。

「ルー、優秀…」

「ピ!」

当たり前だとゆうように鳴いた。


しばらく休憩して、気力を取り戻したリリィは料理に取り掛かった。

火を起こして、肉を焼く。

ガスが無いから火魔法を使わないといけない。

だいぶ慣れたがまだ火加減がうまくいかない。


「ちょっと焦げたかも……」

それでも、一口切って味見してみる。

「……おいしい」

ぽつりと呟く。

さっきまで、生きていたもの。

「…………」

リリィは仕上げに胡椒に似た味の実をふりかけ、皿に移す。

ルーにもお肉を分け、テーブルに着く。


「……いただきます」

リリィは手を合わせる。

これが命をいただくってこと。

これが生きるということ。

リリィの中のざわつきは今もあるが、きっと、この先もこうやって生きていく。


「……おいしいね」

「ピ!」

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