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異世界の夜と名前

しばらくぼんやりしていたリリィは日が沈んでいることに気付いて立ち上がる。

そして、ゆっくりと家の中へ戻る。


「……おみず」

喉が乾いて台所でコップに水を注いで飲む。

冷た水が喉を潤す。

「……そうだお風呂…」

リリィは魔法に夢中で忘れていたが水魔法により全身ずぶ濡れだったのだ。

多少は乾いていたが服が肌に張り付いて気持ちが悪かった。

お風呂場に行き、浴槽を覗く。

「お湯…貯めても良いよね……」

リリィは何故かお湯を貯める事を躊躇った。

言いようの無い恐怖感がリリィを襲うが何故怖いのかリリィ本人には分からなかった。


そんな様子を見ていた鳥が小さく鳴いて羽を揺らす。

すると、浴槽に水がゆっくりと満ちていった。

「……つめたい」

リリィが貯まった水に手を付けると冷たかった。

少し考えて、火魔法で温められないかと思い付いた。

「温める…水の温度を上げる……」

すると、冷たかった水が沸騰したようにぶくぶくと音を立てて煮え立っていた。

「くそたれ」

火魔法嫌い。


「……どうしよう」

ぐつぐつと煮え立つお湯を見つめる。

さすがに、これは入れない。

「……さめろー」

小さく呟き、冷たい水をイメージしながら足していく。


「……これくらい?」

恐る恐るお湯に手を入れる。

じんわりと温かかった。

「うん、できた」

満足そうに小さく頷く。

「…あ、着替え」

神様が衣食住は揃えてあるって言ってたからどこかにあるよね。

そういえば、寝室にクローゼットが置いてあった気が…

リリィはいそいそと寝室に行きクローゼットを開ける。

そこには何着かの服が用意されていた。

リリィはワンピースタイプのシャツと下着を手に取り、風呂場に戻る。

そして、引っ付いて気持ち悪かった服を脱ぎ捨て、ゆっくりとお湯に足を入れる。


「……あったかい」

リリィは嬉しそうにボソッと呟く。

肩まで沈むと身体の力が抜けていった。

さっきまでの疲れが溶けていくみたいだった。

「あぁーーー…」

少しだけ目を細め、安堵の声が浴室に響く。

鳥も桶に水を貯めて楽しそうに羽を綺麗にしていた。


身体が温まるとお風呂を出て体を拭く。

ポカポカしてるおかげか、リリィに眠気が襲ってくる。

「んんっ…ねむい」

ふらふらしながら寝室へ向かう。

寝室には大きなキングサイズのベッドがあり、リリィは頑張ってベッドによじ登る。

「すごいふかふか」

ふかふかで…あたたかい…

リリィがベッドに横になると、

「ピピ」

鳥がリリィの顔の横に降り立つ。

「ここは温かくて落ち着くね…」

うとうとしながら鳥を撫でそう呟く。

「…わたしここ好きだな…」

「ピピッ」

「君もここが好き…?」

「ピッ!」

「一緒だね」

クスクスと笑い合うリリィと鳥。

「…そういえば君の名前は…」

ふと気になって、鳥を見る。


(鑑定)

なんとなく、そう思った瞬間——

ふわりと果物の時に見た文字が浮かぶ。


(名称:なし)

(種族:魔物)

(属性:風・水)

(状態:良好)


「あれ…」

首をかしげる。

「名前…ないの?」

鳥はきょとんとした様子でリリィを見る。

「ピピ?」

「そっか……ないんだ」

少しだけ考える。

名前がないのはなんだか落ち着かない。

「……じゃぁ…わたしが名前付けてもいい…?」

リリィが恐る恐る鳥に聞くと、

「ピピッ」

鳥は嬉しいに鳴いた。

「いいってこと?」

リリィはくすっと笑う。


「んー……」

少しだけ考えて……

「……ブルー?」

なんとも安直すぎる名前を口にする。

「ピッ!?」

鳥がえっ!?みたいな反応で固まる。

「…………アオとか…」

「ピ……」

鳥が残念そうな目でリリィを見つめる。

「んんんっーっ…うーん…」

小さく唸りながら鳥を見つめる。

ぱっと見て青い色。

アオ…ブルー…ソラ…ルリ…ラピスラズリ……

ぐるぐるとリリィが悩んでいると鳥が「ピピ」と鳴く。


「……ピーちゃん…じゃないなあ…ブルー…ルリ…」

「ピ!」

鳥が羽を広げ鳴いた。

「ピーちゃん?」

「ピピピ!!」

「違うらしい…ブルーはダメだったしルリ?」

「ピッピッピ!」

「なにか違うの…ルリ、ブルー…ル?」

「ピピッ」

鳥が嬉しそうに鳴いた。


「……ル?」

リリィがもう一度呟く。

「ピピッ」

鳥もまた嬉しそうに鳴いた。

「ル……」

これだけだとどこか寂しい。

「……ルー?」

語尾を伸ばし試すように鳥を呼んでみる。


その瞬間——

「ピピッ!」

バサッと羽を広げ、そうだと言うように鳴いた。

「いいね」

リリィは嬉しそうに目を瞬かせ、優しく笑う。

「ルー」

もう一度、優しく呼ぶ。

「ピピッ」

すぐに返事が返ってくる。

「これからよろしくね、ルー」

リリィはそう言って、やさしくルーを撫でる。

ルーは気持ちよさそうにゆっくりと目を細めた。


「おやすみ、ルー」

「ピピッ」


リリィは小さく愛らしい返事を聞きながら、目を閉じた。

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