異世界と魔法
少女は気が付くと森の中に立っていた。
――まぶしい。
最初に感じたのはそれだった。
真っ白じゃない、太陽の陽の光。
「……あれ?」
声を出す、けれど自分の声なのに違和感を感じた。
「ここ……どこ?」
きょろきょろと辺りを見回す。
木、木、木。
見えるのはそればかり。
「森……?」
ぽつりと呟く。
なんとなく、少女は森の中に居るそう思った。
鳥の鳴き声やよく分からない鳴き声が何処からか聞こえてくる。
「……すご」
思わず声が漏れた。
空気が澄んでいて美味しい。
匂いもなんだか落ち着く。
少しだけ、胸の奥が軽くなった気がした。
少女の瞳には自然しか写していなかったが、少女はここがとても気に入った。
それから、ふと自分の手を見る。
小さい。
「……あれ?」
ぎゅっと握って、開く。
やっぱり小さい。
「え、ちょっと待って」
ぺたぺたと自分の腕や頬を触る。
「え、え、なにゅこれ、ちっちゃい」
呂律も怪しくなる。
そして気が付く、視界も低いことに。
「えー!?」
思わず大きな叫び声を出す。
少女の見た目が六歳くらいになっていたのだ。
でも、不思議と怖くはなかった。
とゆうか深く考えても、答えは出ないから。
それよりも。
「……おなかすいたな…」
落ち着いた事により、少女は自身が空腹である事に気付いた。
すると、ボトッと音が少女の目の前でした。
見ると何かのオレンジ色の果物のような物が落ちている。
「?」
少女が不思議に思っていると耳元でバサッと音と共に肩に青い鳥が止まる。
「この鳥…」
鳥の青さに見覚えがある少女。
神様の所に居た青い鳥と同じ青をしているのだが姿が異なっていた。
神様の所ではインコのような姿の鳥だったが今は少し変わっていた。
だけど、この子は神様の所に居た鳥だ。
「君がこれを持ってきてくれたの?」
「ピピ!」
鳥はそうだと言うように鳴き、羽を広げる。
「ありがとう」
少女は果物に似た物を手にし、観察する。
すると、
(可食:〇)
(毒性:なし)
と画面のようなものが表示された。
「……おお」
思わず声が出た。
「なにこれ、すごい便利」
少女はそう呟きながら果物を軽く袖で拭いて齧り付く。
しゃくりと音がして少し甘い味が広がった。
水分多めの梨に似た果物だった。
「……ん、おいしい」
喉も乾いていたので水分も取れて有難かった。
果物を食べ終わると次は、最初に辺りを見回した時に視界に入った家だった。
森の中に不自然なほど整った場所。
そして、一軒の家が建っていた。
白い壁に、大きな窓。
どこかあたたかい雰囲気の建物。
この家が神様が用意してくれた家なんだろうな。
自然とそう思った。
少女は鳥と一緒に扉の前に立つ。
それから、ゆっくりとドアノブに手をかけた。
「……おじゃまします」
小さく呟いて、扉を開ける。
中からは優しくて暖かい空気が流れてきた。
「わぁ…!」
扉を開けた中を見た瞬間、思わず声がこぼれた。
外から見たよりもずっと広い。
やわらかい光が差し込んで部屋の中を暖かく照らしている。
白い壁に木の床、どこか落ち着く匂いがした。
「すご……」
そっと一歩、中に入る。
床はきれいでホコリひとつない。
誰も居ないはずなのにちゃんと整理された家具たちもあった。
少女がまず目に入ったのは大きなソファだった。
少女はソファに近付きおそるおそる手で押してみる。
やわらかい。
「やわらか」
もう一度押す。
沈む。
「……すごい」
我慢できずにぽすんと座る。
「わっ」
思ったより沈んで少しだけバランスを崩した。
「……なにこれ、ふわふわ」
少女は小さく笑う。
こんなの、知らない。
少女はごろんとそのまま横になる。
天井を見上げる。
静かだ。
外とは違う、守られているような静けさだ。
その静寂さが少女には心地よかった。
「……ここ、好きかも」
ぽつりと呟く。
しばらく少女はぼーっとしてから、はっと起き上がる。
危うく眠るところだった。
まだ、家の中を見て回っていないのだ。
少女は慌てて立ち上がる。
次に向かったのは、奥にある台所だった。
少女の身長的に大きいが踏み台があれば何とかなりそうだ。
少女は近くの棚を次々開けて中を確認していく。
中には、数々の道具が並んでいた。
お皿にコップ、スプーンにフォークに箸、包丁やらなんやら各自揃っていた。
台所周辺も見て回った少女はまた別の場所に向かう。
寝室にお風呂場やトイレ、空き部屋も何個かあった。
家の中を見て回った少女は気付く、中庭がある事に。
少女は中庭に続く扉を開けて、中庭に出る。
「わぁ」
そこは花壇があり色とりどりの花が咲いていた。
暖かな光と綺麗な花たち。
「きれい……」
少女は花を観察しながらゆっくりと歩いていく。
するとベンチが置いてある事に気付き、少女はそこに座り全体を見渡す。
中庭の真ん中には何も無いけど、囲むように花達が植えられている。
花たちを眺めながらぼーとする少女の肩に止まっていた鳥が飛び立ち、花たちの真上を飛び回る。
そして、鳥の周りに水が現れると花達に降り注いだ。
少女は驚き、そして神様が言ってた事を思い出す。
「これが魔法…」
そういえば、神様が魔法はステータスを見ればいいって…
えっと…ステータス
少女は心の中でそう唱えると、目の前に半透明の板のようなものが浮かんだ。
「……でた」
思わず声が漏れる。
(ステータス)
名前:リリィ(璃々)
年齢:六歳
魔力:???
属性:火・水・風・土・光・闇
スキル:
・鑑定
・アイテムボックス
・魔力制御(Lv.0)
「おおっ」
ステータスの属性を読み色んな魔法が使えると喜ぶ。
「…あれ?名前が…」
名前の方も見るとリリィになっていた。
「この世界での名前かな…あんまり変わってないけど」
少女ーー、前世では璃々はこの世界でリリィとして生まれ変わったのだ。
「とりあえず、なにか魔法を使ってみよ」
火、水、風、土、光、闇。
リリィは指でなぞりながら、どれにしようか少し迷ってそれからふと花壇を見る。
「水、かな」
鳥がやったようにしてみよう。
「……どうやるんだろ」
少し考えてから、目を閉じる。
そして、両手を前に出して手のひらに水玉を集めるイメージをする。
その瞬間——
ドッバァァッッ!!!
「えっ」
リリィの周りに勢いよく大量の水が渦を巻いて現れる。
「わっ、ちょっ、まっ」
ービシャァァァ
少しの量しかイメージしていなかったリリィは多量の水に驚き、そのせいでコントロール失った水は地面に叩きつられた。
中庭が一瞬でびしょ濡れになってしまった。
「……」
リリィは呆然とする。
ぽたぽたとリリィの全身から水が滴っている。
「……出すぎた」
ぽつりと呟く。
リリィは少しだけ考えてもう一度手を出す。
今度はさっきよりももっと小さく。
「ちょっとだけ……」
人差し指から水を出す、ジョウロのイメージで。
すると――
「……お、…おおぅ…」
人差し指から蛇口を最大捻ったような水が勢いよく流れている。
「むずかしい」
眉を寄せ、コントロールに悩むリリィだけど、どこか楽しそうな様子を青い鳥が上から見ていた。
「ピピッ」
まるで頑張れと言っているようだった。




