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普通じゃない

食事も終わり、リリィが片付け終わるとヴァルはゆっくりと立ち上がる。

まだ少し痛みはあるが…動けないほどじゃない。


「ルーも行く?」

「ピピッ」

ルーが嬉しそうに鳴く。

「じゃあ、外行こっか」

リリィはそう言って、先に扉へ向かう。

ヴァルはその背中を少しだけ見つめた。


警戒心が全く無いな…

そう思いながらーー

ゆっくりとその後を追った。



家を出てから森の奥へと来ると空気が変わったのが分かった。

「……」

ヴァルはわずかに目を細める。

魔獣の森、特有の重たい空気。

どこか湿っていて、静かすぎる雰囲気に魔獣の森だと確信したヴァルだった。


「こっちだよ」

そんな空気の中、リリィは軽い足取りで先を歩く。

「……待て」

「?」

「あまり離れるな」

スタスタと歩いて行くリリィに声を掛けるが、

「うん?」

リリィは少しだけ首をかしげる。

「歩くの早かった?」

「…………」

ヴァルは危険だから離れるなと伝えようとしたがリリィには伝わらなかった。



「ここら辺、よく来るの」

「……そうか」

「キノコはここがよく取れるの」

そう言って生えているきのこを指さすリリィ。

「もう少し奥に行ったら小川があって、綺麗なんだよ」

リリィは楽しそうに森を案内する。

よく取るキノコや木の実、変わった植物などヴァルに教えていった。

「こっちはヴァルに使った出血止めに…こっちは火傷に効く草で……あ、その実は食べると舌が痺れるよ」


楽しそうに話すリリィを穏やかな顔で聞いていたヴァルの耳にガサッとした音が聞こえた。

「!」

ヴァルの視線が一瞬で鋭くなる。

「……来るぞ」

「え?」

ヴァルが見ていた方をリリィも見ると茂みの奥から影が飛び出した。


灰色の体。

鋭い牙。

小型の狼型の魔獣。

「フィラットか…」

ヴァルはこの程度なら怪我をしてても倒せるなと思い。

まずはリリィを自分の後ろにと考え、

「リリィ、下がってい…」

と言いかけた、その瞬間。

びゅんっ、と鋭い風が走る。

「ギャ…」

魔獣の首が落ちた。

「……は?」

ヴァルは突然の事に動けなかった。

「大丈夫?」

リリィがヴァルを覗く。

「……今の」

「ん?」

「今の…なんだ」

「風魔法だよ?」

ヴァルは言葉を失い、倒れた魔獣を見る。

首と胴体が離れていて、即死だった。


……一撃だと?

フィラットは強い魔獣じゃ無いから倒せない事はないが…

それは大人の場合であって、子供が一撃で倒すなんて……


「このくらいなら大丈夫だよ」

リリィはそう言って、魔獣に近付いて行く。

「待て!」

ヴァルが思わず声を上げる。

「え?」

「不用意に近づくな」

「?……もう動かないよ?」

リリィは不思議そうな顔をしてそう言った。

「……フィラットは群れで行動する、他にも近くに仲間がいる可能性がある」

「うん、でも問題ないよ?大勢で襲って来ても倒せばいいんだし」

「……」

ヴァルは言葉を失う。


こいつ…普通じゃねぇな。

ヴァルはそう呆れたが口元は僅かに緩んでいた。


「……で、どうするんだ」

ヴァルが倒れたフィラットを見ながら言う。

「ん?」

「それ」

顎で魔獣を示す。

フィラットの毛皮は高価ではないが金になる。冬場には防寒用としてよく出回る代物だ。


「……ああ、これはいいや」

「……いいのか?」

「うん」

リリィはこくんと頷く。

「硬くておいしくないし」

ヴァルは少しだけ目を細め、味で判断しているのかと唖然する。

「おいしくないのは、無理して食べないよ」

「……そうか」


それから、周囲を見回したがフィラットの仲間が近くにいる様子もなかった。

「じゃあ、行こっか」

リリィはそう言って歩き出し、ヴァルもその後を追った。



また、しばらく歩いていたその時ーー

ぴたりとリリィとヴァルの足が同時に止まる。

「ヴァル…」

「あぁ」

「……なんか、いる」

2人は周囲を警戒する。

先ほどのフィラットとは比べ物にならない、重く、粘りつくような圧。


ーー次の瞬間。

ずるり、と音がした茂みの奥から現れたのは巨大な蛇。

黒く光る鱗。

太い胴体は木の幹ほどもあり、ゆっくりと地面を這うたびに草が押し潰されていく。

裂けた口から覗く牙にはどろりとした毒が滲んでいた。


「……グラウルか」

ヴァルが低く呟く。

本来なら、怪我が無ければ一瞬で倒せる相手。


時間は掛かるが…倒すか。

ヴァルはちらっとリリィを見て、

「リリィ、下がってーー」

「……大丈夫」

「?」

リリィが一歩、前に出る。


……やる気か。

ヴァルは止めなかった。

ただ、静かに目を細める。

「来るぞ」

ヴァルがそう呟いた瞬間、グラウルが大きく口を開き、突進してくる。

その様子を見た瞬間、リリィはしゃがみこんで地面に手を触れる。

すると地面が盛り上がり、リリィの前に巨大な壁が作られ、グラウルは激突する。

激突した衝撃で動きが止まったグラウルを風魔法で空に飛んだリリィが間を置かず、次の一手を仕掛けた。

空気が裂ける。

目には見えない無数の刃がグラウルに斬り掛かる。

ズバッ、ズバッ、ズバッーーー

巨大な体が切り刻まれていく。


ヴァルは黙ったまま、その光景を見ていた。

……なるほどな。

無駄がない。

迷いもない。

この年でこの精度か…

ここで生きていける訳だ。



「……終わったよ?」

しばらくして、ヴァルの前にリリィが降りて来た。

「……ああ…お前、いくつだ?」

「え?急だね…六歳だよ」

六歳であの精度か…

ヴァルの口元がわずかに楽しそうに歪む。


「……なあ」

「なに?」

「どこで覚えた」

「?」

「魔法」

リリィは少し首をかしげる。

「覚えたっていうか……」

リリィは少しだけ考え。

「なんとなく?」

「……」

ヴァルは言葉を失う。

なんとなく、だと

「……誰かに教わったわけじゃねぇのか」

「うん」

「本で学んだのか」

「本読んだことない」

「……………」

「使ってたらできるようになったよ」

「……」

ヴァルは小さく息を吐く。

「……そうか」

自覚のない化け物か…

そう思いながら、

「……面白いな」

ぽつりと呟いた。

リリィは意味が分からず、首をかしげる。



「……リリィ」

「なに?」

「力の使い所を間違うなよ」

「え?」

「間違えれば…全部壊す力だ」

リリィはヴァルが言っている意味を考え、

「……気をつける」

と言って頷いた。

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