いっちょ救世主に。
女帝は、何不自由ない空を舞う。
翼を羽ばたかせる毎に、"想いの花園"で見た花弁が、
俺達の頭上へ落ちる。
ピエリが、大きく声を上げる。
「フロラグニス!!君が、街に何の用がある!!」
「君は、破壊などそんな野蛮なことをしないだろう!」
女帝は、静かに耳を傾けている。空中で留まり。
「……。」
だが、何も答えない。
「僕の知るフロラグニスじゃないかもしれない…」
──「操られている?」
俺のイメージでは、ドラゴンや竜種って相当な強さを誇る偉大な魔物。他者からの洗脳を受けるようには、見えないのだが…。
ピエリも同じようなことを考えているのか、神妙な顔つきになっていた。
キセキが、受付嬢ロサリアさんと共に駆けつける。
ロサリアさんは、自分の肩ぐらいの杖を持っていた。
本当に受付嬢なのか、と思うくらい禍々しい杖。
主に血の色が使われ、先端部に星型の魔石が組み込まれている。
「皆様、先に中へ。」
「受付嬢No.8。ロサリア魔法使用要請。」
「受理されました。直ちに戦闘態勢に移ります。」
魔石に魔力が込められ、光り輝く。
「我々を守護する神の導き。」
ロサリアか、ふわりと空へ上昇して行く。
女帝と向かい合わせになり、杖を掲げる。
街全体を覆い尽くすほどの、黄金の魔法陣が展開された。
「世界の民に、神導を下さん。」
「神導守護。」
黄金の魔法陣か、1つの巨大なシールドへと変貌した。
次の攻撃を繰り出そうと、再び杖を構えた。
──女帝は咆哮する。
俺には、悲痛の叫びに感じた。
翼で、強風を吹かせた。ロサリアは強風に耐えきれず、
外壁に叩き付けられた。
ギロリと、鋭い眼光が俺達を覗いている。
女帝の口先に、エネルギーが込められ始める。
その頃になって、街がざわめく。
「おいなんだアレ…」
「一体なんなのよ!」
阿鼻叫喚の声が、街全体に響いている。
パニックになる者もいた。
騎士団らしき人集りが、通り過ぎる。
先導しているのは、金髪の青年だった。
「皆さん落ち着いてください!」
皆に届くように、力強く言い放つ。
そんな中でも、俺達は冷静だった。
キセキが、何かに気がつき、声を上げる。
「2人とも、見てあれ」
「燃えていて見にくいけど、何かついていない?」
ルイナとピエリを目を凝らす。
よく見ると、光り輝く魔石が翼に埋め込まれていた。
「アレが原因かな〜」
ピエリは、時間によって自分のペースを取り戻した。
余裕綽々、いつもの見慣れた道化師。
「僕らでいっちょ街救っちゃいますか〜」
「ルイナクンも手伝って♪」
「え!?俺も!?」
「俺炎魔法しか…ってアレ」
頬にあったスタンプが消えていた。
──つまり俺、ただの一般人?
キセキが、ニヤリとこちらを見ていた。
「そうと決まれば行くよ〜街が滅ぶ前にね!」
「ちょっと待て!!あぁ〜…」
"いつもの"ように、俺は道化の我儘に従うのみ。
女帝は、ただ破壊の限りを尽くす暴君。
永遠に咲き続ける狂花は、激しく燃える。
花弁が、ただ燃えているんじゃない。
“泣いている”ように見えた。
──誰か、助けて頂戴。




