やりたいこと100個、やっちゃえばいいじゃん
「おーい、おーい〜おーきーてー」
俺の頬をぺちぺちと叩く、何かがいる。
視界が安定しない中、瞼を開いた。
輪郭がぼやけていてよく分からない。
シルクハットが特徴的で。
「うわぁぁ!!!!」
俺のトラウマがそこにいた。咄嗟に戦闘態勢を取ると。
俺を殺した道化師と、キセキが呆れた眼差しで見ていた。
「酷いなぁ〜そんな人殺しみたいな扱いしないでよ〜」
薄紫のツインテール。
トパーズとエメラルドが埋め込まれているオッドアイ。
赤と黒を基調とした舞台衣装。
可憐と妖艶が入り交じっている雰囲気を漂わせていた。
薄暗い裏路地でも、道化がいるだけで明るく変わる。
「僕はピエリ。ピエリ・アクト〜君の名前は?」
ピエリは手を差し出して、ルイナに握手を求めてくる。
「お、俺はルイナ…です。」
反射的に手を出したが、先程の惨劇を思い出しては引っ込
めた。
ピエリはハッとした表情をしては、弁解する。
「さっきはごめんね〜アレ幻覚魔法だからさ!」
「まさかショックで気絶しちゃうとは思わなかったん
だよね〜」
目を泳がせては、空回りの口笛を吹いている。
──幻覚にしては、妙に“現実味”がありすぎる。
「幻覚!?あれが!?」
「でもおかげで手品は大成功〜ありがとうって訳〜」
ピエリ引っ込めた手を強引に掴んで、俺に感謝を伝えて
来た。
──大成功? 俺は気絶して、失敗なはずでは?
違和感がのしかかる。打ち消すように話を続けては。
「その後無事に動き出してくれて助かったよ〜」
「……ん?」
何があったんだと、キセキに目線を送った。
「手品が終わった瞬間、また倒れたのさ」
「人目も多かったし、とりあえずここに来たってこと〜」
「お、おう。」
──もしかして夢に出てきた彼女が?
あくまで推測だが、それしかない。
ピエリと話がズレると、面倒なことになるだろう。
後でキセキに問い詰めるとして。
キセキが、ルイナからの異様な目線にビクビクしていた。
「で、ルイナクン!絶対ここらの人じゃないでしょ〜」
「食い扶持ってあるの〜?」
「キセキ、コイツに何か話したのか?」
「お金がないよってことを離しただけさ」
「お前な〜…」
「だって事実じゃん」
ぐうの音も出ない回答だった。
「食い扶持ないです。」
正直に自白した方が、自分が後々楽になるのは明確だ。
「養ってあげるからさ〜その」
「僕も仲間に入れてよ、冒険のさ!」
──「きっといづれ、誰かと出会うことになる。」
案外早かった運命。
ちょっと意外すぎて、言葉が詰まった。
「ぁ〜えっと、こんな弱小冒険者でいいのか?」
「強すぎるパーティで役目ないよりかは〜」
「”確実に役目がある"方がよいじゃん」
完成されたパーティより、楽しい。
やりどころがないゲームより、やれることが無限大。
その方が、断然楽しい感情は理解に苦労しなかった。
「…よろしく頼むぜ。ピエリ。」
「任せれましたとも〜」
俺は今度こそ、しっかりと握手した。
キセキが、その光景を静かに微笑んで見ている。
「じゃ、早速服買い行こ〜!」
「はい?」
てっきりこのまま、次の旅路についての話をするのかと
思っていた。
確かに、今の服装は白いワンピース1枚とだいぶ質素ではある。
半ば強引に手を引かれて、俺は連れていかれた。
キセキは、後ろからついて行く。
──数十分後。ある服屋にて。
「やっぱり似合うね〜」
ピエリは俺の姿を見ては、ニヤニヤと顔に出ている。
リボンがふんだんに使われた水色のメイド服。
スカートは膝に届かないくらい短い。
「何のつもりだよお前ら!?」
あくまでも前世は、18歳男だ。
最低限の威厳を失う訳にはいかないのだ。
だが俺の中の悪魔が囁くのだ。
──銀髪メイド服は至高の領域。
長髪というのも相まって、片足でくるりと回転するのが
かなり楽しい。前世では、有り得ない経験。
「意外と悪くない……な!」
結局は、悪魔が勝ってしまったのだった。
「意外と似合うじゃないか」
あのキセキですら同意してるのだから、大丈夫だろう。
「やっぱり僕のセンスは完璧だね!」
最高だよ。と返したかったが、威厳は守った。
……こんな余裕、いつまで持つんだろうな。
かなり値段は高いのに関わらず、ピエリは軽々払っていたので、目から鱗だ。俺達は店を出た。
ピエリやキセキから、世界について教えてもらう内に
次の旅路についての話題となる。
「ところでルイナクン、旅の目的はあるのかい〜?」
「今のところはねぇかな…いや」
「…やりたいことなら100個くらいあるわ」
「ルイナクン傲慢だね中々」
食い気味にツッコミを入れられた。
前にも親友に言われたことがあるような?
然程傲慢ではないと、自負していたのだが。
「でも、それでいいんじゃないかな〜」
「試しにこれで、全部書いてみてよ」
ピエリは懐から、メモ帳とペンを取り出した。
そのまま俺に手渡す。
「結局時間かかるぞ?」
「いいよ別に〜暇人だし」
「慣れっこだから〜」
ルイナは、ペンを止めることなく書き続けた。
いつでも出来そうで、結構当たり前な願い85個。
難しく、時間がかかる願いを14個書き留めた。
ことある事にキセキが、この異世界向けに修正してくれた。
きたるは、最後の100個目。
そこでルイナは、ペンが初めて止まった。
──思い出せない。浮かばない。
前世では、ピッタリハマったピース。
「99個か、パッとしないけど〜」
──「旅の中で、見つけていけばいいんじゃない」
俺の、99個のやりたいことリストが完成した。
残り1個は、気長に見つけていくとしよう。
「これからよろしくな、ピエリ。」
「度の最果てまで、見届けてあげるよ〜」
仲間たちと、"やり直す"。
願いを捨てた死にやがりの俺、
寿命と引き換えでも──全部やる。
これは、最初の伝説の──ほんの一片。
とある建物内にて。
「神の"結界"を壊す程の力を持つもの、ですか。」
「正直危険人物。見といた方が。いい。」
角を持つもの、ペールで顔を隠すものなど様々である。
──「必要ないよ。」
長であるだろう彼女が、言葉を告げる。
「しかしそれでは…」
「楽しそうだからね」
ただそれが、理由だった。
ここまで見て下さりありがとうございました!
これにて序章は終了となります
第1章 喜劇の道化編 お楽しみに〜




