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喜劇の街、サダエアポート。

「さぁ、素晴らしい手品を!約束致しましょう〜!」

橋の先で、観衆が歓声をあげていた。


「あ、ちょっと待ってよルイナ」

「置いていかないで」

視界が強く揺らぐ、抗えない。

ルイナは自然と足が進む、段々と早歩きになっていく。

遂には、街内に入ろうとするところで騎士に

止められた。


「ちょ、ちょっと君。ここから先は喜劇の街(サダエアポート)の敷地内だ!」

「ギルドカード又は身分が証明出来るものを提示しないか!」

険しい顔と、慌ただしい顔をしている騎士2人組。

2人は職務を全うしているしているだけ、それはルイナも頭では分かっている。


──”邪魔”だと思ってしまった。

騎士を押しのけようとした、瞬間。

「観客の皆様は、()()()()()構いません〜」

道化がニヤリと、口元を揺らす。


「お通りください、お通りください。」

先程までの威厳はどこに言ったのだろうか。

決まった言葉を、繰り返すばかりだ。

無事?に通行許可が下りたので、俺は道化師に

向かう。


道化は、1個のシルクハットを取り出した。

観衆に、ハットの内側を見せつけている。

「見ての通り!なーんにもございません!」

「瞬き厳禁〜見逃すなぁ!?」


再び、シルクハットを深く被る。

「さて、皆様の方からどなたか協力してくれる

のは〜?」

実にわざとらしい演技、でも惹き込まれてしまう。


キセキは、何かを悟ったのか。

自身の体を変形させ、仮面と成った。

「ちょっと失礼するよ」

俺の目元を覆う形で、ピッタリとハマった。

視界が晴れ晴れと、元に戻る。


黒を基調とし、特徴的な赤の模様が刻まれて

いる。我ながら、銀髪との相性もよい。


「えっ〜と、あ!そこの君!」

ルイナが居る方向を指さしている。

「そこの黒と赤の画面つけてる人さーん!」

「え、俺か?」

一瞬の間が、再び空く。

「え、あ!うん!こっちに来てよ〜!」

道化は、俺に手招きをしている。


キセキは、ルイナだけに聞こえる声量で語りかけた。

「わざとだね、あれ」

道化を、睨みつけているようだ。

「ご指名ってもんなら、行くしかねぇな...」

「案外乗り気だね、ルイナ」


観衆を掻き分けて、道化の隣へ向かった。

道化に向かう最中、観衆の声が耳に入ってきた。

「あんな嬢ちゃんに出来るのかい?」

「おいおい、死んだわアイツ」

「というか、声可笑しくない?」


不安と期待が、1・1と言ったところか。

耳が痛くなって来たため、早歩きになる。

よくよく考えたら、異質なキメラである俺をを見世物に

させられてるような。


1歩1歩、歩みを進める事に、謎の緊迫感が一体を支配して

いる。ここから、逃げ出せない。

「なんなんだ君は...?」

キセキが小さく唸っている。

俺は、遂に道化の隣に立った。


「本日のスペシャルゲストの君!」

「お名前を教えてくれないかい?」

「ルイ──いや、ベイクド仮面だ。」

流石に本名を出しては、先が思いやられる。

お遊びの手品如きで、噂話になるのは勘弁なのだ。


「それじゃあベイクド仮面クン!」

「このシルクハットを燃やしていただこう!」


唐突な予想外の要求に、ルイナは目を白黒させた。

流石異世界!魔法って訳か!と納得した反面、

魔法がある異世界で、手品って意味あるのかと思って

しまった。


考えてしまっても、今はどうにも出来ない。

多少燃やすくらいならば、詠唱は不要だろう。

ここまで来れば、単純な慣れが俺の背中を押してくれる。

炎基礎魔法(フレア)。」

道化が望んだ通りに、シルクハットに火をつけた。


さて、何が起きるのか。

ルイナは舞台上に立つ演者でもあり、”観客”でもある。

シルクハットの先端まで燃え尽きようとした瞬間。


──炎が、数十羽の白い鳩?に変わった。

目で追える数でも、余裕で10は数えられた。

無数の鳩?は、大空へと飛び立って行く。


「なんということでしょう!」

「炎が、原生生物ピスフィーに変わってしまいました〜」

「種も仕掛けも」

──「ございません。」


その言葉は正直事実としか言いようがなかった。

横にいた俺でも、目視の限りで変な所は一切ない。

あの量のピスフィーを操作していたとしても、

詠唱は不可欠。道化は、無詠唱。


「ルイナ、やばいよコイツ」

「離れた方が…いい」


キセキか忠告してくる。

だが、ショーは始まったばかりである。

もし、映画館で10分見たら退出するものはいるだろうか?

それと同じだ。

観衆の拍手が、場を更に支配する。


「さぁ今度は!」

道化の手品はしばらく続いた。

ことある事に道化を手伝った。横で見続けた。

──種も仕掛けも全く、ない。


ショーは、いつしか終わりを迎える。

最後の手品。

ここだけの話、ルイナは途中から中身はあまり聞いて

なかった。


──「して!今日は終幕と致しましょう!」

最後に何をするのか、ルイナは聴き逃していた。

最後か、なにか凄いものをするのだろうか?

観衆も、どよめきの声を上げていた。


「ルイナ!!!」

キセキが声を上げた。


頭が周囲を理解するために、動き出す。

生存本能が、咆哮する。

視線を、自身の体に移した。


剣の一閃が、ルイナの体を引き裂いていた。

振り返り際、道化が狂笑していたのが見える。


ピニャータのような、中身が溢れた。

血ではない何か。

カラフルなテープが、傷口から飛び出している。


痛みは感じなかった。

その場で、膝から崩れ落ちる。

「ルイナ!ルイナ!」

キセキの声が遠くなっていく中で、俺は懺悔する。


魔法が使えるようになった位で、調子に乗ってしまった。

俺なんかが、過酷な異世界では生きられる訳がなかった。


でも、俺は”願う”。傲慢だからだ。

俺は、”生きたい”。と。


観衆の拍手だけが、聞こえる。

体が言うことを聞かない、動かない。


次第に異世界から、意識が、引き剥がされた。

中身が溢れ落ちた。ピニャータを残して。


















私が1番恐れているのは

馬鹿のフリをした”天才”です。


ルイナは一体どうなってしまうのか!?

お楽しみに…


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