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死にやがりの俺と、”殺し”

俺達は恐らく、人が開拓した道順を辿っていた。


キセキが肩に乗りながら、ナビゲーターをしてくれたお陰で迷うこの森を進められている。


不思議とキセキは重くも無いから、重さで疲労することは、なかった。


「地図とかあればいいんだが」

「まぁ仕方ないよ、キセキは優秀だからね」

「自分で言うのかよ」


ふふん、自慢げにしているキセキはさておき。

いかにも魔物が出てきますよという雰囲気が溢れ出て

いる。


「えーと、キセキって戦えんの?」

「...。」

「いーや、無理だね」

一瞬間が空いたのは、気のせいだろうか。

「でも、力を貸すことなら出来るよ」

「おっ、マジか!?」


ちびっこい前足を頬に押し付けては、肉球のマークが。

お世辞にも、似合ってるとは言えない。

よくある、百均とかのスタンプと同じくらい。


「なんだよコレ...」

「キセキの祝福さ、効果は街に辿り着くまで」


キセキの祝福<朱>

効果:炎魔法を使えるようになる。


キセキの話は長ったらしかったので、簡略的にまとめると

こうなった。

「...街についたら、自分で取得しておくれよ」

「ここまで聞いといてアレだが、奇跡の力?を使えばいいんじゃないのか?」


キセキは、黙りこくってしまった。


しばらくの沈黙、キセキは大きくため息をついた。

君は馬鹿だな、と言いたげな表情をした。


「大きな力には、大きな代価が支払われるのがこの世の摂理だよ」

「例えば、そうだなぁ──寿命とか?」

「...はぁ!?お前!!それを今!?言うのかよ!」


正直言って初耳だ。確かに何か倦怠感というか、すり減った感覚はあったにはあった。

ただ、今は冷静になるべきだ。

取り乱す時ではないと、自分に言い聞かせては歩みを

止めない。


「で、1回につきいくつくらい減るんすか?」

恐る恐るキセキに問う。返答は、早かった。

「1回につき、大体1ヶ月〜1年くらいだね」

「叶える物事によっては、平気で数十年はいくと思うよ」

キセキは、興味がなさそうだ。


数十年。人間にしては、重すぎる年月。

「俺のさっきのは?」

「目分だけど、1年ってとこかな」

「意外と重くないか??」

「そうかな」


コイツは猫だからまぁ、価値観が合わないといえば合わない。だが、あまりにも素っ気なさすぎる。


「”想い語り”っていう能力であることしかキセキには分からないや」

「...なるほどな?肝心な時にしか使えない訳だ」


逆を言えば、”想い語り”の能力しかろくな初期装備がない のだ。

チートアイテム、防具、能力がない。


モンスターが存在する異世界でかなり致命的であることに、俺が気づくのも遅くなかった。


「キセキの祝福は強いから、そこら辺は安心していいよ」

キセキが保険をかけたのも、束の間。

草むらから、スライムが飛び出してきた。

「噂をすればなんとやら、だね」


ここからが問題だった。

「先生、戦闘経験0なんですが?」

「ノリで出来るでしょ、キセキの祝福もあるし」

「人間様を甘く見すぎだろてめぇ!」


漫才拍子の会話をしていても、敵は待ってくれない。

ぽよん、ぽよんと自慢のボディを震わせながら、にじり寄ってくる。


強力な抗う術を持っていても、使い方を知らなければそれは無に等しい。


「すまね、キセキ。」

「え?」


ここで、ある昔の人の言葉を借りようと思う。

──「逃げるは恥だが役に立つぅ!!」


走り方などとっくのとうに忘れているため、少し変な感じだ。

客観的に見れば、多分。5歳児の方が走り方は綺麗だ。


「戦い方わかんねぇんだよ、キセキィ!」

スライムと距離を取ることに成功した。


ルイナを見失って、キョロキョロと当たりを見回して

いる。遠くから見れば、かわいい物なのだが。


「この世界の魔法について軽く教えておくよ」


ついでにスライムについても軽く聞いた。

・核組織を持つ、自然出現のモンスター。

・核を破壊すると、生命維持が不可となる。

・知能が低く魔力が強いものに反応し、視覚を持たない。


不思議と、ゲームの説明書を見ているのと同じはずなのに

やる気が満ちてくるのだ。

杖がなく、魔力操作が難しくはある。

不利を承知の上で戦うのも、なんだか悪くない気がする。


ここからは、俺の仮説を信じることで成り立つ死闘。

この世界では、”魔力(マナ)管理”が最も重視されている。

剣士も、この運命(さだめ)から逃れることは不可能。


「詠唱は魔法に不可欠、無ければ威力が落ちちゃう

からね」

「これを覚えて、言ってみて」


しばらくの深呼吸。

人間何でもかんでも、最初にやることは緊張する。


──覚悟を決めろ。

<俺を導く……?>


違う。思い出せ、キセキの言葉を。


──炎よ!


黄泉よも燃やし尽くせ!



基礎炎魔法・玉(フレイムボール)


一部詠唱を忘れたが、頭のサイズくらいの火の玉が、無事に生成された。


手の平が、焼けるように熱い。

一歩でも動けば維持が出来ない。

──制御を誤れば、自分ごと吹き飛ぶ。


杖の弊害が、牙を向いている。


「だが、仮説通りだな」

ルイナは火の玉をスライムに向けて、放つ。

空気の抵抗を受けて、魔力が分散。

玉が、段々と小さくなっていくのが目に見えた。


無論、当たればラッキー程度の考えだ。

当然かすることもなく、スライム付近の地面に当たる。


これも、計算通り。

地面が、一時的に強い魔力を帯びる。


視覚がないスライムは、魔力の急変を感知しそちらに向かっていく。 背後ががら空きである。


ルイナはその隙を見逃さない──!

「...もう1発だ!!」


木陰から慎重に近寄っては、火の玉をもう一度放った。

今度は近距離かつ、的が動かないお陰で無事にヒット。


スライムは核が破壊され、どろどろと溶けた。

焼け焦げた匂いが、鼻を突き抜ける。


俺の初めての、”殺し”。


次第に動かなくなるのを確認した後。木陰から、ルイナは 小さい体で這いずって出てきた。


「死ぬかと思ったわ...まじでさぁ...」

急に安心感が湧き、座り込んで動けなくなってしまった。


「スライムの性質活かした戦い方、いいね」

キセキは、上機嫌に言葉を発している。


いつの間にか戦線離脱していたキセキが、木の上からルイナの頭を踏みつけて降りてくる。


「さて、危機は去ったし行こう」

「お前ほんとに淡々としてるよなぁ..っしゃ行くか。」

キセキを肩に乗せて、再び歩き出した。


──1時間後。

木々が少なくなり、道が開けていく。

森から、抜けた。


スライム以降、幸いなことにモンスターと遭遇すること

はなく。無事である。


「見えてきたね」


目の前に、広がる光景。

一本線に流れる川に、大きなレンガ調の橋がかけられて

いる。

その先には、街が発展していた。

外側は白く高い城壁に囲まれていて、いかにも

ファンタジー!って感じだ。


拍手と笑い声が、風に乗ってルイナに届く。

その中心で─大きく声をあげる者がいた。


その声は、妙に耳に残る。キセキとはまた違う。


楽しげな、ただ普通の声のはずなのに。

どこか、狂っていた。


「さぁさぁ皆様お立ち会い!喜劇の街、サダエア・ポートの道化師ピエリの手品が〜今っ!始まるよ〜!」




それが、しがない道化師ピエリとの出会いである。














クリック毎度のことありがとうございます!

しがない道化師ピエリは何者なのか...

喜劇の街、サダエアポートから始まるこの旅をお見逃し

無く!


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