12話 指導してあげる
風の領主に許可されたので、部屋とか食堂とか浴場とか、ルナはいつでも城の施設を利用できる。つまり、ルナはメイドたちと一緒に食堂と寮と浴場を使ってる。
夜、城の大きな浴場。十数人のメイドが入浴中だけど、みんなルナのことをちょっと警戒している。ルナを含めて全員お風呂に入ったが、ルナは距離感を感じられる。
女子風呂なんてとくにないが、全員美少女の女子風呂は初めて見たな。他の女を見て、ルナは自分の心境の変化に気づいた。
もともと、入浴とか着替えとか、女性同士が一緒にやれる理由は「女性同士だから大丈夫」ではなく「女性同士だから我慢できる」だった。けど、今のルナは羞恥心を感じなくなった。
怪我を気にぜず命を賭けることができる強い心になったから身体的羞恥心を感じなくなった?それともドラゴンになったから?
「あの!」
お風呂の中で、ある女がルナに近づいた。
「あなた、ノリが悪くない?」
「はい?」
ルナはあの女にこう質問された。
風の都市には200人強の兵士がいて、全員若い女性で、風の領主のメイド。たまに警備行動と有事の際は鎧と武器を装備するが、ほどんどの時間ではメイドとして働いてる。
つまりこの女も、メイド兼風の都市の兵士ね。
「今日はあなたの動きを観察したよ。この城では正しい礼儀を守らなくちゃ!ヴェルナー様に認められたドラゴンであっても、この城に住みたいのならメイドの礼儀とルールをちゃんと学びなさい!」
「学ばねぇ。あたしは客将だ、メイドじゃねぇ」
「あなた!…わかった。この兵隊長兼メイド長の私が調教してあげる」
その譲らない態度を見て、ルナは思い出した。この女は風の領主の親友で、風の都市の兵隊長。態度が悪いけど悪い人ではなく、人の意見を聞かないやつ。
名前は、確か…
「マラマよ。これからはあなたのそばで朝から夜までお説教するから覚悟しなさいな!」
「好きにしろ。だがあたしを命令するな」
「…」
「お、おい」
お風呂の中だが、マラマは指でルナの身体を確認し始めた。手とか太ももとか腰とか、マラマの指先はルナの全身を触った。
「!?」
もちろんカップとヒップも手でちゃんと確認した。
「よし、測量完了。お風呂終わったらあなたのメイド服と兵士鎧を用意するね」
「あたしは着ないぞ」
「って、あなた戦えるの?」
こう質問して、マラマはルナのそばに座った。
「戦闘ってことは、魔物なりに大暴れするのではなく、おとなしくチームの戦闘指導を聞いてチームに合わせることよ」
「一般兵士として行動しなくちゃならないことかい?」
「そう。この城に入った以上、あなたはもう新人メイド兼新人兵士だから。できる?」
「できないと言うと?」
「あなたができるようになるまで、兵隊長の私と他の先輩があなたを指導する」
「勝手に決めるんじゃねぇよ。って、」
うるさいやつと議論するつもりはなく、ルナは自分のことを聞いてみた。
「あたしは帝国のやつらと戦いたい。そこで戦えるのか知ってるかい?」
「ヴェルナー様はもう帝国と対話する決意を示した。その好戦的な性格を治すほうがいいよ」
「あいつ…あたしが帝国を信じるなと言ったのにな…」
…いや。
「…」
よく考えてみれば、帝国は今きっと王女を攻略しようとしている。
自分もあさひも帝国の強者を撃退したことがある。自国の強者が急に王国で知らないやつに倒された以上、帝国は絶対に自分の情報とあさひのことを調べ始める。それと、正体不明の個体より、領主とか騎士団長とか、帝国はきっと攻略しやすい人を優先に攻略する。
つまり、自分とあさひが知らない間に、風の領主と光の領主が帝国の話を聞いて、変な判断を下す可能性が高い。
「わかった。あとでヴェルナーに会いに行く」
「許可しない。あなたは粗野なドラゴンだから」
「大切な警告があるんだ」
「だーかーら、兵隊長の私が許可しない!どうしてもヴェルナー様に会いに行きたいのなら、メイドなりの矜持を出しなさい!」
「…どうすればいいんだ?」
「ふふ」
マラマは、少し興奮して、ルナの前に立ち上がった。
浴場で、それにお風呂の中で、他の女にここまで圧迫されるとはな。
この世界の女子、全員セクシーだな。ルナがこう思ったら、
「ドラゴンって、人間の体を洗う方法がわかんないでしょう?私が、いや、私たちがあなたのあらゆる肌を垢すりするわ」
「え、いや、それはちょっと」
「逃がさないよ?」
ルナは、マラマの目から人形を飾りたい女の子のワクワクした気持ちを見た。
「身体を洗ったあと、メイドの身だしなみを指導してあげる。合格する前にあなたはヴェルナー様に会えないよー」
「…」
ルナは戦闘マニア。戦闘といえば、誰にも負けない。
けど、それ以外のことには、ルナはあんまり応対できない。
ですので、こうして、
ルナは、全ての肌が数人の人間女性に垢すりされて、生まれてから一番屈辱的なお風呂時間を過ごした。




