第六話 隠されし力【怒】
「あのぉ〜! 本当に敵意はないし、むしろ交流したくてやってきたんでぇ〜!そろそろ結界の中に入らせてくださ〜いっ!!」
ポピンの声が再び響いた。皇国は受け入れを決めたが【エルディア号】が大きすぎて着陸する場所がない。
「結界解いてくれたら、こちらから数名むかいま〜す!」
皇王は結界を解いた。
しばらくして、エルディア号と呼ばれた巨大な船から小さな神翔船が出てきて、皇宮の広場に着陸した。
船には船長、外交大臣、書記官と数名の護衛が乗っていた。
瑞穂皇国側は神響術継承三家の長達と護衛衆が出迎え、皇宮内に入って行った。
◇◇◇◇◇◇
皇宮内の一室では突然倒れた悠真が意識を取り戻そうとしていた。
「うおぉ…頭痛ってえぇ…なんだこれぇ」
「悠真様っ!」
今にも泣き出しそうな春が悠真を見つめていた。
その後ろには蒼真も功も居る。
「おぉ、春。みんなも。めちゃくちゃ頭が痛いんだよ。薬もってたりしないか?」
「頭が痛いだけですか?ほかには大丈夫なんですかっ!?」
「だ、大丈夫と思うけど…てかなんで泣いてんのお前?」
「なんでって…心配したんですよ…」
春は安心して更に涙が溢れている。
「おぉ…そうか。しかし泣くとお前本当にガキンチョだな」
「……」
「はははっ!頭は痛いけどその顔みたら笑えてきた!あはははっ」
「……」
「ん?どうした?」
功が後退り、すでに退避している蒼真は呆れている。
春は椅子に座り俯いている。
周りの残響までもが小刻みに震えているた…
これは…全ての人が使える術…いや現象?
【怒】である。
通常の【怒】はちょっとした事で発動し、残響もなにも必要ない。赤子で例えるとわかりやすい。
お腹が減れば【怒 大泣き】を発動し、眠れなければ親に睡眠不足と言う呪いをかける上級術(現象?)【怒 夜泣き】を使うのである。
今この瞬間…春は上級神響術をも凌駕する【怒】を発動する域に達した。
そう、その名は【怒 逆鱗 —滅—】 である。
蒼真と功が隅で抱き合いながら震えている。
残響までもがその場から逃げていく。
一方、まったく気付いていない奴もいる。
「ねぇ、悠真様…」
「あははは なんだ春」
「…だれが?だぁれぇがぁ?!ガキンチョだってぇえ!!」
「えぇ?えっ? は、春さん!?」
「こっちはよぉ!心配で心配でよぉ!このまま目が覚めなかったらどうしようとか思ってたのによぉ!」
悠真はやっと自分の失言に気づいた。
「やっと目が覚めたと思ったら! はぁっ? ガキンチョとか言いやがってよぉ! おまえさぁ! けなげな女の子のさぁ!気持ちわかんねえのぉ?!あぁっ!」
「はぃっ! 申し訳ごさいません!」
「謝りゃいいってもんじゃねぇんだよ!」
「は、春さん・・・人物像崩壊して…」
「んなもんしらねぇ〜よ!お前頭痛いだけって言ったなぁ!?」
「はいっ!痛みも和らいできましたっ!」
「そこに正座しろ! 」
「な、何をおっしゃっているのやら」
「聞こえねぇのかっ!早くしろっ!!」
「はいぃっ!」
悠真はベットの上に正座して、怯えている。
部屋の隅の2人は震えながら小声で
「蒼真様…」
「なんだい功?」
「悠真死にますかね…」
「半々だねぇ」
「そこぉ!うるせーよっ!」
「はいっ!!」
蒼真と功が震え上がる。
春は再び悠真へ視線を戻した。
「さて、話の続きだがよぉ」
ドゴォッ!!
春の右腕が鞭のようにしなり、拳は綺麗に悠真の腹筋へめり込んだ。
「ぐあぁ…」
空気が震え、悠真の身体がくの字に折れ曲がった。
神獣すら黙らせると伝わる上級【怒】を習得した春の鉄拳は、容赦なく悠真をベッドから床へ沈めた。
フゥゥ〜と息をつき、額の汗を拭う春。
「次はこれですまねーからな」
返事を返す事すらできない敗者を見下してクルッとまわり小さくなっている二人をみる。
「さぁ蒼真様、功様!ご夕食の時間ですっ!」
春はいつも以上の笑顔だった…




