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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
瑞穂皇国

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第五話 繋がれた大地

突如現(とつじょあらわ)れた空に浮かぶ巨大過ぎる物体。

皆、不安そうにその異様な姿を見上げている。


悠真(ゆうま)!」


(こう)の声が近づいてくる。


「なんだよ、あれは?」

「知るわけないだろ!ただ・・・」

「ただ?」

「昔、よく読んだ古文書にあった船に似ている」

「あれがか?あれは船なのか?!」


功は興奮して悠真にせまる。


「あぁ、あの刻まれた術印、蒼白い光、たしか・・・・.」


悠真は記憶を急速に手繰(たぐ)り寄せていた。

そして空飛ぶ船の絵の下に書かれた文字が浮かんだ。



神翔船(しんしょうせん)・・・」



子供の頃、家の図書室で読んだ古文書。

当時はただの御伽話(おとぎばなし)だと思っていた―――


   世界に(ただよ)神々(かみがみ)残響(ざんきょう)

   (あお)宝玉(ほうぎょく)に集めし時。

   人は浮く力を得た。

   人はその石を神霊石(しんれいせき)と呼んだ。


   蒼の宝玉を使い。

   人は空を(かけ)すべを得た。

   (いにしえ)の神々に感謝し。

   蒼の宝玉は神霊核(しんれいかく)と呼び。

   蒼白(あおじろ)い光を放つ。

   (そな)えた船は神翔船(しんしょうせん)と呼ぶ



「どうした悠真!?」

「あぁ!そうだ間違いない!」


悠真の眼差しが不安から好奇心に変わる。


「神翔船に間違いない!規模(きぼ)も形も違うけど・・・・古文書と同じだ!」


「とりあえず皇宮に入って皇王様達の所に行こうか」

「そうだな、そうしよう兄様。」


悠真、蒼真、功と春は皇宮内を走りながら窓の向こうに見える神翔船から目が離せないでいた。


「突然現れてびっくりしましたけど、何しにきたんですかね?」


春が問いかけた疑問は皆同じように考えていた。

船が現れてからしばらく経つが、依然(いぜん)として動きはない。


「今はっ・・・ まだ結界の外にっ いるみたいだしぃ どう突破するかっ 考えてるんじゃないのかっあ!?」


明らかに運動不足な、功は息を切らしながら皆について走っている。


「えーっ!やっぱり侵略(しんりゃく)しにきたんですかぁ!?」

「いゃいゃそうと決まったわけじゃないよ」


(蒼真の言う通りだ。まだ何をしにここに来たかわからないし、あの術印(じゅついん)(まぎ)れもなく神響術(しんきょうじゅつ)・・・。だとしたら奴らの正体は・・・・)


「皇王様!父上!」


悠真達が皆集まった部屋に入った瞬間。

空に浮かぶ神翔船の船底に刻まれた術印が蒼く輝いた。

そして空一面に巨大な光の紋様(もんよう」)()かれる。

皇宮中が騒然となった。


「結界に接触したぞ!!」

「神響術 燎火りょうか準備!!」


皇護衆の叫びが響き、皇護衆筆頭(こうごしゅうひっとう)が動く。

命令と共に十人の皇護衆が月見台(つきみだい)に並び護符を構え、言霊を唱え始める。(※月見台・・・ベランダ)


「次に動きがあったら放つ!術を維持せよっ!!」


ギイイィ・・・・


船体と結界が()れる音と共に船が(かたむ)く。


「放てぇ!!」


筆頭が叫んだと同時に十人の護符が一斉に炎と変わり渦を巻いて船に向かっていく。


「だめだ」


悠真はハッとした・・・隣にいた蒼真の発した言葉に。

突然つぶやくいつものそれであった。

しかし、その声は悠真のおちゃらけた少し高い声ではなかった。

力強く。よく通る声。蒼真であって蒼真でない感覚。

まさに船に術がぶつかる瞬間・・・

どこからか現れた十羽のカラスが間に入り身代わりとなった。

そこにいた誰もが目を疑う瞬間だった。


「蒼真!今のはいったいっ!?」


目の前で信じられないことが起こっていた。

皇護衆達が使う神響術【燎火】しんきょうじゅつりょうかは皇護衆の一番強力な火力術である。

それをカラスが防いだのである・・・


「なんか・・・攻撃しちゃ駄目なんだよね」

「駄目なんだよねって!今のはなんだよっ!?」

「わからない」

「わからないで済むかよ!お前がだめだっていって!カラスが現れて!」

「そうだねぇ〜。カラスすごいねぇ」

「おまっ!なんでだめだと思ったん・・・・」


ピイィィィー!!


空気を振動させて耳鳴りのような不快な音が響く。

皆は耳を(ふさ)ぎうずくまった。


「あー!あーっ!!テスっ!テスっ!ただいま拡声器(かくせいき)のテスっ!」


船から声が聞こえてきた。それも女性、いや女の子の声・・・

皇国の皆はどうすることもできず、船を見上げたままだ。


「あーっ!あー! みなさん聞こえますかー!?」

「みなさん!大変お騒がせしました〜っ!!我々は隣の・・ジィ〜・・からジィ〜」

「あれぇ、おかし・・ジィ〜・・・さっきの衝撃で壊れ・・ジィ〜・・」

「もぉぉ!ジィィ〜・・・船長!甲板(かんぱん)出て直接言うか・・・ジッ・・・」

「メティ!一緒にきて・・・・・ボンッ・・・・・」


皇国のみんなは呆然(ぼうぜん)と立ちすくんだまま、ずっと船を見上げている。

悠真達も身構えることすら忘れ、船から聞こえてきた声にあっけに取られていた。

程なくして船首(せんしゅ)の甲板らしき場所に、二人の女性と甲冑(かっちゅう)を着込んだ男性が数人現れた。


「みなさん!聞こえますかーっ!?聞こえたら手を振ってくださーいっ!?」


この状況で誰かが手を振り返すとでも思っているのだろうか・・・


「おーいっ!聞こえてるよぉぉ!!」


いた・・・・春という強者が・・・・


「おーっ!そこのお嬢さんありがとぉぉぉ〜! ごほんっ!それでは改めまして!」


茶色い髪に大きな目。頭にはゴーグルをつけている。

年は二十歳(はたち)にもなっていないぐらいか?

作業服のような格好をした元気そうな女の子が叫んでいる。

春と似たり寄ったりな子だ・・・


「我々はぁ〜! 遥か海の向こう!【アルスティア共和国】からやってきましたぁ!」


皇国全体がざわつく。


「けして敵対心はありませ〜んっ!この船【エルディア号】の完成飛行で〜すっ! あっ!私の名前は【ポピン オスリア】この船を作った技師でぇ!隣にいる綺麗(きれい)なお姉さんがぁ!綺麗なくせに性格悪い【メティラ】ちゃんで〜っす!」


アルスティア共和国だって?

遥か海の向こうだって?

今の時代を生きている皇国の人間には、海の向こうにも人がいる事を知らないのではないか。

悠真にしてみても、古文書(こもんじょ)で読んだ御伽話(おとぎばなし)との認識しかない。


「まさか、本当に人がいたなんて・・・」


悠真は震えていた。

恐怖ではない。

身体の奥から込み上げる歓喜だった。

毎日毎日、断崖絶壁の草原から眺めていた海。


【この遥か向こうには何があるんだろう】


毎日毎日考えていた事。

その答えの欠片(かけら)が目の前にあるのだ。


「悠真様・・・大丈夫ですか?」


春が珍しく心配そうに顔を見つめている。


「あぁ、大丈夫、大丈夫。だけとなぜか涙が止まらないんだ」


だが突然、目の前が真っ暗になり悠真は倒れた。


――【旅立ちの時です。  悠真】――


頭の中で優しい声がそう語りかけてから。

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