第六十九話 やっぱり同じ
「さぁ、一度家に戻ろう」
「わかったにょ!」
ジェポルに言われて再び敷地の中央に位置する住居に戻る。
ポピンの父ルインと母ランヌも加わった。
「じゃぁ紹介するにょ!悠真と奥さんの春、功と薬草学者のユズハ。そしてメティラにょ」
「初めまして!功と言います!先日はリルルさんにお会いしまして…なんともお美しい方でした!」
「今お姉ちゃんは関係ないにょ!」
「あ、そうか…」
功の軽い暴走から始まった雑談は、神の魂の話になり、ポピンが説明をする。
驚きを隠せないルインとランヌをよそに、ジェポルは興奮していた。
「で、ではポピンも特別な力を授かったのか!?」
「にょ!神との繋がりをヴォルガン神様から授かったにょ!」
「なんと!鉱物の神からだって!?」
「ふっふっふ!おじいちゃんは貰えないにょ!」
「ちょっと見せてくれないか!?」
「お父さん、そんな神の力を簡単に見せてくれなんて!」
「別にいいにょ。はく、お願いにょ」
「シュッ!」
突然、ポピンの鞄から這い出してきた白蛇に、ジェポル達は驚く。
「なんだい、その白蛇様は!」
「私の眷属にょ!」
はくは、いつものようにポピンの右目を擦る。
ジジッ…
ポピンの右目に術印が浮かび、目の中へ吸い込まれた。
「これが神との繋がりにょ!無機物の残響と何の神霊石かわかったりするにょ!」
「素晴らしい!素晴らしいぞポピン!ちょっと待っていてくれ!」
そう言ってジェポルは痛む腰を押さえながら工房へ向かった。
「はぁ、腰のせいで隣に行くのも一苦労でな…」
そう言いながら机の上に一欠片の赤い石を置いた。
「これは何の石かわかるのか?」
「にょ?」
ポピンはじっと石を見つめて驚きの表情を見せた。
同じく石を見た悠真と功は、見覚えのある色に想像がついていた。
「じいちゃん!これどうしたにょ!?これ朱の神霊石にょ!!」
「やっぱり神霊石だったのか…私が若い頃に見つけたんだよ」
「どこで見つけたにょ!?」
「東の浜辺で拾ってね。なぜか今までずっと持っていたんだよ」
「浜辺で!?悠真達はどう思うにょ?」
「…触ってもいいですか?」
「もちろん構わんよ」
石を手に取り、握りしめる。
確かに神霊石だが、残響は枯れかけていた。
「残響が残っていないな」
「やっぱりそうにょ、神霊石であるのは間違いないにょ」
「込めるか?」
「やってくれるにょ!?」
「もちろんだ」
「じいちゃん!この石復活させてもいいにょ!?」
「そんな事ができるのか?」
悠真が胸に下げた無の神霊石を出しコンを呼ぶ。
ボンッと煙を上げて現れた綺麗な小狐にまたジェポル達は驚く。
コンは悠真に言われ、朱の神霊石を咥えて集中すると、周りの残響が集まり始めた。
「きゅっ!」
「ありがとうコン、ほら」
「きゅうぅぅ!」
ご褒美に油揚げを貰って大喜びのコン。
そこに春の無の神霊石からトウがポンッと出てきて油揚げの取り合いを始めた。
「こらトウ!それはコンがご褒美に貰ったんだからあなたはダメでしょ!?」
「くうぅ…」
三度驚くジェポル達。
ポピンはコンが残響を集めた神霊石を見て頷いた。
「うん、戻ったにょ!輝きが増したにょ!?」
「本当だ…綺麗だな…この神霊石は何に使うものだい?」
「それは炎の神響術の効力を高めるものですね」
「炎…」
当然だが、理解のできないジェポル達に悠真は実演してみせた。
「例えば…」
悠真は右手の手のひらを前に出し、左手で手印を組み焔と唱えた。
すると手のひらから小さな炎が発生した。
「この状態で神霊石を握ると…」
ボボッ!
「このように炎が大きくなるんです。まぁ術の燃料みたいなものですかね」
「いや…簡単に言うが今やっておられる事は誰もできないんじゃ…」
ルインがそう呟く。
するとヴォルテクス・レゾナ全員が同じ行動をした。
功は黄土色の揺らぎを。メティラは雷が手のひらでバチバチと光り、ユズハは翠色の揺らぎ、ポピンは蒼色の揺らぎが現れた。
「あ、できたわぁ」
「俺もだ」
「私はバチバチ言っているぞ!」
「私までできるにょ!」
「何だかもう…神がかってますね…」
驚きすぎて呆れ始めたルイン。
なんでこんな事ができるのか、ポピン達にも謎であった。
「何でこんな事ができるようになったのだ?」
「それはあれだ、体に神霊石が埋まったからだろ」
「あぁ、なるほどな」
「それでこんな事できるようになっちまったってわけか…」
『神霊石が埋まっている!?』
フェルナ国の浜辺での話をして、空いた口が塞がらないジェポル達。
そして一人そわそわしているのは春だった。
「どうしたにょ春?おしっこにょ?」
「違うよっ!」
「どうしたのだ春」
「私もやってみたいんだけど…」
「やればいいじゃない、春ちゃんもできるわよぉ」
「…いや、春はやめといた方がいいかもな」
「どうしてにょ」
「考えてみろ、俺たちは朱や蒼だが、春は無だぞ」
「それがどうした?」
「なんか…吸い込まれるような…消されてしまいそうな…」
「怖いにょ!やったらダメにょ!」
「やめておこう春」
「やっぱり…なんか自分でもしちゃダメな気がして…でもちょっとぐらい…」
春が手印を組んだ。
手のひらに何かが揺らいでいるように見える。揺らぎから顔ほどの大きさの球体だとわかった。
球体は何をするでもなく、ただ揺らいでいる。
「こ、これなに?どうしたらいいの!?」
「知るか!何だよそれっ!」
「わ、わかんない…」
「ちょ、ちょっと突いてみるにょ?」
「素手で触るなよ!棒とか!」
「あわ、あわわわ!どうするのこれっ!?」
「自分で出したんだから、何とかできないのか春!」
つん…
ジェポルが躊躇いなく鉄の棒で揺らぎを突いた。
何の音もなく、触れた部分の鉄の棒は消滅した。
『!?』
ジェポルはさらに棒を差し込む。
鉄は消えていく。まさしく無になった。
「春!手印!手印を解け!」
「あっ!」
手印を解いてすぐに球体は消える。
皆、冷や汗をかいていた。
「これは…やばいどころじゃねぇな…」
「ほんと、これはありえないかもねぇ」
「さすが春だな!」
「やっぱり春が最強にょ…」
あまりの不可解さと危険さで、春が手印を組む事は禁止された。
「で…まぁ神霊石とはこんな感じで使うんですよ…」
「はぁ…逆にできなくて良かったと少し思いましたよ…」
「あはは…」
「ところで悠真王子、その刀を見せては頂けませんでしょうか?」
「王子はやめてくださいよ…見せるのは全然構いませんが」
「悠真、ルイン殿はすごい方なのだぞ」
「ん?」
「私のレイピアは代々アルスティア皇室に伝わる武器なのだが、それを修理できるのはルイン殿だけだ」
「おお、それはすごい!名のある鍛冶師でいらっしゃったのですね!?」
「いえいえ、そんな大したものじゃないですよ」
「悠真のクナイもルイン殿の作だぞ」
「そうでしたか!あれは素晴らしいですよ!」
「ありがとうございます!」
「そうだ、私のレイピアも久々に研いでもらおうか」
「あぁ、それはもちろん!」
ガチャ
「ラティス様…これは…」
「いつも預かってもらっていたレイピアだ」
「…いやいや、これは別物では」
「あぁ、セレノス様の加護で何か形が変わったのだ」
「メティラ様…そんな神の武器を、人間が研ぐなどできませんよ…」
「そうなのか…」
「…刀をぜひ」
「あぁ、どうぞ」
「……これは素晴らしい」
真っ白な手袋をつけてルインは祈りを捧げた。
「では、失礼します」
そう言ってから刀身に手を当て目を閉じる。
真剣な顔つきだったルインがニヤニヤと崩壊していくのがわかった。
「ルインよ!お前がそれほどの表情をするのは珍しいな!」
「親父…これはやばいぞ…この伝わってくる温もり…いくつもの修羅場を切り抜けてきたであろう力強さ…」
「そんな事がわかるのですか?」
「もちろんですとも…長年鉄を打ってますとわかってくるのです…なんとしなやかな…それでいて驚くほどの頑丈さ…」
「お父さんはこうなると止めれないにょ」
パッと目を開けたルインは鍔を見つめる。
「これも素晴らしい……この空いた穴は…」
「それは何でしょうね、私が授かった時から空いている穴ですね」
「……親父その石持っててもしょうがないよな?」
「神霊石か?お前何企んでいるんだ?」
「ちょっといいか?」
後ろの台で天照と朱の神霊石を持って話し始めるジェポルとルイン。そこへポピンも混ざった。
何が始まるのか不安の色を隠せない悠真。
「ここはな、実はこういう事じゃないのか?」
「おお!なるほどな!」
「確かに悠真は朱の神霊石に選ばれているにょ!」
「だったらやっぱり可能性はある!」
「先ほどの力を見る限りでは成功しか見えないな!」
「やる価値はあるにょ!」
『ふふ…ふふふふ…ふへへへへへ!!!』
皆が思った。
―あ、やっぱり血が繋がってるんだ― と。
「悠真様!私どもを信じて刀を預けてはくれませんか!」
「悠真様、さらに強い刀にして見せますので、どうかこのおいぼれの言葉を信じてくれませんかな!?」
「大丈夫にょ悠真!私たちの研究…じゃなくてこれからの戦いにきっと役立つにょ!」
―今、研究って言ったよな?―
「ま、まぁ信用しますが、何せ我が家に伝わる家宝ですのでそれだけは…」
「安心してください、ちょちょっといじるだけですから!?」
「はぁ…」
□□□□□ラティの日記□□□□□
◯月×日
みんな気づかぬうちに強くなっている
今日の手のひらから出たのはなんだ?
いつ使うんだ?
悠真は炎だから、いつでも火が使えて便利だろうが
私なんてバチバチ言ってるだけだぞ
何に使えると言うのだ…




