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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
フェルナ国編

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第六十八話 じいちゃん

「七歳なんて私…悠真(ゆうま)と田んぼ走り回って蜻蛉(とんぼ)捕まえてたわ…」

「私は薬草畑で絵本読んでたわね…」

「やはりポピンは天才だな」

「そうにょ!」

「これはなんだ?」


春と同じくガラクタ置き場の中から、功が丸い球(たま)を拾ってポンポンと叩いた。


「そ、それはダメにょ功!!」

「えっ?」


ブシュウゥゥ〜!


球の割れ目から真っ白な煙が吹き出す。

皆一斉に部屋から飛び出して咳き込み、研究者たちは何事かと駆け寄ってきた。


「団長!大丈夫ですか!?」

「大丈夫!ごめんね。仕事に戻って大丈夫だよ!」


安心した研究者達はそれぞれの仕事に戻った。

そこに再びリルルが現れて笑顔でこちらを見ていた。


「あ…あははは…不慮の事故にょ…」

「そうですか…ちょっと皆さん失礼…」

「や…やめるにょ…」


あのポピンが真っ青な顔で震えていた。

まるで夜過神を見るかのような顔で…


「ちょっとこい!お前いつになったら部屋片付けるんだ!?」

「じ、時間がないにょ…」

「あぁ?時間がない?今日は何してたんだ?ずっと居なかったよな?」

「じいちゃん達の土産買いに行ってたにょ…」

「ほぉぉ…天機師様はお気楽ですねぇ…みんな必死で頑張ってるのになぁ!」

「ご…ごめんにょ…」

「にょっ!?」

「ご…ごめんなさい……お姉ちゃん」


 ―お姉ちゃんっ!?―


「お前ここ片付け終わるまで帰らせねぇからな!」

「はい…わかりました…」


うるうるの目で縮こまるポピン。

そして振り返ったリルルは満面の笑みで皆に言う。


「皆さんごめんなさい!団長に急用が出来たので、先にお帰りいただけますか?」


『はいっ!!』


警備員に入り口まで送ってもらった悠真達はまず技師団の敷地から急いで出た。


『ポピンのお姉ちゃんっ!?』


「ああそうだ、リルル殿はポピンの姉だ。優秀な方だ。」

「優秀…なのかもしれないが、春を見ているようだったじゃねぇか…」

「功!流石にあそこまで酷くないよ!」

「いやもっと酷いだろ…」


ゴツッ!


「性格は春として…あんな綺麗な姉ちゃんがいたとは…ポピンのやろう、隠してたな」

「性格は春ってなによ!?」

「あはは、リルルさんは忙しいのだ、ここでしか会ったことはない、だが春よりは穏やかだぞ」

「お仕事が大変なのねぇ…でも春ちゃんより勢いはなかったわぁ」

「ちょっと!みんなして何いってんのよっ!?」


「しかし怖かった…春の次に…」


ゴツッ!


ポピンが目の下に隈(くま)を作って家に現れたのは、それから二日後だった。

今にも寝てしまいそうなポピンを揺すりながら、家の四階にある共同の居間で夕食をとる六人。

カルラが得意のシチューを作ってくれた。


「やっぱりカルラさんのシチューは美味しいわぁ!」

「ユズハさん、ありがとうございます」

「大丈夫かポピン、シチュー大好物だろ?食べてないじゃないか」

「大丈夫にょ…ちょっと目の前に星が飛んでいるだけにょ…」

「あらあら駄目じゃない。これ飲んで」

「にょ、いつもの滋養強壮薬にょ?」

「さらに強力な超滋養強壮薬よ!」

「いただくにょ…」


小瓶を一気に飲み干したポピンの目が大きく開く。


「な…星が消えたにょ!眠気がなくなったにょ!シチュー食べれるにょっ!」

「ふふ、そうでしょ!?効果抜群なのよぉ」

「ありがとうにょ、ユズハ!」

「ユズハ、何がはいってるの?」

「いつもの調合と、この間火山帯で捕まえたアツイノコウブツコウチュウと唐辛子がはいっているの!」

「うへぇ…」

「そんな物、飲んで大丈夫なのか!?」

「大丈夫よぉ!ちょっと後で大変かもだけど…」


『大変って何っ!?』


食後、明日から向かうエリーテレルについて予定を立てる。

まずはエリーテレル国王との謁見、そのあとはおそらく歓迎会だろう。


「その後はどこへ向かう?」

「私の実家に行って、じいちゃん達を紹介するにょ!」

「じいちゃんって、もう一人の天機師様かっ!?」

「そ…そうにょ……」

「どうしたポピン?」

「な、なんかさっきからお腹とお尻が熱いにょ…」

「あらあら、もうきちゃったの?」

「きちゃった?ってなにが…にょ?」

「さっきの超滋養強壮薬ねぇ、まだ試作品なの。だからちょぉっと、お腹が崩れちゃうかもなのょねぇ!しかも熱いの!」

「…まさしく今そうなってるにょ」

「まだまだ改良が必要ね!」

「ユズハひどいにょ!トイレっ!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


なんとか一晩でお腹とお尻の熱さが治ったポピンの操縦で、首都テレルシアにあるエリーテレル城に到着した。

隠蔽術印(いんぺいじゅついん)を解除すると、機体にアルスティアとヴォルテクス・レゾナの紋章が現れた。

銀白に輝くアストレア号が駐機場に着陸態勢に入ると、騎士団が敬礼をして出迎えた。

すぐに国王との謁見が行われ、歓迎会は一時間程で終わった。


「三年ぶりの実家にょ」

「そんなに帰ってないのか?」

「なかなか忙しいにょ」

「それリルルさんに聞かれたらまた怒られるんじゃねぇか?」

「にょ…お姉ちゃんも同じぐらい帰れてないにょ…」

「ポピンの尻拭いに忙しいからじゃねぇかっ!」

「その可能性は高いにょ…」


黄土色のレンガ造りの街並みが珍しく、春はキョロキョロしている。

煙を出す大きな煙突が数本、どの家の前にも機械の残骸のようなものが転がっていた。


「さすが技術の街というか…変なものばっかり転がってるな」

「あははは、みんな作るのが大好きにょ」

「作ってる物が異常だよ」

「何がにょ?あそこの広場に留めて歩くにょ」


レンガを敷き詰めた道も、建物と統一感があった。

皇国にはない風景から目が離せない春は、一言も喋らず見入っている。


「あの転がってる顔みたいなのはなんだ?」

「にょ…多分人型の機械でも作った残骸にょ」

「なんだそれ…」

「じゃぁ、あの箱は何かしら」

「あれは…犬にょ!」

「犬って…ただの鉄の箱じゃねぇか」

「わからないにょ?なら見たらいいにょ。おじさ〜んっ!」

「あぁ、なんだ!?」

「この箱動かしてみるにょ!?」

「あぁ!?今忙しいんだよ、今度にしてくれ!」

「じゃぁ勝手に動かしていいにょ!?」

「だめだ勝手に触るな!って…にょん?」


奥から一人の男が慌てて走ってきた。

その男はポピンを見るなり笑顔になる。


「にょんにょん言ってると思ったらやっぱりポピンじゃねぇか!」

「久しぶりにょ!」

「おお!立派になって!」

「早く皆に犬見せるにょ!」

「仕方ねぇ、天機師様に見せれるような品物じゃぁねぇが…」


男はそう言って箱の横にある突起物を押した。


ウィィン…ガチャ…ガチャ…


ただの箱だった物が変形し、犬の形になって吠える。

ポピンは大笑いしている。


「なんにょこれ!顔が犬じゃなくて馬にょ!あははは」

「失敗したんだよ、顔長く作りすぎちまった!」

「面白いにょ!!」

「だろ!なら成功だな!ガハハハ」


悠真達はボケーっと二人のやり取りを眺めていた。

あれは一体何に使う物なんだろうと。


「んで、もう家には帰ったのか?」

「今からにょ」

「そうか、みんなきっと喜ぶぜ、早く行ってやりな」

「うん、またにょ!」


おじさんにお辞儀をして進んですぐ、角を曲がって見えたのは広い敷地に立つ建物。

三棟に分かれ、中央は住居なのか、周りと同じレンガ作りの可愛らしい家。

左側には大きな煙突がついた同じくレンガ造りの工房、右側には木造の古めかしい工房があった。


「ついたにょ!ようこそ我が家へにょ!」

「なかなか大きなお家ね…」

「メティには負けるにょ!」

「それは誰も勝てはしないわぁ…」

「城だもんな…」


鉄格子の門を開け、皆を招き入れるポピン。

広い庭の左側には鉱石が積み上がり、右側には船の残骸とも言える物が積み上げられていた。


「ただいま帰ったにょ〜!!」

「はぁい!?」

「お母さんただいまにょ!」

「あら?ポピン?ポピンちゃんなのっ!?」


長い髪を束ねて前に流した女性が驚きポピンを見つめる。

すぐにごつい革のエプロンをした男性もやってきた。


「お父さんもただいまにょ!」

「ポピン!!久しぶりだなっ!」


お母さんと呼ばれた女性はポピンに抱きつき、男性は頭を撫でる。

ポピンは照れくさそうに受け入れていた。


「お母さん達やめるにょ!ほら友達を連れてきたにょ!?」

「お友達!?」


ポピンが指差す方を見た二人は、慌てて身だしなみを整える。


「こちらの方々はひょっとして…」

「お父さん、ひょっとしなくてもヴォルテクス・レゾナのみんなにょ!」


二人は慌てて膝をついて礼をする。


「ちょ…そんな礼など必要ないです!俺らは何も偉くないですからっ!」

「何をおっしゃいます!第三王姫様と第四王姫様に悠真王子様でございましょう!?」

「あ…まぁそうなんですけどね」

「ルイン殿、ランヌ殿。気にしないでくれ、ヴォルテクス・レゾナとして動いている時はただの軍人だ」

「ラティス様がおっしゃるなら…」

「そうにょ、気にしないにょ」

「お前はもっと気にしなさい!」

「にょ…お、おじいちゃんは!?」

「爺さんなら今日も朝から工房で居眠りしてるよ」


ポピンはまた後で来ると言って木造造りの工房へ皆を連れていく。

二人は申し訳なさそうに悠真達を見送った。


「じいちゃん!じいちゃん起きてるにょっ!?」

「ファェッ!?」


相変わらずノックもせず飛びこむポピン。

そこには、揺れる椅子に座り老人が居眠りをしていた。

真っ白な長髪と丁寧に整えられた顎鬚、眼鏡を掛け、上品な衣装を身にまとった紳士だった。

突然入ってきた数人の男女に驚き、椅子から落ちそうになる老人。


「じいちゃんただいまにょ!!」

「……」


老人はズレたメガネを直し、自分の真横でニコニコ笑うポピンを見つめる。


「おお!ポピンかっ!?おかえり!!」

「ただいまにょじいちゃん!また寝てたにょ!?」

「はははは!もう寝ることしかできんわ」

「まだまだ何でもできるにょ!」

「そうだな!ポピンの顔を見たら元気になったよ!」


本当に嬉しそうな二人を見て、暖かい気持ちになる四人。

見ているだけで、皆も嬉しくなっていた。


「ところでこちらの皆さんは?」

「友達にょ!」

「おや友達かぃ?旦那様はまだ紹介してくれないのかね」

「そんな相手はまだ居ないし早いにょ!春じゃあるまいし!」

「なっ!?」

「ははは、そうかそうか。まだまだポピンは子供だからな」

「それは違うにょ!もぅ…みんな私のおじいちゃんにょ!」

「どうも初めまして皆さん、ポピンの祖父のジェポルと申します。いつも孫の面倒を見てくださっているようで、ありがとう」


『……ポピンと違って真面(まとも)だ』


□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日


エリーテレルは面白いところだ

街に転がるガラクタ

なのに汚くはない場所だ

みんな情熱的で物作りへの挑戦がすごい!

しかしポピンも旦那はまだかと言われていた

十九歳なのに…私は…二十五なんだが…

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