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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
フェルナ国編

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第60話 黒い狼

公務が終わり、皆と合流した悠真と春とメティラ。

慣れない姿で長時間に渡って愛想を振り撒いていたので肩こりが激しかった。

宿屋に着くなり崩れ落ちる三人だった。


「疲れた…もう嫌だ…」

「今日は私も疲れたわ」

「ううぅ…ヒールを長時間履くのはダメだ…」

「お疲れにょ!」

「滋養強壮薬でも飲む?」

「頼むユズハ…」

「私も頂戴!」

「私にもくれ…ちなみに昆虫は入っているのか?」

「昆虫は入っていないわよ、昆虫はね」

「入っていないのなら頂く」


ユズハは壁にかけていた薬品鞄の中から小瓶に入った液体を渡した。

サラサラな液体で色は緑色だが、爽やかなシトラスの香りが漂い飲みやすかった。

三人は一気に飲み干す。


「意外と飲みやすい!」

「疲れや肩こりに効果があるの」

「ありがとう。そういや功はどこへ行ったんだ?」

「なんか膨れて部屋へ閉じこもってるにょ」

「何したんだよ?」

「ちょっと財布忘れたって全部奢ってもらっただけにょ」

「財布を忘れて全部?何を全部?」

「ユズハと街で食べ歩きしたにょ」

「なっ!私も行きたかったのに!やはり三人で遊んでいたのか!」

「やはりとは何なにょ!普段から遊んでるみたいに!」

「遊んでるじゃないか…」

「悠真まで言うにょ!?」

「でも美味しかったわねぇ、あの焼き菓子」

「うん、その後のパンに挟んだバーグってのも美味しかったにょ!」

「あぁ!あれも大きくて食べ応えがあって、お腹いっぱいになっちゃったわねぇ!」

「いくら奢らせたんだ?」

「にょ?ほんの500レナにょ」

「どれだけ食ったんだよ!」

「私は焼き菓子三個とバーグを四個とモロコシ焼きを三本にょ。あと…」

「ポピン食べすぎでしょ!」

「にょ。確かに体が重いにょ…」

「もういい。私も行きたかった!それだけだ!」

「あ、明日も行くにょ!?」

「明日は黒曜石を見に南東の火山帯まで行くんでしょ?」

「そうにょ」

「もう風呂入って俺は寝るぞ、おやすみ」

「おやすみなさぁい」

「待ってよ悠真ぁ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「うわぁ!本当に畑と田んぼしかないねぇ!」

「この国の街はさっきまで居たあの首都だけにょ。あとは畑と田んぼにょ」

「黒曜石は採掘していないのか?」

「昔はしてたみたいだけど、今はやってないにょ」

「じゃぁ他に採掘場があるってのかよ?」

「功の言うとおり、メアナとフェルナの間にある【オルネア国】で少し取れるのだ」

「黒曜石はさほど需要はないものねぇ」

「オルネア国…」

「悠真達が好きそうな国にょ。湾岸都市で漁業が盛んにょ」

「そういや最近、魚料理食ってねぇなぁ」

「見えてきたにょ、あの山が並んでるのがそうにょ」


皇室専用機の護衛で騎士団が乗ってきたレグナント【カイト級三号】で現地に向かっているヴォルテクス・レゾナ達。

田んぼの切れ目から続く草原を越えるとゴツゴツした岩場が現れた。

草原にレグナントを留め、岩場へ向かう。

そこには地肌が剥き出しの山が数座そびえ立っていた。


「火山って感じだな」

「歩きにくいにょ、春とユズハは気をつけるにょ」

「ありがとうポピン」

「さて。どうする?」

「どうするも何も、ここから一体何を探し出すってんだ?」

「うむ…目的がない」

「何それ?」


黒の神霊石が黒曜石だとわかり、沢山ある場所へと来てみたが何をするまでは決めていなかった。

ゴツゴツした岩場で考え込む六人。春とユズハは大きな岩に座っていた。


「とりあえず、【索】してみてくれよ、功」

「わかった。ポピンも神との繋がり(神眼)でみたらどうだ?」

「そうだにょ。はく、お願いにょ」

「シュッ!」


ポピンの右目に尻尾を擦り付けて神との繋がり(神眼)を発動させる。

功は目を閉じ集中し、ポピンは左目を塞ぐ機能を追加したゴーグルを装着し、辺りを見回した。

二人が調べている間、悠真は近くを見回った。

少し登った場所には、割れた岩から艶やかな黒い輝きをもつ岩肌が見えている物もあった。


 ―これはただの黒曜石。残響は感じられないな―


「悠真、何してるの?」

「春、あんまりウロウロして怪我するなよ」

「うん、気をつける」

「功もポピンも何も反応してないか?」

「みたいだね、二人とも黙ったまま」

「ユズハは?」

「メティと一緒にレグナント留めてる草むらにいるよ、薬草ないか探してくるだって」

「そうか、メティが一緒ならまぁいいか」

「何もないね」

「ああ、その方が安心かもしれんがな」


春を支えて少し大きめの岩に登ったとき、草むらの方から叫ぶ声が聞こえた。

慌てたメティラの声だった。


「みんな!早くきてくれ!」


功達も声の方へ向かい、悠真も春を抱きかかえて岩場を駆け降りる。

すぐそこに見えるメティとユズハが見つめる先には悠真が隠れるほどに背の高い草が茂っていた。


「どうしたんだ?」

「悠真、あの茂みに何かいるんだ」

「その茂みの手前で採取してたんだけど、唸り声を聞いたわ。姿は見てないけど」

「功、念の為に結界を張ってくれ」

「わかった」


功は【索】を再び発動し、結界と身体強化を受けた悠真が茂みに近づく。

天霞を抜き、刀身で茂みを少しかき分けたが何もいない。

一歩ずつ、そっと前へ進む悠真に功が叫ぶ。


「悠真!右斜めから何か来るぞ!」

「チッ!」


悠真は慌てて後退りする。

功が言った方向の茂みが激しく揺れて真っ直ぐこちらへ向かってきた。

逃げれない悠真は天霞を構えた。


ガルルルッ!!


真っ黒な四本足の生物が、物凄い速度で近づき悠真を飛び越える。

真っ直ぐ春達の方へ向かう生物を悠真は目で追うしかできなかった。

メティラが前に出てセレネスを構え、春やポピンは功が張った結界の後ろへ退避した。


「さぁ来い!私が相手だ!」


生物はメティの直前で方向を変え、功に向かっていく。

その速度にメティラの反応も遅れた。


「くそっ!素早い!」

「てか俺かよ…」


ガルゥ……


「え…やめろっ!なんだお前はっ!」

「何だ、どうなってるんだ?」

「ガルウゥゥ…ガルッ!ハッハッハッ」


現れたのは真っ黒な狼だった。

なぜか功に飛びつき顔をペロペロと舐め、尻尾を振っていた。

頭を擦り付けられている功は、手でその狼を押し除けようと必死になっているが、悠真達は呆気に取られていた。


「なんだ?知り合いか?」

「んなわけねぇだろ!ちょっとやめろ!」

「敵意はないみたいだな」

「功だけ犠牲になったのなら、問題ないにょ!」

「ポピンお前なっ!こいつを何とかしてくれ」

「よく見ると可愛い顔してるよ、この子」

「んー、狼っぽいけど、とりあえず狂犬病の注射しときましょうねぇ」


躊躇うことなく狼に近づくユズハは薬品鞄から取り出した注射器に、数種類の液体を混ぜて狼に突き刺した。


「ガルゥ!!!」


突然の痛みに驚いた狼は功の頭を丸かぶりする。

それを見て流石に悠真は功から狼を引き離した。


「で、こいつは何なんだ?」

「俺に聞いても知らん!」

「お腹空いてるにょ?功を食べても美味しくないにょ」


ポピンはポケットから干し肉を取り出し、狼の前に差し出すと喜んで食べ始めた。

それを眺めながら悠真は茂みの方を見つめる。


「この向こうに何かあるのか?」

「空からは何も見えなかったにょ」

「ねぇ、あたなはどこから来たの?私たちの味方なの?」

「ガルッ!」


春の問いかけに答えた狼は茂みの方へゆっくり進み、皆に着いてこいと言うように振り返る。

どうしたものか迷っている悠真達を見て、狼は再び功の元へやってきて袖を咥えて引っ張った。


「こっちへ来いってことじゃないか?」

「だからなんで俺なんだよ!」


狼を先頭に功が続き、その後ろを皆が着いていった。

茂みを掻き分け200mほど歩いた所で狼は止まった。


「ガルルッ」

「何だ?ここに何かあるのか?」

「こんな茂みの中に何があるにょ?」

「ちょっと春達は下がってくれ」


悠真とメティラは狼が歩みを止めた周りの茂みを刈り始めた。

そしてすぐにそれは見つかった。


「おい、これ!」

「祠か?!」

「何?何があったの?」

「待て、ちょっと待て!まだ春達は動くな!」

「この狼はここへ案内したというのか?」

「それしか考えれないんじゃないか?」

「ガルッ」


狼は功の袖を引っ張り、祠の前に誘導し、扉を開けろと言うかのように鼻先で背中を押した。

今までの経験上、扉を開ければ黒の神霊石があって霧が噴き出る可能性がある。

悠真とメティラは身構えて、いつでも功を保護できるように構えた。


「い、いくぞ!開けるぞ!」

「あぁ、やばくなったらすぐ引けよ!」

「わかってるよっ!」


功が覚悟を決めて扉に手をかけゆっくりと開いた。

いつもとは違い、霧ではなく眩しい光が漏れ出る。

その光は扉を自ら開ききり、功を包み込んだ。


「な、何だ?」

「功、随分と来るのが遅かったな」

「誰だっ!?」

「ははは、誰だとは失礼だぞ功。我は猿田彦。そなたの魂は我が産んだのだぞ」

「えっ、猿田彦様?」

「そうじゃ、それぐらいは知っておろうに」

「そ、それはもちろん存じ上げておりますが…」

「七人の中で我が一番最後ではないか、冷たいやつよの」

「いや、あの、すいません」

「ははは、冗談であるぞ」

「はぁ」

「しかしだ。いよいよ災いが大きくなり始めたの」

「猿田彦様、質問があります」

「なんだ?」

「この祠はどうして黒の神霊石が置かれていないのでしょうか?」

「それは簡単な事だ。茂みの中に隠れておったからだな」

「そんな理由ですか?!」

「ははは、冗談だ」


猿田彦神は導きの神として、皇国でも有名な神であった。

その猿田彦だという声と功は話をしていた。

しかし、神はこんなにも冗談を言うものか?と困惑していた。


「そなたらは祠の事を知らなすぎる」

「すいません」

「まぁ良い。もっと勉強するのじゃぞ」

「教えてくれないのですか?」

「自分たちで調べてこそ理解が深まるものだ」

「わかりました…」

「答え合わせはしてやろう。それまでしっかりな」

「はい」

「で、あの狼はそなたに仕えさせよう、そなたの眷属として大事にするが良い」

「あの狼ですか」

「何だ、不満か?」

「いえ、ありがたく」

「ではまたな」

「それだけですか!?」


□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日


ユズハの鞄にはいったい、どれだけ薬品が入っているのか。

簡単に狂犬病薬を調合していたが、そんなに簡単なものなのか。

しかし、あの狼はちょっと獣臭が強いな

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