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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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第五十話 泉の主

急旋回をするポピン。

皆は席から振り飛ばされた。


「だ、大丈夫にょ!?」

「なんだ・・・」 

「またくるにょ!」


泉の中から、動いていた物がアストレア号に飛んできた。

ポピンが言った目。

ギョロッとした黒い大きな目は輝きなく、こちらを見据えている。


巨大な生き物はまた突っ込んできた。

急旋回するも、翼の先に少し当たったせいで、アストレア号はクルクルと回転した。


「ぎゃーっ!また回転にょーっ!」

「と、ともかく一旦離れろポピン!」 

「やってみるにょ!」


ベルトを装着した皆は回転と一緒に中を回る事はなかったが、まだ油断はできないでいた。


「あれはなんにょ!すごい速さにょ!」 

「多分だけど・・・龍神?」 

「あぁ、間違いないだろいな」

「本で見た絵の生き物があれ・・・」 


『キャーッ!』 


アストレア号の真横をすごい速度で横切る為、風圧で機体がガタガタと揺れた。


「ポピン!なんとかしろっ!」

「うるさい功!お前がなんとかするにょ!」

「ポピン!なんとかして降りよう!」

「こうなったら絶賛開発中の武器の試し打ちにょっ!」

「なんだって?」

「悠真、ちょっと荷物室にある腕一本ぐらいの筒を取ってきてほしいにょ!」

「わかった!回転だけはしないでくれよっ!」

「頑張るにょ!二つあるから両方!」


悠真は揺れる機内をなんとか進んで言われた筒をもってきた。


カラーンッ!


揺れと共に一つをおとした悠真。


「にょーっ!大事にもつにょ!爆発するにょ!」


『えっ!?』


「そんな危ない物なら先に言えっ!」

「早く!右側の翼の下あたりにある扉を開いてそれを差し込むにょ!」

「わかった!」


言われた通り、筒をさ仕込み扉を閉めた。

筒はガコンッとなにかにはめられた。


「みんな!成功を祈るにょ!」


『祈るって・・・』


再び龍神が近づいて来る。

ポピンは直前でかわし、急旋回をまたする。

背後を取ったポピンはいつも頭につけているゴーグルを目につけた。


「照準よしっ!」

「なにがおこるんだ!?」

「ちょっと反動がくるかもにょ!しっかり捕まるにょ!」

「・・・・」

「いっけぇっ!ポピン爆弾一号(試作中)!」


ポピンは操縦台の朱の神霊石を押した。


ドカーンッ!!  


翼の下から、筒が発射される!

すごい勢いで真っ直ぐに放たれたそれはすぐに推力を失い落下し、森の中で大爆発をした。


「あははは・・・失敗にょ・・・」 

「失敗かよっ!」 


龍神は爆発をみて一瞬だけ怯んだが、また仕掛けてきた。

機体は左右に揺れる。

皆も左右に振られて席ごと飛び出してしまうかのようだ。


「ポピン怖いーっ!」

「もう、限界だ・・・」


春は悲鳴をあげ、メティラは酔ってきた。

功は半分諦めて、ユズハは鞄から酔い止め薬を出そうとしていた。


「悠真!もう一本を差し込むにょ!」 

「へぃへぃ」 

「さぁ!今度こそ成功するにょ!私の辞書に失敗と言う文字は3度しかないにょ!一つの研究につきにょ!」


(三度なら一本足らないじゃん・・・)


「ぶっとばすにょ!ポピン爆弾二号!(試作中)」


ドンッ!


一号とは違う音がした。

真っ直ぐに、飛び出した二号は火を吹き目標に向かって飛ぶ!

龍神の速度に軽々追いついた二号は、背中に当たり大爆発を起こした!


「成功にょっ〜っ!!」


龍神は泉にむかって落ちていく。

ポピンは着陸場所をも作っていた。

そう、一号が墜落し爆発した所だ。

その吹き飛んだ範囲をみて、皆が機内で爆発しなくて良かったと

安堵したのだった。


「結果良ければ!にょっ!」


着陸し、泉にむかう。

もはや清流とは呼ぶことも出来ない真っ黒な水の中に、撃墜した龍神は倒れていた。


「これはやばい展開だよな。」

「あぁ、まただな。」

「皆、下がるんだ!」


泉の真ん中には【祠】があった。

何度か経験した状況がそこにあった。


祠から黒い霧が出始め、龍神にまとわりつく。

悠真達は泉から離れて身構えた。


「泉には絶対落ちるなよ!」

「どうやって戦う?」

「何とかして陸に奴を誘きだしてだなっ!」

「無理だろ・・・」


穢人化する黒い水がある限り、その真ん中にいる龍神には切り込む事は出来なかった。


「とりあえず、術で仕掛ける!」

「わかった!」

「功、身体強化と結界を!ユズハは治療の準備を!」 

「はいよっ!」

「わかりました!」

「私はする事ないにょ。」

「・・・」 

「今日は突っ込むなよ!ポピン!」

「わかってるにょ!」


功は全員に身体強化と結界を張る。

悠真とメティラは天霞(あまかすみ)と銀針を抜いた。


第一撃はメティラの斬撃だった。

銀針に纏わせたレゾナス(残響)を飛ばすのだ。


ぐおぉー!


霧を吸収中で動かない龍神の前足に直撃し、切り落とした。


「案外いけるのか?」

「続けるぞ悠真!」

「あぁ、頼む!」


 ――神々の残響よ

   我らを滅ぼさんとする者を

   天より裁きたまへ


   神響術 【雷鳴】 ――



裁きの雷が龍神に落ちる

半身を起こしていた龍神は泉に崩れた。


「よしっ!」

「メティ!イグニス・ヴォルテクスを打てるかっ!?」

「あぁ、任せてくれ!」


――レゾナス・アーツ――


メティラが集中を始めた。

しかし、黒い霧の吸収が早まる。

龍神は尾で黒い水を悠真達目掛けてすくい投げた。


「避けろっ!」

「くそっ!」


集中をとかれ、回避する二人。

功の結界が飛沫を弾いてくれた。

黒い霧の吸収が終わり、龍神が立ち上がる。


「悪霊になってない?」

「黒い霧を吸収したんだろっ!?」 


今までの猪や、白蛇と同じく黒い霧を取り込んだはずの龍神は、空中戦をしていたままの姿で、前足もメティラの斬撃で切り落とされたままただった。


グゥゥ!!


浮かび上がった龍神は、鋭い爪で攻撃をしてきた。

キン キンッ!と受ける二人。

巨大な龍神の一撃が重くのしかかった。


「メティ!ふた手に別れよう!」

「わかった!」


悠真に攻撃が向いている間に、メティラは龍神の背後に回る。

そこから斬撃を繰り出した。

龍神に当たる直前に悠真は離れ、自分が斬撃をくらうのをさける。

メティラを見た龍神に、今度は悠真が切り込む。

背を向けている所へ天霞の一閃が入り、背鰭を数枚切り落とした。


グオォォー!


その繰り返しを数回した後、龍神は再び泉の中へ戻った、

そこへ追い討ちの【雷鳴】を打ち込む悠真。

雷は再度直撃し、龍神は崩れた。


「功!奴を縛ってくれ!メティ!唱えろっ!」


『ああっ!』


功の神響術【縛】が龍神を固定する。

メティラは再び集中し、レゾナスを纏う。


――神よ 我が剣に終焉の炎を宿したまえ

  【イグニス・ヴォルテクス】


炎の渦が龍神に真っ直ぐに突き進む。


ドウゥーンッ!


龍神を直撃した炎が燃え上がった。

体全体を真っ赤に燃やし、叫び声をあげている。


「クソっ!また霧が出て来やがった!」

「祠の中には黒い神霊石があることは間違いなさそうだな・・・。」

「あぁ・・・しかもこいつはまだ、悪霊にもなってないからな・・・。」


悠真は考える。

黒の神霊石をなんとかする方法・・・

泉の水は黒いまま、祠までは距離がある。

どうやって渡ればいい・・・


「春!巫女またなれないのか?何かできないのか!?」

「えっ・・・う、うん」


功に突然振られて焦った春は胸の小鏡を出そうと手を胸に当てる。

春の動きがとまった。


「鏡・・・置いて来ちゃった・・・。」

「なっ!」

「お前!それはダメだろう!」

「ご、ごめんなさいっ!」

「お前が俺たちを神と繋げる役目じゃないのかっ!?」

「ご・・・・ごめん・・・ごめんなさい・・・」

「功!それ以上言うんじゃないにょ!春もわざとじゃないにょ!」


頭を抱え、放心状態になりしゃがみ込む春・・・・。

ポピンとユズハが心配そうに声をかけていた。


「今回は春の力は無しだな、悠真。」

「仕方ない・・・メティ、ともかく祠を、黒の神霊―――」


グオォォアッー!!!


燃え盛る体のまま龍神はメティラ目掛けて突っ込んできた。

二人が春の方を向いていた一瞬の出来事だった。


「しまっ―――」


龍神はメティラに巻き付いた。

燃える体でメティラを焼き尽くそうと・・・


「アアアアアァァッ!!」

「メティッ!!!」


まだ結界が効いている。

致命傷にはならないが・・・持って数十秒・・・


「クソっ!」


悠真は龍神に切り込んだ。

甘霞を振り上げて・・・・。


龍神はメティラを離し、悠真に巻き移る。

メティラは大地に叩きつけられ、焦げた匂いが体から漂う・・・。


(こいつ・・・俺が狙いだったのか・・・!?)


龍神はそのまま空へ飛び上がり、泉めがけて落ちた。


黒い水の中・・・・龍神は悠真を離した。

もがく悠真。

何も抵抗はできなかった。


体の残響が吸い出されていくのがわかる・・・。

力が抜けてゆく。


(ははっ・・・こう言う時のために鍛錬しろって怒ってたのかな春は・・・)

(真面目にしてりゃ・・・切り抜けれたのかもな・・・・)


【神々の残響】が抜け始めた悠真に、黒い水がまとわり始める。


「ゆ、悠真・・・」

「おい!悠真!何とかしろ!くそっ!」


功は全ての護符を放り投げ、モテる全ての術を放つ!

しかし何も効果は得られない・・・・

残響を一気に放出して、功の口からも血が滲み出した・・・


「どうしたら良いんだよっ!あいつ・・・悠真が穢人になっちまうじゃねぇかよっ!!!」


ポピン達は恐怖に襲われていた・・・。

春は・・・ただ震えて、悠真の姿を見つめるだけだった。



「全員、早くさがれ。」


どうしようもない状況をただ見つめる皆の後ろから、突然聞こえた声。

濃い藍色の長髪に、中性的な美貌を持つ男がそこに立っていた。


「蒼真様・・・・?」


無言の蒼真は皆の間を抜けて前へ出る。

ポピンとユズハは慌ててメティを回収して下がった。


「蒼真様・・・なぜここに・・・」

「功、結界はまだ張れるか?」

「はい・・・あと一回だけなら。」

「すぐに張るのだ。」


「今回は陰からただ見ているわけには行かなそうだ。」

「・・・?」


目を閉じ、胸の前で朱印を刻んだ蒼真が呟いた。


「月詠様・・・我に力を。あなたのご加護をここにお借りします・・・・」


体が蒼白く光った。

それは満月の月の光だった。

長い髪を束ねた紐はちぎれ、重力が無くなったかのように乱れた。

両手を腰の高さに広げたのち、目を開いた悠真の瞳は青く、鋭く、悠真を見つめた。


「我が眷属よ、その翼で彼を救い出せ・・・・」


ガァ!ガァ!!ガァ!ガァ!!ガァガァガァ・・・・・


森のあちらこちらから黒い物体が飛んでくる。

足が三本のカラス達・・・八咫カラス・・・・

何羽、何百羽いるのかわからないカラス達が悠真目掛けて飛び込み黒い水から引き出した。


「我が眷属よ、其方達の輝きを彼に・・・・」


ガァァァァッ!!!


カラス達は悠真を囲み一つの大きな球になる。

球は光の球へと変わり、八咫のカラス達は光となり悠真に吸収された。


「さぁ龍神。次はお前だ。」


□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日


蒼真殿?

一体これは・・・・

月詠様?

加護・・・・?

あなたは一体・・・

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