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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
神々の隠し事編

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第四十九話 おめでとうございます。

罠にハマったとは知らず、大口を叩いた悠真。

自業自得の結末が待っていたのだ。


「悠真、春!婚約おめでとう。姫巫女としても、春の友人としてもお祝いするわ」

「陽菜様…ありがとうございます…」

「めでたいのぉ…早く秀馬と春の父にも知らせねばの!」

「アルスティアに戻ったら、向こうでも祝いをしようぞ!」

「春…私も嬉しいわ。お城でもっと振る舞いを練習しましょうね」

「皇王様に国王様!ありがとうございます!セイラ様!練習はちょっと…」


皆大笑いである。

悠真は一人取り残され、魂が抜けていた。


「あらあら、仲間になって間もないけどなんか素敵ねぇ」

「でも婚約したからと言って、悠真は鍛錬するかにょ?」

「それだポピン。悠真が鍛錬している所など見たことがない」


ハッと我に帰った悠真。

状況を見て何か言い訳をしなければと思う。


「ちょ、ちょっと待ってくださいね、サボっていればですよねぇ…」

「悠真、陽菜様はすごいんだよ!」

「え?」

「ふふふ、春。私というより八咫の鏡がすごいのよ」

「そうですか?まさか鏡に悠真が、春が四日もいない!と喜んでたり、ずっと寝てる姿が映るなんて」

「それに…私の隠密(おんみつ)達もすごいでしょ?」

「はいっ!ここまで逐一報告を下さるなんて!」


ぴらぴらぴらぴら……と、悠真の四日間の行動が記された紙が春の手から皆に見せられた。

一番端に座っていたポピンがその報告書を手にして記された内容を見た。


プッ!


吹き出しかけたポピンは笑いを堪えながら隣のメティラに回し、反対側のセイラまで回った。

全員するつもりもないが、擁護はできないと悟り少しずつ、少しずつ悠真から離れていった。


(◯日 十時起床 十時半朝食 十三時まで家内にて横になる 十六時ごろまでポピン殿達と雑談 十九時頃就寝)


このように四日間の悠真の行動が記されていた。


残念ながら、いや当然ながら…鍛錬などどこにも記載されていない。

セイラも笑いを堪えて悠真に報告書を渡す。


「最後の報告だけで十分でしたわね!」


詳しく書かれた四日間の報告、そして最後に隠密が書いていた言葉を読んで悠真は再び魂が抜けた。

もう、皆は笑い転げるように腹を押さえている。

陽菜もずっと袖で顔を隠し、笑っている。


(以上、全くを持って 鍛錬 に当たる事はせず、食べるか寝るか遊ぶかの四日間と報告する)

(ただ、寝ることが彼にとって鍛錬なのであれば判断はしがたい。)


「春、これからますます大変になりますが、姫巫女として立派に勤めを果たしなさい」

「はい!陽菜様!」



『おめでとうございます!』


【大樹の街】の瑞璃家に着くや否や、父である秀真を先頭に、家の者全員がそう言って迎えた。

春は悠真の腕にしっかりまとわりつきニコニコで、未だ魂は半分しか戻っていない悠真の反応は鈍い。

従者である春の父は大喜びで泣いていた。


「どうせこうなるんだから、もう諦めるにょ悠真」

「そうだぞ、いつまでも女性を待たすものではない!」

「ポピンとメティの言う通りよぉ、悠真」

「いやしかし、よくぞ三十歳になる前に決意した!これで瑞璃家もまずは安心だ」

「親方様…出来損ないの娘ですが、何卒よろしくお願いいたします…」

「何を言うか!春は悠真には勿体無いくらいよ!」

「親方様……」

「お前もこれからも執事長として頼んだぞ」

「はい、心してお使いさせて頂きます!」


向こうでは不思議な関係の父親達が喜びあっていた。

侍女達も婚約の儀の準備だなんだと大騒ぎになっていた。


「どうしてこうなった…?」


「春様!婚約の儀は皇都でするのですか?!」

「さぁ、どうだろう?」

「どうするのですか、執事長?」

「うーん、一般的な流れとしてはここで婚約の儀、大神宮で婚姻の儀だが、皇王様が張り切っておられるから……」

「すごいですね!春様と悠真様!皇王様が直々に婚約、婚姻の儀に関わられるなんて!」

「秋花言い過ぎだよぉ」

「うぅ…私も父親としてこれ以上ない幸せじゃ…」

「泣かないでくださいよ、執事長!」

「あはは、ありがとうねみんな……」


悠真は相変わらず魂が抜けていた。

メティラ達は悠真に諦めろ!シャキッとしろ!と言っているが。

その日の夜、春は悠真の部屋を訪れた。


「悠真。」

「はい?」

「疲れたね」

「それは春だろ?舞が良かったてのは嘘じゃない」

「ありがとう…」

「なんだよ、こんな時間に」

「あのね…」

「?」

「悠真が嫌なら私は大丈夫だから…」

「……」


春は部屋の入り口から動こうとはせず、それだけを伝えた。

悠真は何も答えれなかった。


「じゃあね、お休み」


次の日、朝から二人の距離はどこか遠く見えた。

心配するポピン達。

そこへ秀真がやってきて二人を呼ぶ。


「皇王様より伝言だ。婚約の儀は来月の満月の日に皇宮にて行い、そのまま大神宮にて婚姻の儀を取り計らっていただけるそうだ」

「…ありがとうございます、父上」

「……」


春は悠真を見た。


「どうした春?しかしやっとお前も実ったな」

「……あの、そのことなん――」


「親方様!!」


街の警備を行っている者が慌ててやって来た。

皆はびっくりしてその者を見た。


「どうした、騒がしい!何事だ?」

「も、申し訳ありません!ですが一大事です!」


顔をしかめる秀真。先ほどより、表情を変えない悠真。


「【清流の街】に悪霊が…」

「清流の街?なら瑞音(みずね)家が居るではないか。」

「それがかなり強力な悪霊らしく、その」

「なんだ?」

「悠真様達に…ヴォルテクス・レゾナに応援要請が来ました」


昨日の夜から不安しかなかった春が、悠真の顔をまたチラッと見た。

無表情のまま、秀真を見て頷いた。

秀真も頷く。


「みんな、行こう」

「ああ、わかった」

「アストレア号の準備してくるにょ!」

「皆さん!着替えないとぉ…」

「あ、功迎えにいくにょ?」


それぞれが準備に入り、悠真も部屋を出た。

春は一人取り残されている。

嬉しいはずなのに、心の中に残る痛み。

その痛みがなんなのか、わかっていた。


「どうした春?何かあっったのか?」

「いえ、私もいってきます」


【清流の街】は、皇都を挟んで、大樹の街の反対側にある、清らかな水が流れる川が無数にある街だ。

川では子供達が魚を取って遊び、大人達も足を冷たい水に浸けて暑さをしのいでいた。


瑞音家に着いた悠真達は当主【瑞音 奏人(みずね そうじ)】の元へ急いだ。


「これは瑞璃家の悠真様?」

「えぇ、奏人様に応援要請をうけて来ましたのでお取次を」

「はぁ、しばらくお待ちください。」 


白髪の従者は少し不思議そうな顔をしながら屋敷の中へ消えた。


「今のを見る限り、慌ててはなさそうだが。本当に悪霊が出たのか?」

「おかしいな…」


豊穣祭の警護や片付けが終わり、ようやくゆっくり寝れると思った矢先、突然現れた悠真達に引っ張ってこられた功が嫌味を言う。

間も無くして、奥からまだ若さの残る男がやって来た。


「悠真?…ヴォルテクス・レゾナの皆か?!」

「奏人様、かなり強力な悪霊がでて、我々に応援要請との事で参ったのですが」


奏人と先程の従者は確認し合っている。

従者は急いで屋敷に戻った。


「悠真、すまない。私が把握できていないようだ。悪霊がでたと?」

「はい、我が家の警備担当者がそのように」


ただの街の警備員がなぜ?

瑞璃の屋敷に入る事もない者がなぜ迷わず俺達の部屋へ?


再び従者が戻ってきて、奏人に何か伝えている。

それを聞いている奏人の顔は困惑していた。


「すまない悠真。こちらからそのような依頼は出しておらぬ」

「さようですか」

「今、警備長にも確認したが同じ答えのようだ」

「わかりました、何かの間違いか、悪戯か…」

「わざわざすまぬな」

「何を仰いますや―――」


「うわぁーっ!」

「なんだこれっ!」 

「早く子供達を川からあげろーっ!」

「キャーッ!」


皆声のする方を向く。

瑞音家の数十メートル先の川から、大人子供が走ってくる。

子供達は泣き、大人達の顔色はなかった。


「皆どうした!?」

「当主様!川が!」

「川が?」


悠真と功はすぐに川へ走った。

清らかな透き通る水がながれていた川は真っ黒になっていた。

うっすら黒い霧がのぼる。


「おい!これやばいんじゃねぇかっ!」


「奏人様!この川の水はどこからっ!?」

「あの山の奥、龍神の泉が水源だ!」


奏人もメティラ達も川に近く。

みな真っ黒な色に気味悪さを感じる。


「なんだぁ、この水!誰か悪さしたのかぁ?」


一人の男が川の向こうから水を手ですくった。

悠真が叫んだ。


「やめろ!触るな!」


しかし遅かった。

手にすくわれた黒い水は、まるで生きているかのように男の体にまとわりつく。


「な、なんだ!や、やめてくれ!」


男を包み込んだ黒い水がら蒸気が上がり、やがて全てが消えた後に現れたのは、【穢人】だった。


「やばいな…」

「悠真…これはどうなっている!?」

「奏人様、あれが穢人。人間が悪霊化したものとお思いください」

「穢人…悪霊化…助からないのか?」

「…後は安らかに送ってやるしかありません」

「なんと…」

「奏人様、龍神の泉から流れる川はこれだけですか?」

「いや、街全ての川だ…」

「奏人様、誰一人水に触らぬようにしてください」

「あぁ、わかった!」


奏人はすぐに従者に、警備員全員を街に。人は家から出ないように伝えよと指示をだした。


「あと、あの穢人はお任せします。悪霊のように退治すれば、浄化して天へむかいます」

「わ、わかった。悠真達は?」

「我々は、泉へ向かいます」


再び空へ上がった悠真達は、流れる川全てが真っ黒になっているのを確認した。


 ――これを見越して俺達を呼んだのか?一体誰が――


二つ山を超えた所に、大きな泉が姿を現した。

なにかが動いている。


「おいおい、なんかでっかいのがいるぞ…」

「あの時のはくより大きいな」

「シュッ!」

「おりる所がないにょ!」

「春ちゃん、大丈夫?今日はずっと喋ってないけど…」

「あ、うんユズハ。ありがとう、大丈夫」

「どこか苦しかったり、痛かったら言ってね、薬あるからね」

「うん……心が痛い……」

「えっ?どこが痛い?」

「ううん!なんでもない!大丈夫!」

「ならいいけど…」


ポピンは降りる場所を見つけるのに、旋回していた。

多少傾いていても大丈夫だが、広さがないのだった。


「困ったにょ、少し戻るか、先に行くにょ」

「しかたないな、そうしよう」

「あの動いてるのはなんだ?ちょっと近づけないのか?」

「また功は無茶いうにょ!」


少し高度を下げ、泉に近づいた時だった。


「目!目!」

「なんだ?」 

「目が合ったにょ!」 

「なにと?」 

「なにとって!捕まるにょ!来たにょ!」   



□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日


単純馬鹿は、まんまと罠にハマったな!

お姉様の演技もよかった!ははは

春も良かったよ、友として嬉しいのだが、

少し元気がないのが気になるな。

私も、レゾナスを分けてもらいにくいなるし・・・


あぁ、それから最後のポピンの叫び、またアストレア号

ぐるぐる回るのかな…


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