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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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第四十四話 薬屋ユズハ

「おっはよおぉ!!」

「皆おはよう!」


ポピンとメティラが朝からやってきた。

今日は特にする事がないのだが、ユズハの買い物に皆で行くらしい。

結局、謁見(褒賞式)の後には食事会が始まり、今日になったのだ。

そして女性が多い方が安心するだろうと、悠真が声をかけていたのだ。


「ポピン、あのレグナントはいつから使えるんだ?」

「もう完成してるにょ!でも色を塗り替えるのと、紋章を入れるのと、内装を変えるのと・・・・」

「紋章って昨日もらったあの紋章か?」

「そうにょ、部隊紋章と国家紋章が記されるにょ。」

「なんか、あれで飛んでたら俺たちってバレバレだな。」

「安心するにょ!隠蔽術印も追加したにょ!」

「おお!なんでもありなやつ!」

「よくこんな短期間で仕上げたね!すごいね!」

「そうだにょ?私天才にょ!?」


『うん!変態にょ!』


「にょ〜!みんな声揃えて何にょ!真似するな!」


朝から楽しい1日になりそうだと悠真は笑った。

春特製の皇国朝ごはんを皆で食べてから街へ出かける。

まずは家具かららしい。


「どんなのにするのだ?」

「ええと、色はオリーブ色がいいかな。木目が綺麗で引き出しがいっぱいあるのが壁一面分と」

「そんなに何を入れるんだよ?」

「薬草だよ」

「さすが薬学者!」

「調合台と調合窯と昆虫箱と整理棚と机と・・・えーっと」

「昆虫箱!!」

「もはや研究室じゃねーか・・・」

「ユズハ、こ、昆虫箱というのは・・・」

「メティあれだよ、メアナで見たでしょ?」


思い出したメティはまた顔が真っ青になる・・・

ユズハから少し距離を置いて春の後ろに隠れた。


「メティ、なんで珍しく悠真に飛び付かずに私なの?」

「そ、それはだな・・・。対昆虫とかは春の方が(たくま)ましい気がしてだな・・・」

「何よそれ!」

「ま、間違っちゃいないけどな。」


春にまたまた(つね)られながら商店街を歩く皆。

久々にゆっくり歩いていると、女子四人があれやこれやと目移りが始まり、前へ中々進まない。

悠真と功は今日は仕方ないと出る前から諦めていた。


「でもないね、思ってるような棚とか。」

「注文で作ってもらうしかないのでは?」

「うーん、そうだよね、業務用になっちゃうよね」

「とりあえず、薬草のことは忘れて普段用を見ようよ!」

「そうだね、そうする。」


その後、ユズハ好みの寝具や書斎机、衣装戸棚や炊事道具を買い集めた。

もちろん、家具は運んでもらうが、それ以外を持つのは男二人の仕事だ。


「服とか買わなくていいの?」

「そうね、下着とかも見たいし。」

「そうだな!」

「私もついでに見るにょ!」

「という事で、悠真達はそこらで休んでてくださーいっ!」


『はいはい・・・』


「なんで女子の買い物はあんなに長いんだ!?」

「まぁそう言うなよ、あいつらが楽しんでる時ほど平和だって事だ。」

「悠真の場合は春が機嫌がいい時こそ平和だ!だろ?」

「・・・・まあな。」

「んで、皇国にはいつ戻る?」

「そうだな、どうせなら新しいレグナントで行きたいな。」

「それは俺も賛成だが、もし今何か起こっても護符ないからな。」

「そんときゃ俺の護符渡すよ、【守護士】功様。」

「なんだよ、その呼び方は!?」

「なんか・・・お前にあってるだろ?」

「なんか大袈裟で嫌だわ。」

「ははは、そうか?いいと思ったんだけどなぁ。」

「んで、お前護符後何枚あんの?」

「ん?二枚。」

「全然ねぇじゃねーかっ!」


二時間ほどして女性陣が戻ってきた。

手には大量の紙袋を持ってある。


「そんなに服っているものか?」

「もうね、ちょっとはお洒落になりなさいよ!せっかくこっちにいるんだから!」

「そうにょ!いつまでもその皇国服はやめるにょ!」

「悠真と功のも選んできてやったぞ!」

「お、ありがとう。ちゃんとしたのか?」

「何よ、ちゃんとしたのって?」

「いや・・・別に。」

「じゃ、ラテ飲んで帰るにょ!」


家の前の道路に出た時・・・・それは待っていた。

数人の騎士と真っ白い馬をつなげた馬車。

皇族専用車・・・・

そう、セイラ姫が待ち構えていた。


「待ったわよ、あなた達!」

「お姉様?」

「セイラ様・・・・あまりその格好でここに来るのは・・・・」

「そうにょ、セイラ様。色々怪しまれるにょ!」

「あら・・・確かにそうね・・・・」

「では私も後で街人の普段着を買いに行くわ。もちろんついてきてくれるわよね?」


すごい圧で六人に詰め寄るセイラ。

誰も嫌だとは言えない・・・。


「それで今日は何をしにわざわざきてくださったんですか?」

「悠真、今日はユズハに用があるのよ。」

「私ですか・・・?」

「とりあえず、中に入りましょう。」


歩き出した、セイラは護衛を伴い悠真達の家の逆へ進む。

皆、首を傾げてセイラを見つめる。


「お姉様、どちらへ?」

「どちらって、こちらよ。」


悠真達の家の向かいの3階建ての建物。それは前に悠真が雑貨屋でもしようかと言っていた建物だった。

言われるがまま、そのなかに入る。

いつものことながら、すでに何かの工事が始まっていた。


「この辺り一体はすでに国が抑えていると言ったかしら?」

「それは誰だっけ、ポピンからだっけ?聞きました。」

「なら話は早いわ。地下の極秘トンネルが通る場所の上にある建物はほぼ国が買い終わったわ。」

「はぁ・・・。」

「この建物もその内の一つ。」

「この下にレグナントが通るんだ!」

「そうよ春。トンネルもほぼ完成したわ。もう、城や国家特別技師団の所へは既に地下で移動可能よ。」

「恐るべし・・・・・アルスティアの工事力・・・」

「功、それは我が国の自慢なのよ!」

「それでお姉様、この建物は?」

「そうそう、ユズハは傷薬も開発した優秀な薬学者なのでしょ?」

「えぇ、偶然ではありますが、開発したのは私です。」

「そんな人材を普段から遊ばすわけには行きませんことよっ!」


セイラはコツコツとヒールを鳴らし、部屋の隅に置かれた木材にかけられていた布をとった。

そこには看板のようなものがあり、文字が書かれていた。


(ユズハ薬局)


『薬局!?』


「そうです。ユズハ!あなたはここ【ユズハ薬局】で薬剤師として研究も続けなさい。」

「・・・よろしいのですか?」

「もちろんです。戦うことばかりがヴォルテクス・レゾナではありませんからね!」


ユズハの顔がみるみる明るくなっていった。

彼女もやはり、ポピンと同じく研究が大好きな変態なのだ。


「上の階は研究室にしたらいいわ。大工に好きなように作ってもらいなさい。」

「ありがとうございます!」

「しかもっ!」


『しかもっ??』


「広くはないけど、屋上は土を入れて薬草を育てれるようにしといたわ。」

「セイラ様!」


ユズハは涙を流して喜んだ。

出会ってまだ数週間だが、こんなに笑顔のユズハは初めてだった。

皆はそのまま地下へ降りた。

そこには以前、悠真達の家の地下に出来ていた【駅】がつながっていた。


「ね、地上を通らなくても出勤できましてよ」

「すごい・・・・」


皆はそのまま地下から家へ向かった。

この地下の駅も、まもなく稼働する。

ポピンの地下用レグナントの設計も終わり、製造に入っているらしい。

ヴォルテクス・レゾナ専用機に回したのは地下用一号機で、ポピンが王様に頼み込んで改修をしたのだった。


「地下レグナントの運行開始は少々遅れましたけども、おかげでまたポピンが高速移動のできるレグナントを開発したのだから、結果的に良かったのですわ。」

「ありがとうにょ、セイラ様。いつも無理ばっかり言って。」


セイラは微笑みポピンの頭を撫でた。

相変わらずのセイラの行動力と包容力には皆感心するばかりだった。


「さぁ、ユズハ。あと必要なものを教えてちょうだい。三日以内に用意して差し上げますわ。」


『すごいわこの人・・・・』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ポピン、レグナントの名前はなんて言うんだ?」

「にょ・・・決めてなかったにょ!何かいい名前あるにょ?」

「それは設計者のポピンが決めなきゃダメでしょ!」

「うーん、名前つけるの苦手にょ・・・」

「なんせ【はく】だもんな!」

「うっさい功!悠真だって【コン】にょ!」

「そういえば、ユズハの兎の名前は?」

「そうね、名前つけてあげなきゃ。えーっと・・・」


ユズハは兎を抱き抱え、顔を近づけ見つめる。

兎はペロッとユズハをなめ、嬉しそうにしている。

コンやはく、ウルも集まってきた。


「うん!そうだね、君は今から【セス】!セスだよ!」

「おお、まともにょ・・・」

「よろしくお願いします、セスッ!」


キュルルゥッ!


「よし!私も決めたにょ、あのレグナントの名前は・・・・」

「名前は・・・?」

「・・・・・」

「ヴォルテクス・レゾナだからヴォルちゃんにょ!」


『却下。』


「みんなして酷いにょ〜!」

「だってなんかダサい・・・」

「春!ダサいとか言うにょ!?」

「どうせなら【アストレア】号とか【アーク】号とかはどうだ?・・・」


皆メティラを驚いた顔で見つめる。

春と功は口があんぐりと開いていた。


「アストレア号ってメティにしてはかっこいい!」

「おお、メティが考えたにしてはかっこいいな。」

「いいと思う」

「メティ・・・お前名付けだけは上手いな。」

「それで行くにょ!」


なぜか素直に喜べないメティラは苦笑いだった。

ユズハとメティラは荷物を置いて薬局へ戻り、大工と話を進めに向かった。


「アストレア号が完成したら、皇国へ戻っていいか?」

「いいにょ!神巫海をちゃんと越えれると証明するにょ!」

「安全なんだよな・・・?」

「大丈夫!功は死んでも皆は必ず連れて行くにょ!」

「どう言うことだよっ!俺が死ぬんなら皆同じじゃねぇか!」

「機体を少しでも軽くするために功から海に捨てるにょ!」

「皆道連れだよっ!」

「まぁまぁ、あとどれぐらいかかりそうなんだ?」

「うーん、多分四日ぐらいでなんとかなるにょ。」

「再設計を一週間で終わらせて、ペンキの塗り替えとかに四日かかるって・・・本当に天才だな。」

「ふふんっ!私の頭脳は神をも凌ぐ!」

「それは言い過ぎだ。」

「うん、言いすぎたにょ。」

「じゃ、四日後を予定として皇国へでいいな。」

「了解にょ、私それまでに地下用レグナントの製造勧めてくるにょ!」

「わかった。」


三日間、ユズハは薬局の建物に入り浸りでほとんど顔を見ていない。

春もユズハの手伝いに周り、珍しく悠真はほったらかされていた。


「セイラ様の予定通り、今日で完成するのか?薬局は・・・。」

「お前、普段からやかましい春にほったらかしにされすぎて、寂しくなってんだろ。」

「なっ・・・そんなことはない!」

「はっはっは、顔に書いてるわっ!」

「え?本当に?」

「・・・・ダメだこりゃ」


バンッ!!


「悠真!功!できたよ薬局!」



□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日

 お姉様の有言実行はすごい。

本当に三日で薬局が完成した。

設備も全て揃えたらしい。

一体どうやってこんな短期間で仕上げることができるのか。

毎回思う・・・・。

本物の研究者が経営する薬局か・・・

国民は喜んでくれるかな・・・

でも・・・国民は傷薬が昆虫から出来てるって

知ってるのかな・・・


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