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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
瑞穂皇国

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4/17

第三話 騒がしい一日

華やかな街並みに(ただよ)う美味しそうな匂い。

悠真と春は皇都で祭りを楽しんでいた。


「わぁ!この髪留(かみど)め可愛い!」


桃色の花びらを型どった髪留めを手に、春は今日も目が輝いている。


「いぃなぁ欲しいなぁ・・・でもお小遣(こづか)いがないなぁ。」


そう言いながら春は悠真(ゆうま)を上目遣いで見る。

悠真はため息をつく。


「わかったよ、買えばよろしいんでしょ」

「やったぁ!ありがとう悠真様!」

「まったく、なんて侍女だよ」


そう呟くも悠真はそんな遠慮をしない春が嫌いではなかった。


「そういえば蒼真様はいつ来られるんです?」

「あぁ、昼までには来るだろ」

皇王(こうおう)様に会いに行くんですよね?」

「毎年、この祭りの日に上級神響術継承三家が集まる事になってるからな」

「他には誰がいるんです?」

「隣の【静海(じょうかい)の街】を治めている瑞石家(みずしけ)と北側の【寒脈(かんみゃく)の街】を治めてる瑞鷹家(みずたかけ)だな。」

「じゃあ(こう)様も来るんだ。」

「そうだ。功とも半年ぶりだな」

「真面目ですよね、功様。誰かとちがって」

「ほぅ、誰かとは俺のことか?」

「さぁ。いつもサボってばかりで、侍女達を困らせる方の事です」


悠真は今日もからかわれているのであった。


「あっ!もけもけ鳥の丸焼き見つけた!」


嫌味を言われれば逃げる。それが悠真である。


「もけもけ鳥って…気持ち悪っ!」



◇◇◇◇◇◇



皇都の北に位置する皇宮(こうきゅう)前が蒼真(そうま)との待ち合わせ場所となっていた。


白い石造りの外壁。

何万人も集まれるであろう広大な広場。

巨大な鳥居。

神々の像。

漆黒(しっこく)に金色で術印(じゅついん)が書かれた重厚(じゅうこう)(かわら)

初めて訪れた者なら言葉を失うだろう。


「悠真ぁ〜」


なんとも情けない声が聞こえた。

悠真の兄にして上級神響術の継承家【瑞璃】の長男、蒼真が両手を大きく振りながらやってくる。

ちなみに弟大好きである。


「蒼真様、お疲れ様です!」

「やぁ!春もお疲れ様〜。いいなぁ、春はずっと悠真と一緒で・・・(くや)しい!」 

「何を言ってるんですか。悠真様が産まれた時から蒼真様は一緒じゃないてすか!私なんてつい五年前からですよ!」

「あ、そうか。そうだよねぇ〜。(うらや)ましい?」

「はいっ!羨ましいですっ!」

「悠真がさぁ、三歳ぐらいの時にねぇ」

「ふんふん」

「大事なおもちゃ無くしたって泣いてさぁ」

「ふんふん」

「兄さまぁ〜ってさぁ……」

「可愛いぃ!それから…..」

「ぐふっ!ぐふふふふ」

「えへ!えへへへ」


もけもけ鳥より気持ち悪い二人がここにいた。

しかも春・・・お前は幼馴染だ。五年前とは侍女になった年で、五歳頃からほぼ毎日一緒にいるよな・・・。


「いい加減にしてください、早く行きますよ!兄様!」


ハッと我に返った二人がサーっと悠真のもとにやって来る。


「ではお二人共、行ってらっしゃいまし。私は従者室でお待ちしております」


皇宮の最上階にある皇王の間で、まずは謁見(えっけん)だ。

すでに悠真達の父親である瑞璃家 現当主であり上級神響術の継承者【瑞璃 秀真(みずり しゅうま)】の姿もある。


「二人共、皆さんがお待ちかねだ早くしろ」

「皆様、ご無沙汰(ぶさた)いたしております。」


蒼真が挨拶をしたのと同じく、悠真も頭を下げる。


「おぉ!一年会わないだけで、これまた立派になられて!」


皆遠い親戚(しんせき)のようなものだ。よくあるやり取りがしばらく続いた。

三十分程たった時、皇王の側近(そっきん)皇護衆筆頭(こうごしゅうひっとう)】が玉座(ぎょくざ)の端でシャランっと鈴をならす。


「皇王様、お出になられまする」


皆、決まった位置に並び四十五度の礼をする。次の鈴が鳴るまで決して動いてはならない。


「シャラン」


皆が礼を辞め、皇王を見つめる。


「皆、よく来てくれた。」


謁見は三家それぞれが近況報告を行い、速やかに終了した。


「さぁ宴じゃ、堅苦しいのは終わりじゃ。なっ!悠真ちゃん!」


あ、忘れていた。皇王も変わった人だった・・・


宴が始まり、ここからは侍女や執事達(しつじたち)も加わり楽しい時間だ。悠真は酒を持ち一人の男に近寄る。


「功!」

「悠真!半年ぶりか?!」

「あぁ、半年前にお前の街の酒屋で呑んだっきりだ」


瑞石(みずし) (こう)】真面目で頑固な悠真の幼馴染で悪友である。文句を言いながらも頼まれたら受けてしまう気の優しさも持ち合わせた奴である。


「所で悠真、秋花(しゅうか)ちゃんは元気か?」


なぜか小声で目を逸らしながら尋ねてくる。秋花と言うのは、春と同じ瑞璃家の侍女の事だ。

話は簡単、悠真の所へ遊びに来ていた功が、侍女として働きだしてまもない秋花の頑張っている姿に一目惚れしたのである。


「元気にしてるよ。俺より春に聞けば?あいつの方が詳しいぞ?」

「バカ!春に知られたら、顔合わすたびにからかわれるじゃないか!」

「そ、そうか・・・バレなきゃ良いけど」

「元気にしているなら良いんだ。なかなかそっちに行く暇がなくてさ」


そう言って照れている功の真後ろに、春が悪魔の笑顔で立っていた。


(功、ご愁傷様(しゅうしょうさま)。)


心中で呟いて酒を注いだ。

少し飲み過ぎ、功と月見台(つきみだい)に出て涼んでいると蒼真もやってきて功に絡み始めた。(※月見台=ベランダ)

春はまだニヤニヤしながら肉を頬張っている。騒がしい二人を横目に悠真は空を見上げた。


「今日は騒がしい一日だったけど…綺麗な月だな…」


一瞬風が強く通りすぎた。

騒いでいた蒼真が突然黙って同じく月を見た。


「明日かな…」

「兄様、何が明日?」

「わかんない」

「・・・・」


本当にわからないらしい。

だが蒼真の言葉は、外れたことがない。

悠真は再び月を見た。

明日。

いったい何が起こるのだろうか。


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