表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/58

第三十六話 それぞれの役目

次の日の朝、皆は大礼堂へ向かった。

そこにはサイカスがすでに講壇(こうだん)の前に立っていた。


「よく眠れましたかな?」

「おかげさまで、興奮が冷めず一睡もできておりません」


可笑しそうに顔を柔らかくしたサイカスが悠真(ゆうま)を見つめる。


「あなた方の運命は伝えました」

「大神官様、私はまだ神に会えていないと思うのですが?」


功が尋ねた。


「まだまだこれからですよ、守りと道標(みちしるべ)の子よ」

「守りと道標?」

「もう役割は産まれた時から始まり、(つと)めているのです」

「はぁ」

「神はあの分断された日より、人の世に実態で現れる事はできません―――」

「だから声のみだと…」

「ラティス様。いずれまた声が届きましょう」


サイカスは胸に手の平を当てる仕草をして春を見た。


「巫女よ、あなたの役目は【神を導く者】です」

「巫女…神を導く?」


突然の想像もつかない大きな話に春は戸惑う。

だが、ある一人の人物が浮かんだ。


「そ、それは姫巫女(ひめみこ)様の役割では?」

「其方もまた、姫巫女だからです」


全員が春を驚きの表情で見る。

春は胸の小鏡を握りしめた。


「その小鏡はその証です。ただし、陽菜殿とは少し役割が違う」

「それは?」

「陽菜殿は幾万人の姫巫女。其方は神の子だけの姫巫女なのです」

「えっと…」

「まだわからなくても大丈夫、自ずと理解する時がきますゆえ」

「陽菜様が言った本来これを持つのはあなたってのはこう言う事だったんだな」


悠真は春の頭をポンポンと叩く。

だが春は一点を見つめたままだった。


「私が…姫巫女―――」

「姫巫女とは神の声を聞く者。神を呼ぶ者。神と子を繋ぐ者。あなたがいなければ何も始まらないのです」

「そんな…私なんかがそんな重要な…」

「大丈夫にょ!春ならできるにょ!」

「そうだぞ春!私もついている!皆を導いてくれ!」


「そして架け橋の子よ。其方はまだまだすべき事が沢山ある」


ポピンを見ながらサイカスがメティラの胸の石を指す。

月の欠片を意味する黄水晶(きすいしょう)である。


「それが何かわかるかな?」

「シトリン…」

「其方は便利な力を授かったであろう。白蛇よ」


サイカスに言われてはくがポピンの右目を優しく(こす)る。

ジ・ジジッ 術印が浮かび瞳に吸い込まれる。

ポピンは慌てて左目を手で隠し、黄水晶を見つめる。


「これは!」


月色の膨大な揺らぎがその石を覆っていた。


神霊石(レゾナイト)!?」

「もう最後の透黄の神霊石とうおうしんれいせきですな。セレノス様よりの贈り物です」

「す、すごい…」

「其方はこれをどうやって作り出すのか。それ以外の神霊石をいつ見つけられるのか」

「やはり、まだ神霊石はあるのですね」


それ以上言わなかったサイカスは悠真を見た。

なぜか困った顔をしている。


「最後に……………」

「あの…何か問題でも?」


悠真はたまらず質問した。

サイカスは首を振りため息をついた。


「いつまでもサボってないで早く高みへ向かいなさい」

「え……」


突然怒られている悠真にみんな驚いたが、すぐに笑いに変わった。

皆、当然だと言わんばかりに悠真を覗き込んだ。


「其方は太陽の炎の子なのですよ。最高神であらせられる天照様の!」

「いや…あの…知らなかったと言いますか」

「それは皆同じ事。其方はいつも夢を追ってはいたが鍛錬というものをサボり―――」

「いや、大神官様?私にも皆のようにこう、頑張れみたいな…」

「そうじゃの…鍛錬を頑張りなさい!」

「……はい」


春は大笑いしている。

メティラもポピンもは必死で堪えようとしている。


「ほーら怒られた!ずーっと前からサボってばっかりって言ってあげてたのに!あははは」

「クックック、こんな重大な話の流れで笑かさないでくれ…」

「だ、ダメにょ…我慢できないにょ…」


功は何も言わず、ただただ頷いていた。

悠真は何も言い返すことができず、魂が抜かれたように真っ白だった。


ゴホンッ


「脱線しましたが、分かりましたね?太陽の子よ」

「精進いたします…」

「巫女よ、しっかり見張るのですぞ」

「お任せください!」

「では最後に」


大礼堂の空気が変わった。


「この地に。黒い石が置かれています」

「!」

「メアナの北東に位置する薬草畑の終わりから続く森の中に忘れらた祠があります」

「そ、そこに黒い石があるにょ!?」

「もう、お気づきかと思いますが」

「災いとはその石の事…」


メティラがそう言った。

皆も同じ事を考えていたようだ。

真剣な表情でその言葉に頷いた。


「災いは黒い石……黒の神霊石。あれこそが穢人や悪霊を生み出す元凶―――」


今までの点が繋がってきた。

世には穢人や悪霊が増え強力化し、黒の石があちらこちらに現れ、生きた人を穢人に変える。

その時代に神の子が産まれ対峙できる力を身につけ出した。

神々の声が、それに通ずる者が、向こうから関わってくる。


「災いの黒幕は一体…」


サイカスがパンっと掌をあわせた。


「さぁ、旅人よ。歩みを進めなさい」


サイカスはそう言うとセレノス像の前に進み見上げた。


「セレノス様…私のお役目は終了でよろしいでしょうか?」


強い光が大礼堂に放たれた。


光が収まり、皆が辺りを見渡した。


「……あれ?」

「もう行っちゃったのかな、大神官様」

「さぁな、また怒られる前に逃げないとな!」


ピィィ


白梟が鳴き見つめるセレノス像の肩には、もう一羽の白梟がいた。


ピピィィィイ


その白梟は何かを鳴き残して飛び去っていった。

その鳴き声がわかる者が一人。


「サイカス様、しかと承りました」


◇◇◇◇◇◇


静まり返ったセレノス大神殿を後にし、皆は一旦宿に行く事にした。 


「ちょっと内容が濃すぎだろ!」

「確かに、今回はおどろきっぱなしだ」

「しかし皆神の子にょ!魂は兄妹みたいなものにょ!」

「兄妹……」 


メティラが慌ててポピンの口を塞ぐ。

なにか違う話題をと焦る悠真。


「そ、そうだ!普段からこの戦闘服は目立ち過ぎたと思うんだが」

「そうにょ、確かに目立つにょ」

「えぇえ、私の服戦闘服ぽくなくて可愛いから好きなのに」

「そうか?」

「なぁに?悠真ひょっとしてこの服装の私が可愛い過ぎて―――でも兄妹だからそんな事関係ないか―――」


メティラも功も悠真に何か言えと仕草で伝える。

悠真は覚悟を決めた。


「そ、そうなんだ。実はその服を着ている春が…可愛い過ぎて見惚れてしまうんだ…」


メティラと功はよく言った!と仕草で答える。

春の顔はすぐに真っ赤になり、照れ始めた。 


「やだ悠真ったら、皆の前で…」

「いや春、悠真はメイド服の春の方がいいと言ってたにょ」

「…」 

「おまっ!ポピン!」

「にょ?」


メティラと功はすごい形相でポピンを見つめた。


「功。ちょっとポピンを黙らすのだ」

「あぁ、同意だ」

「な、なにをする気にょ!」

「うるさいこのクソガキ!」

「しばらく大人しくしてるのだ!!」

「や、やめるにょ!」


功は神響術【縛】を少し使ってポピンを縛り、メティラはポピンの腰にぶら下がる万能工具を取り出した。

それを使ってポピンの口を大きく開いた。


「ねぇ悠真。さっきのは何?」

「と、申しますと…」

「この服じゃなくてメイド服がいいの?」

「いえ!どちらも最高に可愛いと思いますっ!」

「そ?ありがとう」

「いえ!」 

「所で、私は巫女。私が居ないと始まらないとサイカスさんは言ってたわよね?」

「はい!」


悠真は春の前で直立不動になり、二人はそれを見守り、ポピンはそこに転がされていた。


「ある意味、私が指揮官みたいなものでいいかしら?」

「は、はいっ!」

「そお…」

「じゃ、皆。鍛錬の為に宿まで全速力で走って行きましょうか」

「…いゃ、宿まで結構な距離がございまして」

「それがなにか?」

「いえっ!問題ありません!」

「よろしい。あぁ、悠真は私を抱いて走りなさい。私疲れてるし」

「はぃっ!」

「メティ、功。返事」

「はいっ!」

「あぁ、ポピンはそのまま這ってきなさーぃ」 


『鬼じゃないのか?本当に巫女なのか?』


「今、全員から不満を感じたわ」

「ひいぃ!」

「あ、あの春殿」

「なにかしらメティ?」

「大神官様は悠真がサボってばかりと怒ってたのでは…」

「あぁ!そうだったわね!」

「私と功はこの馬鹿女を引っ張って行くので、春は悠真を(しご)いたらどうだろうか!」

「あら、いい考えよメティ!そうしましょう」

「メティ…お前裏切ったな」

「さ、さぁなんの事だ?」 

「悠真!」

「はいっ!」

「では、おんぶしなさい」

「はいっ!」

「よーい!ドンッ!」


悠真は走り出す。春はぎゅっと抱きつき笑っていた。

それをみて安心したメティラと功は転がるポピンを見下ろす。

ポピンは恐怖を覚え、泣きながら顔を振る。

万能工具のせいで声は出せない。


「おまえはいつもいつも余計な事ばっかり言いやがって!」

「そうだ!空気を読め!この変態研究者!」


ポコッ! ペロッ! チチチチッ!


ポピンはメティラに指示をうけた、コンと白梟(しろふくろう)に痛ぶられていた。

自分の神獣であるはくにまで、頭をつつかれて。

ポピンは笑っていた。


「こいつ、反省してないそ!」


数日後、セレノス大神殿の最高位にあたる大神官サイカスが失踪したと大事(おおごと)になるが、だれも真相はわからない。

ラティス以外は……


□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日

色々謎がとけ、秘密ができ、戦うべき相手が薄ら見えてきた。

私達が神の子。セレノス様の子…信じられない。

でも頂いた加護の紋章は暖かく力強い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ