第三十三話 準備
「おはよう悠真。」
「おはよう春、今日は春も行くよな?」
「行く?悠真と?何しに?」
「え、王様に防具揃えてもらいに。」
「なんで?」
「王様に春の分もって言ったから。」
「そうなんだ。」
「要らなかったか?」
「それって・・・この間の廃坑みたいな所にも、私がついて行っても良いってこと?」
「本当は来てほしくないさ。でもお前の事だから、無理矢理にでも来ようとするだろ?」
「悠真でも私の事わかってる所あるんだ!」
ムスッとする悠真。
ドカッと椅子に座り、パンを食べ出す。
「わかってる事ならもっとあるさ…」
「へぇ!言ってみて!」
「身長155cm、体重52kg、うるさい、作る飯は全部美味い、怖い、良い匂いがする、拗ねる、! 」
「へぇ・・・よくわかってるねぇ」
「だろ!」
「ねぇ、なんで身長体重知ってるの?」
「あっ…」
「時間ないから、今晩ちゃんと教えてねぇ…」
◇◇◇◇◇◇
「悠真、防具屋に行くと言ったら(絶対だめ!)と言われてしまっての…」
国王に会うなり困った顔でそう言われる。
(いや、そりゃそうでしょ。)
「だから、防具屋に来てもらった! 我軍の防具一式を依頼している『アルガル重工 兵装開発部』じゃ」
「あ、ありがとうごさいます。」
「どうせなら、ラティスも見直してもかまわぬぞ!」
「本当ですかお父様!ありがとうございます!」
一気にご機嫌になったラティス。
ドレス姿のラティス姫は裾をまくって早足でこちらへ向かってくる。それを見ていたセイラ様は頭をかかえた。
「悠真!この際皆で共通の意匠でつくらないか!?」
「あぁ、いいぜっ!」
「春もポピンもシーカー登録して!シーカーズ名も決めよう!」
「あぁ!そう言うの、俺も好きだしな。」
「なんかワクワクするにょ!」
「お父様!」
「なんじゃ、ラティスよ」
「できればこの頂いた名に相応しい、武器も揃えたいのですが・・・」
「はっはっは そう言うと思っとっわ。好きにするが良い」
「ありがとうございます!」
「ただし!」
皆が国王に視線を向ける。
「其方らはアルスティアと瑞穂の『共同特殊部隊』じゃぞ。」
「特殊部隊?ですか?」
「悠真よ、其方達には今後も共和国、皇国どちらの問題にもさらに巻き込まれて行くであろう。どうせなら、国所属の部隊としておけば、色々便利じゃからなっ!」
「できれば巻き込まれたくは無いのですが・・・承知しました。」
その言葉に合わせて、悠真は片膝をつく敬礼の姿をとる。皆もそれに続いた。
国王は笑顔で頷いた後、立ち上がり宣言した。
――アルスティア国王として命ずる
悠真・功・ラティス・ポピン・春
以上の五名を2国共同特殊部隊に
任命する。 ――――
「部隊名はそうじゃのぉ・・・神々が残した遺産を最大限につかう者達じゃし。」
皆は国王の言葉を待つ。
そして国王は白く長い立派な髭をさすっていた手をとめニャッと
笑って悠真達を見た。
「其方たちの名は
『ディヴァイン・レゾナ』
神々の残響を使い神々に愛される者達よ
その名を世に響かせよ―――
悠真は思わず春を見る。
春は驚いた顔をして笑った。
ラティスは胸を張り、
ポピンは飛び跳ね、
功はため息をつきながらも口元だけ笑っていた。
「いいじゃねーか」
「えっと、私もその中にはいるの?」
「当然だの事だ。」
「頑張るにょ!」
「また巻き込みやがって・・・いいけどよっ」
その場にいた者達全員が拍手を送る。
新たな物語の始まりを見るかの様に。
「悠真達よ、かっこよく言って見たが普段は今まで通りでよいからの。」
「それでよろしいのですか?」
「かまわん。其方達は、こっちから頼まんでも勝手に巻き込まれて処理してしまうからの!」
「返す言葉もございません・・・」
(あ、皇王の豊正ちゃんに相談してないけど・・・ま、よいか)
◇◇◇◇◇◇
今までにない特別装備を作り上げると、アルガル重工の偉い人達が張り切ってしまい、今日は採寸だけになった。
家に着いた五人は、共有の居間でくつろぐ。
夕食も、カルラが用意してくれていた。
「防具出来上がるまで動きがないなら、俺は一回皇国にかえるわ。」
「珍しいな!功が帰るって言うなんて」
「いや、ちょっと野暮用がなぁ」
「秋花は駄目ですよ!もう結婚決まったんだから」
「嫌な事思いださすな!」
「私は騎士団をやめてくる。」
「珍しいな!ラティスが騎士団を――」
『ええーっ!』
「そ、そんな!今までずっと隊長になる為に頑張ってきたにょ!」
「もったいないよ」
「まて、ラティスにも考えがあるんだろ?」
「あぁ、最近は第二小隊にもほとんど顔を出せていない。役にたっていないんだ。」
「そんな事は・・・」
「いや、今の私より、毎日鍛錬を頑張っている【ガルド】に副隊長を譲るのが正しいんだと思う。」
「ラティス・・・でもそれは王姫としての公務だったりがあるんだし、しかたないんじゃないの?」
「春・・・私にとってそれは言い訳なんだ。ま、隊長もそう言ってくれるだろうがな・・・」
『・・・・』
「でもまぁラティスが決めたんだ、いいんしゃないか。」
「そうだ。しかも私はもう【ディヴァイン・レゾナ】だからな!騎士なんて面倒くさい事やってられないんだ!」
『ん?』
「あんな、むさ苦しい筋肉命みたいな奴ばっかりな所!今すぐに辞めて来たいのだ!でもなかなか言い出せなかった!」
『・・・』
「しかしやっと辞める理由ができた!わたしは特殊部隊なのだっ!はっはっは!」
『心配を返せ』
「で、悠真と春は?」
「おれはのんびりするさ」
「じぁ、私も。」
「稼ぎのない旦那はすぐ捨てられるにょ、悠真。」
「ちゃんと養ってね、あ!な!たっ!」
「にょ〜っ!調子乗ってイチャイチャするのやめるにょ!」
「ま、まだ正式に婚約したわけではないのだろ!?」
「したようなもんだもーんっ!てかぜったいするもーんっ!」
「ぬぬぬ、生意気な同い年にょ!」
「わ、私は年上だ!私の方が悠真といい感じの歳の差なのだ!」
「なによっ!いい感じの歳の差って!?」
「それは、レゾナスを分けてもらいやすいとか・・・?」
「関係ないでしょ!レゾナス分けるの禁止!」
「なっ!それを春に決める権利はないのだ!」
「そうにょ!ないにょん!」
「だめです!悠真には触らないでくださーいっ!」
「だめだ!レゾナスは頂だく!」
「なによ!この胸だけでっかい筋肉お化け!」
「なっ・・・お尻だけ無駄にでかいワガママ女に言われたくない!」
「私だってそれなりに胸あるもん!」
「わ、私もレゾナスもらうにょ!」
『うるさい!童顔幼児体型は引っ込んでて!』
「・・・それは悪口にょ」
周りが見えないぐらい盛り上がる春とメティラをほっといて、悪口を言われたポピンは悠真にくっついて、ちゃっかりレゾナス補充をしていたのであった。
「ふっ、馬鹿2人にょ」
「はあっ――仲がいいのか悪いのか。」
◇◇◇◇◇◇
「お待たせいたしました。最終試作案です。」
「にょー!かっこいいにょ!」
「かわいーっ!」
「うん、良いな!」
「軽さはどんなもんですか?」
「はい、ご希望に合わせて素材を全て見直した結果、悠真様の普段着用になられている服より300gのみの増量まで押さえました。」
「それはすごいっ!」
「ありがとうごさいます。さらに強度は現状の騎士鎧と比べれば落ちますが、術印を行使した時の防御力が大幅アップです。」
「そ、それはどんな技術なにょん!?」
「ポピン様、ポピン様のレクナントの技術を拝借いたしました。」
「ほんと!私の技術がやくにたったにょ!?」
「はい、それはもう!防具のそれぞれの適所に術印を刺繍にてほどこしました。これで、消える事もございません。」
「なるほど!」
「わからん話はあとでやってくれ。 俺は軽さがあるなら構わない。功も同じだと思う。強いて言えば・・・」
「どんどん仰ってください!」
注文をいくつか付け、あとはポピンが何か案があると言い出したので、先にシーカーズ本部に行って待つ事にした。
初めて訪れた時の事を思えば、随分とシーカー達の態度が違うもんだ。
「おいっ!マスタークラスがきたぞ!」
「本当だ、メティラ様と悠真様だ」
「あの隣の嬢ちゃんもなのか?」
「悠真、ここ怖い・・・」
「ははは、大丈夫だよ」
「ヨラ殿、ガンツ殿はいらっしゃるか?」
「あら、メティラ様!しばらくお待ちください。」
それからすぐに本部長室へ通された。
相変わらず豪快なガンツは昼だと言うのにぶどう酒を瓶ごと煽っていた。
「あっ!また!まだ仕事中ですよっ!」
「硬いこと言うなヨラ!今日は良いんだ!」
「何が良いんですかっ!」
「だってお前!何百年と変わりなかったこの国に新たな部隊ができたんだぞ!?こりゃ何が起こる前触れじゃねぇか!たまらないね!」
「いゃ、不吉なこと言わないでくださいよ。それよりもうご存知なんですね。」
「がはははは!悠真よ、平和な時代にゃ特殊部隊なんて必要ねぇ。そんな時代に理由はどうあれ、あいつは新設した。」
「父上の事ですか?」
「あぁ、あいつと俺は若い頃はそりゃあ色々無茶したぜ!」
「知りませんでした。あの父上が・・・」
「あいつ今でこそ、のほほんと国王なんてしてやがるが言っても俺とおな――――」
「ガンツさんっ!今日はお願いがありまして・・・」
「おっ、そうだったそうだった!」
メティラは話を止めた悠真を不思議そうに見た。
ガンツも国王の正体をメティラが知らない事を思い出したようだ。
「お前の婚約者とポピンの嬢ちゃんをシーカーズ登録だな?」
「まぁ、婚約者なんて!お耳がはやいですわ」
「お、おう。」
「ポピンはもうすぐくると思います。ガンツ殿、二人はどのクラスでしょうか?」
「そうだな、二人とも戦闘はからっきしだろ?何か得意なことは?」
「私は家事全般ですかね?」
「おお・・・」
「ポピンは研究全般ですね・・・」
「そうか。1番下でかまわないんじゃないか?」
「いや、しかしガンツ殿!私、悠真、功がマスターであと二人が初級では、バランスが合わない」
「でもなメティラ穣、それ相応の力量ってのが必要だぞ。お前さん達はマスター以上の実力があるからマスターなんだ。」
「しかし!」
「メティ、良いではありませんか。私は別に戦闘に参加したい訳ではは無いのですから。」
「春、しかしだな!」
「いいえ、それで良いのです。マスターと言うのは戦闘のランクなのでしょう?私には必要ない事よ。」
「・・・・しかし」
「それに、もし家事全般いえ、メイドとしてのランクがあるのなら、私はきっとマスタークラス以上です。そしてラティは初級以下・・・ね、それぞれ役割があるの。」
「そ、その通りだ春。すまぬ、要らぬ世間体を考えた発言だった。」
「わかってくれたらいいの。」
「おぃ悠真・・・お前の婚約者、セイラ姫みたいだな・・・」
悠真は最近の状況を考えると、否定は出来なかった。
しかし、婚約者ってのはまだ・・・・
登録は二人とも初級ですまし、まとまって行動する団体の個別名(隊号)はそのまま【ディヴァイン・レゾナ】とした。
「これから頼んだぜっ!」
ガンツに背を叩かれシーカーズ本部を後に家路に着いた。
「ねぇ悠真。ご飯の前に体重の件話する?後が良い?」
「後でお願いします・・・」
――一カ月後―――
「みんな素敵よ!見違えたわ!」
「ありがとうお姉様!」
悠真の装備は、黒と深藍を基調とした軽装。
肩と胸だけを幾重にも補強しながらも、動きをまるで妨げない。
肩から袖へ流れる銀糸の術印は静かに輝き、腰では愛刀【天霞】が存在感を放っていた。
「悠真かっこいいょ・・・」
「ありがとう・・なんか無駄に照れるな」
春は、白と翡翠色を基調とした装い。
短めの外衣は軽快さを重視しながらも、胸元や腰へ施された術印の刺繍が巫女にも侍女にも見える上品さを纏わせている。
「悠真、可愛い?」
「あぁ,可愛いぞ。セイラ様にもらったメイド服姿の春といい勝負だな!」
「本当っ!よかった!」
『おい、そこ!いちゃつくな!』
ラティスは蒼銀と純白。 胸をはってどうだと言わんばかりのドヤ顔をしている。
王族騎士としての気品を残しつつ、肩当てや腕甲は限界まで軽量化され、一目で機動力を重視した装備だと分かる。
「ふっふ!素晴らしい!悠真、かっこいいだろ!」
「あぁ、かっこいいな!」
「ラティスちゃん!そこは可愛い?でしょうに」
「はい、お姉様・・・」
功は無駄を一切排した黒一色。
術印だけが鈍く輝き、必要な物だけを残した実戦装備は、いかにも功らしかった。
「功は渋いな!」
「今までのとあんまり変わんねぇな」
「功だからどうでもいいにょ」
「おいっ!」
そして最後はポピン。
工具や小袋を至る所へ吊るした研究者らしい姿。防具というより研究服。それでも術印が各部へ組み込まれ、防御性能は騎士装備にも引けを取らない。
「かわいいにょーーっ!」
本人だけは誰よりも嬉しそうだった。
「なぁポピン、この中央にある宝玉は【蒼】か?」
「そうにょ!おしゃれにょ?」
「他のは?」
「それは可愛いから付けてもらったにょ!」
五人が並ぶ。色も形も違う。
だが胸元に刻まれた銀の紋章だけは共通だった。
羽を広げた神鳥。
その中心には、太陽と月。
【ディヴァイン・レゾナ】
アルスティアと瑞穂、二国共同特殊部隊の証だった。
「さあ!準備は整った!」
「なんかワクワクだね!」
「出発するにょ!」
「まずは大神殿だな」
「面倒くさいのは嫌だなぁ・・・」
第一部 完




