第三十二話 強者の正体
皇宮からポピンが迎えにやってきた。
メティラはセイラ様に捕まっているらしい。
「お待たせにょ!」
「持ってきた鉱石はどうだったんだ?」
「どれも残響はすくなかったにょ」
「なんの鉱石なんだ?」
「うーん、鉄とかばっかりだったにょ」
「でも、神との繋がりのおかげですぐわかるようになったんだね!」
「そうにょ春。調べる時間はかなり短縮できるにょ」
「よかったじゃない」
「それより……」
「どうした?」
「いつもに増して、二人の距離が近いにょ…」
『そんなこ事はないよ…』
秀真や蒼真に見送られ、皇都にむかう。
皇宮に着いてすぐにセイラがやって来て春を連れて行こうとするが、珍しく春は悠真にしがみついて嫌がる。
「あら、予想してたより早かったですわね…」
「何がですか?セイラ様」
「いぇいぇ、こちらの話ですわ」
「今は悠真と一緒に居たい!」
まるで、幼児が駄々を捏ねるかのように春は泣きべそをかいて悠真から離れようとはしなかった。
セイラは微笑み、踵を返す。
「アルスティアに着いたらお付き合いして貰いますわよ」
いつもと違う春に、ポピンは何かを感じ取り、春の周りをグルグル回る。
そして春の左手をとり眺めた。
「違和感はこれにょ!薬指に指輪って!どう言うことにょ!」
「どうって、春に似合いそうだったから買ったまでだ」
春は赤らめた顔を悠真の腕に埋めた。
ポピンは悠真に詰め寄った。
「左の薬指につける指輪を渡すって事、理解してるにょっ!?」
「ん? みんなそうしてるじゃないか」
「……」
「違うのか?」
バッ!と春は俯いたまま悠真から離れる。
何かを言いかけたが、グッと堪えて振り返る。
「もうっ!やっぱりセイラ様の所にいってくる…」
そう言い残し、駆け出した春の顔は幸せそのものだった。
「ばーか」
走り去る春を見ながら、ポピンは悠真にお説教をはじめる。
薬指の意味を約三十分聞かされた。
「それはそうと、何か忘れてるにょ…」
「何をわすれてるんだ?」
「あっ!」
ポピンは吹き出しそうになりながら悠真に言った。
「功を忘れてるにょ!あははは」
「本当だ。あいつ最近、本当に存在感無いな!」
とりあえず、急いで迎えにいく悠真。
出発まで一時間もない。
◇◇◇◇◇◇
「お前ら俺の扱い雑すぎんだろ!」
「ごめんにょん!」
ケラケラ笑いながらポピンは謝る。
エルディア号に乗り込みながら、皆楽しそうだった。
今回の便では最上階にある、皇族専用室によばれだ悠真たち。
そこには、また綺麗なドレスに身を包んだ春がいた。
セイラやお姫様姿のラティスと数人のメイドに囲まれた春にポピンが駆け寄る。
「あーっ!首飾りも指輪とお揃いにょっ!」
「そうなのだ…ですの、ポピン。みてください、この可愛いくて上品な仕上がりを」
「いったい誰からの贈り物なのかしらね?」
「いえ、それはその…」
セイラはわかっているが、そこは春を冷やかしたかった。
ポピンは悠真を引っ張ってきて、腰の刀鞘を指先す。
「まぁ!悠真とお揃いですのっ!?」
「ゆ、悠真!私には何もくれないのに、春にはこんな可愛いのをわたすとわ…わたすなんて、ひどいですわっ」
「いいにょーっ!」
女性陣が盛り上がる中、悠真と功はアルスティア国王に呼ばれた。
国王も暇そうだ。
「悠真、春と婚約したのか?」
「えっ、はいっ、いや、そのっ……」
悠真はポピンに薬指の意味を聞くまでは、本当に思いを伝えその約束を守る証としか、考えていなかった。
内容は同じような事だとしても、婚約、結婚は頭になかった。
「悠真…俺の知らない間に春とそこまで」
「はっはっは 悠真よ。あの子は良い子じゃ、ちゃんと守ってやるのだぞ」
「はい、必ず」
「ま、こんな話はセイラ達とすれば良い。お前達の(刀)とやらを見せてくれぬか?」
「勿論です。ただ、恐れながら申し上げます」
「よいぞ」
「鞘から抜かれましたら、けして抜き身…刃の部分には素手で触られませぬよう、お願い致します」
「わかった!」
チャッ…
「ほぅ、見事な物じゃな。美しい…」
「わが瑞璃家に伝わります三振の中の一振り【天霞】と名の付くものでございます。」
甘霞は中直刃で見事な互の目尖の刃紋がはいっている。 神秘な輝きと共に怖さも感じる名刀だ。
「なるほどの、代々受け継がれる名刀と言うものか」
「はい、さようでございます」
「功のものは?」
「我が家に伝わる【守斬】と名の付く一振りでございます」
「これもまた、見事じゃ…やはり皇国の武器には神の力をより強く感じるわぃ」
「国王様も相当な鍛錬をされてきたように、お見受けしますが」
「悠真よ、それはなぜそう思う」
「恐れながら。国王様の歩かれるお姿、王の杖をお持ちになる時の握り方、外に出られた時の目の動き。先程の刀の抜き方。何より今、神の力を強く感じると仰った事」
国王は鋭い眼差しを悠真に向ける。
悠真の言った事は功も気づいていた。
「私と功。共和国で生活する様になってから、強者と思った人物は一人だけ。国王様はその方と同等、いやそれ以上の武を感じます」
「その者の名は?」
「シーカーズ本部長 【ガンツ】殿…」
今まで見た事のない国王の鋭い眼差しは、いつもの優しい眼差しに変わった。
「はーはっはっはっはっ!」
騒いでいた女性陣も突然の国王の大笑いに振り向く。
国王は慌てて、何もないと皆に手の平を向けた。
皆の気が散ってから話す。
「悠真、功よ。見事な観察力である。実はの…我が国における【エクシード級】の騎士の称号を持つのは…わしとガンツじゃよ」
「やはりそうでしたか」
「私も、ガンツ殿とお会いした後に悠真と話していたのです。国王様の隠された強さを。」
「はっはっは!大したものよ。だれも気づいた奴はおらんぞ」
「ありがたきお言葉」
「セイラもラティスも知らないから内緒じゃぞ」
国王は小声でそう呟いた。
二人も頷いて、返事をかえした。
「そうじゃ、二人には王国の鎧を授けようかの」
「いゃ、頂くような事は何もしておりませぬゆえ」
「これから色々あるじゃろうて。どうせまたラティスがあれ貸せあれ準備しろと言ってくるじゃろ…それに」
「?」
「奴らだけ春に沢山服を与えてるのが、悔しくてのっ!」
「はぁ…」
「はっはっは!決まりじゃ、明日!早速武具屋に行くぞ!」
「あ、あの国王様!」
「なんじゃ悠真、不満か?」
「いぇ!ただ、出来ましたら騎士のような重装備ではなく、ラティス様に近い軽装備がありがたいのです」
「なるほどの…大剣や槍で戦うのでは無いのだしな」
「はい、我々は普段から今の服装が戦闘服のようなものですから。それに、術を行使する方が多いので身軽な方がよいのです」
「あいわかった!任せておけ!」
初めてこんなに長い時間、国王と話した。
やはり、只者ではなかったのだ。
一国の主人となると、ただ読み書きが出来るだけでは務まらない。そう、皇国の王であっても。
夜遅く着いた為、今日は解散。明日またアルスティア城へ向かう事になった。
「春、セイラ様と何をしてるんだ?」
「あなたも共和国に来てメイドをするのなら、こちら側のしきたりも覚えなさいだって」
「それがあのドレス姿なのか?」
「可愛いい?」
「なんでこないだ貰った侍女服じゃないんだ?」
「可愛いっ?」
「あの侍女服、まだ一回しか着てないん――」
「かーわーい――」
「うん、可愛い。すごく可愛い」
「……」
「セイラ様、なんか悪巧み――」
ゴンッ!
「ち、ちゃんと可愛いって言ったじゃないか、すごく!までつけて!」
「はい適当。今日も適当。安定の適当さ」
「ご、ごめん」
春はそんな悠真とのやり取りが大好きだった。
頭のたんこぶを抑える悠真の代わりに撫でながら
「侍女教育みたいに言うけど、教えてくれる事はお茶の飲み方だとか、ドレスを来てる時の仕草や振る舞い方なんだよねぇ」
「?」
「だから、やってる事がメティと一緒って事」
「……」
「どうしたの?」
「まさか、お前の親父さんが言ってたように、王子と結婚する為に――」
ゴンッ!
「痛い!同じ場所はやめろ!」
「馬鹿!馬鹿馬鹿バーカ!」
「連呼しすぎだ!でもわかんないだろ!」
「セイラ様には言われたよ。悠真を大事にしなさい。あなたが選んだ道ならばって」
「どう言うことだ?」
「はぁっ?今のもわかんないの?」
「自慢じゃないが、わからん!」
「もう一発いく?今度は角で同じ場所!」
「いやだ」
「ほんとーぉぉに鈍感ね、悠真は」
膨れる悠真。
後ろから抱きつき顔をくっつける春。
「私はもう、あなたから離れないし離さないよ。悠真が鈍感過ぎる分、私が二倍も三倍も大好きでいてあげる」
「なんだよ、急に」
「ふふっ 明日は王様とどっか行くんでしょ?早く寝なさい!」
「わかったよお母さん」
ゴンッ!
「おやすみ悠真」
□□□□□ラティの日記□□□□□
◯月×日
大事件だ!
悠真と春が婚約した!いやまだか?
でもなんか二人がいままでと違う距離感なのは
間違いない…
なんかちょっと寂しぃ
レゾナスわけてもらえなくなる…
いゃ、春がいない時なら!
ポピンに相談しよう!




