第三十一話 春と悠真
ポピンが授かった加護の力が大体解明できた。
早速試したいと、皇宮に置いてきた鉱石を調べらる為にメティラと二人で皇都に向かった。
悠真と春は久々に大樹の街でゆっくりする事にした。
「どうだ?久々に家族と一晩過ごして。」
「うーん、別になんてなかったよ」
「そか」
「お父さんは何か、ウルウルしてたけどね」
「ははは、久々に娘が帰ってきて嬉しかったんだろうよ」
「そうかな?その割にはなんかもう二度と会えないような感じだったけど」
「なんだそれ?もうちょっと帰った方が良いんじゃないか?」
「えーっ、めんどくさい。」
「専属侍女なんて、別にしなくてもいいんだぞ?」
「そんな事いわない!それは私が好きでやってる事なんだから!」
「はい、わかりましたょ。」
二人はいつもの草原にいた。
吹きすぎる風が心地よい。
「もう家にいなくて良いのか?」
「うん。みんな仕事してるし・・・家にいたら手伝えって言われるしねっ!」
「そっか・・・んじゃ、たまには二人で村でも回るか?」
「行くっ!」
太陽は知らぬ間に真上まで昇っていた。
よく手入れされた艶のある黒毛の馬が暑そうに水を飲んでいる。悠真がいつも乗っていた【早風】だ。
「お前に乗るのも久々だな、今日はよろしくな」
(ブルルッ!)
「ちょっと重いのがいるが気にするな。」
(ブルルッ!ブルルッ!)
「あぁっ!悠真も早風も私の事言ってるの?」
「いえ・・・」
(ブルッ)
春は悠真の前に乗り、ゆっくり進む。
一時間ほど進んだ場所にある【翠の村】へ向かっている。
この村は翠の鉱石が取れる村で、それを加工した品が売られている。
「わぁ、ちょっと来ない間にまた可愛いのが増えてる!」
「そうか?女物ばかりだから気にもしてなかったな」
「いいなぁ・・・可愛いなぁこの簪」
春の必殺上目遣いが炸裂する。
「わかった、買ってやるよ!でも簪ばっかりだな。前も簪買わなかったか?」
「だってぇ、簪が一番使うんだもの」
「そんなもんかねぇ。今日は時間があるんだから、他にも見なよ」
「うん、わかった!」
嬉しそうに悠真の袖を引っ張って、あっちこっちと店を見回る春。悠真はある店で綺麗な形をした指輪を見つけた。
「店主、この指輪きれいだな」
「おや、悠真様ではないですか!」
「あぁ、皆元気そうでなによりだ。」
「おかげ様で。共和国からのお客さんも買いに来るようになって、結構稼がしてもらってますっ」
「ははは!そりゃ結構な事だ」
「で、その指輪ですね。それは翠の宝玉なんですが、結構残響が強いのが掘れたんですよ。」
「へぇ、まだそんなのが掘って出てくるんだな。」
「ですね、今となってはかなり珍しいですよ。」
店主は思い出したかの様に悠真にちょっと待ってと言って奥へきえた。 春は悠真がなにをしてるか気になって、横にきた。
「お待たせしました。これ、どうですか?」
「わぁ!素敵!」
「これはまた・・・すごいな」
「実は息子が細工師でしてね、なんか取り憑かれたように作り上げた品なんですよ。これがまた、出来栄えが最高なんですよ。」
鳥の羽を模った爪留めに翠と無と朱の宝玉がはめ込まれた指輪と首飾りだった。
その輝きにうっとりとしている春。
「よし、頂こう。」
「えっ・・・こんな高価な物誰にあげるつもり!?」
春はうっとり顔から一転して膨れっ面になる。
「ありがとうございます!指輪の大きさの調整はどうされます?お相手様に合わせてから再度依頼していただけますか?それか息子を同伴させましょうか?」
「いや、大丈夫だ。すぐ頼む。」
悠真は指輪を取り、春の手を取った。
ためらいもせず、左の薬指に通す。
「これは・・・一番しっくり来るが、合ってるのか?」
「・・・・」
「?」
「・・・・」
「おい春! 大きさはどうなんだ?」
「えっ・・・」
「悠真様、少し大きいかと思いますので、直ぐに合します。」
「そうなのか、すまんな。いまいちわからん。」
「お任せください。」
「・・・・」
「春、いつまでボケーっとしてるんだ?」
「いゃ、だって・・・私にくれるの?」
「いらないか?」
「・・・欲しいけど」
「じゃあ早く合うように調整してもらえ」
「うん・・・」
春は突然の事に頭がついて行けなかった。
悠真が自分の為に選んでくれたもの。
そして、なんで左薬指なのか・・・
「お待たせしました。細工師の息子です。」
「悠真様、選んでいただきありがとうございます!」
「あぁ、良い物だからな。」
「では、調整しますので、再度指に通してください。」
春は言われるがまま、薬指に通し細工師に見せる。
悠真は後は知らないと周りを物色している。
「ほんの少し調整するだけで大丈夫ですね。すぐ終わりますので!」
細工師はそう言って工房へ入っていった。
春は悠真を見つめる。
「おっ!店主、これは刀の鞘飾りか?」
「左様でございます。」
「この刀に付けれるかな?」
「問題ございません。」
「おぉ!ではこれも頼む!」
それは同じ三色の宝玉と鳥の羽があしらわれた鞘飾りだった。
春はそれを見てまた驚く。
悠真は春をみて微笑む。
「お揃いだな」
「お待たせいたしました。どうされますか、つけられますか?」
「どうするんだ?」
「箱に入れてください・・・」
にこやかに見送る店主達に礼を言って悠真は次の街へ向おうとした。
「帰る」
「ん?」
「もう帰るっ!」
「な!なに怒ってんだ?」
「怒ってないっ!帰る!」
「・・・わかったよ」
わずか三時間程の旅だった。
二人はいつもの草原に戻ってきた。
並んで座り、いつもと変わらない海を眺める。
いつもと変わらない時間。
「せっかく買ったのに付けないのか?」
「・・・・」
「何いつまでも怒ってんだよ」
「怒ってないもん!」
ハアッとため息をついた悠真は春の後ろに座り直し、抱きしめた。 春は回された腕に顔を乗せる。
いつも春が機嫌を損ねた時にする二人のお約束だった。
「やっぱり機嫌わるいんじゃねーかよ」
「ちがうもん」
悠真は箱から首飾りをだして春につけた。
そして指輪もそっと春の先程と同じ指にさした。
「なあ春。」
「なに」
「どうなるかわからない。それは神だけがしっているのかも」
「・・・・」
「だから、今から言う事は実現できないかも知れない」
「・・・言って」
「いつまでも、俺のそばにいてくれ・・・」
春の目からは大粒のなみだがこぼれた。
悠真が優しく回している腕にしがみついた。
「お前には迷惑ばっかりかけてきた。これからもたぶん」
「・・・・」
「それでも良いなら、俺は春を生涯守ってみせる。」
「やっと気づいたよ、俺には春が必要なんだって」
「おそいっ!」
「ごめん」
「・・・・」
悠真は強く抱きしめた。
春は震える声で言う。
「私も・・・なにがあっても悠真のお側にいます――」
優しい風が二人を包み、花々が静かに揺れる。
今日の終わりを告げる天照だけが、黄金色の光で二人を照らし、その口付けを静かに見守っていた。




