第二十八話 新たな神霊石
悠真が春に見惚れ、春は顔が沸騰中の部屋へポピン達が戻ってきた。
悠真の持つ神霊石と同じような形に成型し、綺麗に磨かれ藍色に輝いている。
「ぬぉぉ!なんなにょ春!めっちゃ可愛いにょ!」
「アルスティア国家の格式である黒の生地に王家直属しか施されない金の刺繍と模様・・・しかも特別仕様!まさか春!セイラ姉様のメイドになったのか?」
「違いますわ、それは頑張っている悠真へのご褒美ですわ!それより早くしなさい!」
悠真と春は未ださっきの状態のままだ。
「さぁ、悠真よ!悠真!!いつまでも見惚れてるでない!」
「・・・・・ハッ!俺は一体?」
「ボケッとしてないで、はい!宝玉にょ!」
「あ、あぁ・・・。これで何を?」
「悠真!おかしくなったのか?なら私がレゾナスを分けてやろう!」
ゾクッ・・・・・・
ラティスがそう言った時・・・沸騰した顔を隠す春の手の隙間から、真っ赤に睨む目が見えた・・・・・。
「じょ、冗談だ・・・。さぁ早く試してみてくれ!」
「あぁ、そうだったな、演習場へ行くのか?」
「そうしよう!」
演習場には国王までもが現れた。
皆、演習場の二階にある見学台から悠真を見守る。
ラティスと第二小隊の騎士【ガルド】が悠真のそばについた。
(さて・・・ああは言ったものの、どうやったら発動できるんだ?言霊は・・・・)
「コンッ!」
「キュッ!?」
呼ばれて首にかけられた悠真の【無の神霊石】からコンが出てきた。
それをみた国王を始めとする共和国の皆は驚きを隠せない。
「セイラよ、あの動物はなんじゃ?」
「ラティスが言うには悠真に使える神獣らしいですわ。なんでも悠真の家にある狐の銅像だとか・・・。」
「なんとも・・・不思議なこともあるものじゃの。」
悠真はコンに藍の宝玉を見せていた。
「コン、これなんだかわかるか?」
「キュゥ・・・・キュ!キュキュ!」
「そか・・・わかんないか。でもそうしてみるわ。」
メティラとガルドは前で人と動物?が会話していることが未だ信じられないでいる。
「メティラ、コンが言うには、何が起こるかわからないけど、残響は感じられるから、俺たちでとりあえず残響を込めてみようぜと」
「わかった。結界などを張り巡らそう。」
「もし発動できそうなら的に向かって放つぞ?」
「了解した!」
「じゃ、いくぞコン!」
「キュッ!!」
悠真とコンが集中し出した。
メティラは演習場内に結界を二重に張った。
「さぁ、存分にためしてくれ!」
悠真は胸の前で手印を刻む。コンはそれに合わせて蒼白い光を増していく。
周りの残響とコンの光が悠真を伝って藍の宝玉へ送られる・・・・・。
みんな固唾を飲んで見守っている。
(これは・・・・なんだ?残響が取り込まれるにつれて頭の中に何か・・・・でも残響が足りない・・・・)
「メティラ・・・・功を呼んできてくれ・・・・・・」
「わかった!」
メティラはすぐに使いを出した。
一旦集中をやめた悠真はメティラの元へ歩み、何かを伝える。
「おや、失敗じゃったのか・・・?」
「難しいのですわね・・・・やはり」
メティラに何か言われたポピンもどこかへ向かった。
見学中の皆がざわついている。
「国王様!!!悠真より今しばらく時間をいただきたいと願い申しております!!準備ができますまで二十分ほどお時間を頂戴いたしたく!」
メティラが叫ぶと国王は警護の側近に耳打ちをする。
「メティラ様!構わないから心ゆくまで時間を使え!と申されております!!」
「ありがとうございます!!!」
早馬に連れられて悲壮な顔をした功が到着した。わずか十分の事だ。
それに少し遅れて研究員に木箱を持たせたポピンも走ってきた。
「なんだよ悠真!・・・・早馬って怖いな。」
「持ってきたにょん!」
「すまないな、じゃあ言ったとりに頼むぜ。」
ポピンが持ってきたのはすぐに準備できた6個の蒼のレゾナイトだった。それを悠真の周りに並べる。
メティラが国王に準備ができたことを知らすために、側近に向かって合図をする。
再び演習場の結界が二重に張った内側に、功が三重目の結界を張る。
メティラと功が悠真の背中に手を当てレゾナスを解放し始めた。
再度、悠真は胸の前で手印を刻む。コンはそれに合わせて蒼白い光を増していく。
周りの残響と功とメティラそしてコンの光が悠真を伝って藍の宝玉へ送られる・・・・・。
「よし・・・ぶっ放せはできないだろうが・・・行ける・・・・」
神々の残響よ
我らを滅ぼさん
とするものを
その激流と凍てつく
刃によって
浄めたまへ
神響術 【蒼氷刃】
悠真から放たれた術は的向かって激流をなし、ぶつかる直前で氷の刃となって切り刻み、的は粉々になった。
「で、できたな。」
「突然呼び出したと思ったらなんて術使いやがる・・・・」
「こ、これも・・・美しい・・・」
「や、やった!やったにょ!本物の神霊石だ!!!」
ウオォォォ!!!
また演習場全体の歓声が聞こえ、国王は立ち上がって拍手をしている。
セイラもまた、涙を流しながら喜んでいた。
「なぁ、ポピン。この石、一度皇国へ持っていかないか?」
「今なんて言ったにょ?・・・・」
「皇国の残響に当ててみないか?」
「やってみたいにょ!!!」
◇◇◇◇◇◇
悠真がした提案を、国王は快諾し、一緒に行くと言い出した。
国王が二国間の話し合いなしに皇国へ行くなど、あり得ないと官僚たちに詰め寄られ
明日出発の便で話を持って官僚が先に向かい、皇国の返事次第ではあるが来週には向かうらしい。
そして悠真達も待ちぼうけだった。
「国王様もなかなか行動派だな」
「確かにな。でも悠真、よくあの言霊を知っていたな。」
「違うんだ功。教えてくれたんだ。」
「誰が?」
「誰がと言われると、わからん。たまに頭の中に語りかけてくる優しい女の人の声だ。」
「相変わらず・・・神懸かってるねぇ、お前は。」
出発予定までの一週間。
ポピンは向こうで研究するため、最低限の道具と鉱石をまとめたりと忙しそうだ。
メティラは国王が行くので、今回は王姫としていく事になるとぶつぶつ文句を言ってお城で公務をこなしているようだ。
男二人は特別することもなく、ぼーっと時間を過ごしていた。
そして春はというと・・・・。
「春!あなたはこれを着なさいまし!」
「いえいえセイラ様!私が皇国に戻るのにそんなドレスは必要ございません。」
「ダメです春!あなたはもうアルスティア国の王室関係者でもあるのです!ラティスちゃん達のそばにいてもおかしくない姿で居るのです!」
「いや・・・・セイラ様。私ただの悠真様専属侍女ですよ・・・・。」
「おほほほ、気にしてはダメですわよ!」
と、よくわからない状況に陥っていた。ま、セイラ様にえらく気に入られたと言うことだ。
とうの本人はセイラ様を嫌ではないのだが、このまま城で働けとか言われるんじゃないかと気が気でないようだ。
メティラに聞いてみらた、それは無い!と言い切っていた。どうも城で働くには共和国の人間であることという法律があるらしい。
でもあの猪突猛進なお姫様にそれが通用するのか・・・・と考え得てしまう。
「悠真!先程エルディア号が戻り、快く訪問を受け入れてくれたと連絡がきた!準備してくれ」
「はいよー。今日の夕方出発だな?」
「あぁ、そうだ。私とポピンと春は駐機場で待っているからな!」
「春はって・・・・春がいないと何を持っていくかわからんのだが・・・。」
「何も持っていく必要はあるまい!」
「・・・・・まぁそうだけどさ」
エルディア号は出発前の確認を行っていた。
相変わらず大きな神翔船だ。
「悠真様ー!!」
「おお、無事解放されたのか?」
「はい・・・あれ着ろこれきろと。着せ替え人形状態でした。」
「はっはっは、春はもうセイラ様の侍女だな」
「そんなこと言わないでください!功様!」
国王が乗り込むため、かなり慎重に準備が進められている。
まもなく出発時刻だが、まだ全員のりこめていないようだ。
「一ヶ月ぶりか?皇国へ戻るの。」
「それぐらいですね。」
「最初はどうなるかと思ったが、なんとかなるもんだな。」
「確かに。でも悠真様がなんとかなってるのは私のおかげですよ?」
「はい・・・・知ってます。」
「わかってればいいんです!」
浮かび上がったエルディア号は夕日を背に瑞穂皇国へ向かって飛び立った。
◇◇◇◇◇◇
皇国到着後、皇宮では過去類をみない宴が催された。
両国の長が順番に集まった国民に挨拶をし、アルスティア国王は歓迎された。
「さぁ、アルスティア国王よ、中で飲み直しましょう。」
「えぇ、皇王。今宵は楽しい宴ですわい」
一方、春は知らない事もない皇宮の侍女達に囲まれていた。
「春ちゃん何事!どうしたの!?」
「きれーい!侍女やめちゃったの?」
「まさか!向こうの国で玉の輿!?」
『いいなぁ〜』
「いゃいゃ、なんかねー、なんでだろうねぇー、こんなドレス着る事になってねぇ・・・侍女なのに・・・」
「悠真あぁぁぁ!!!!」
久々のこの気の抜けた呼び声・・・・・兄の蒼真と後ろには父である秀真がやってきた。
「父上、兄上、お久しぶりでございます。」
「悠真、なかなか貢献しているらしいではないか。父として嬉しいぞ。」
「いえいえ、全て成り行きですよ。」
「いやぁ、まさか向こうの国王様から悠真のお褒めの言葉を聞けるなんてねぇ。兄としても嬉しいよぉ」
「で、だな・・・・。」
「はい?」
「なんで春はあんな格好で皇族の中に紛れている?」
「えーっと、それはですね・・・・。わかりません。」
「わからないのぉ?」
「第一王姫セイラ様に偉く気に入られているのは確かですが。」
「まさか・・・アルスティア国の王子様ととか!!!」
「これ、そんな夢のような話はよせ!」
そこには春の父親もいた。我が瑞璃家の従者である。
確かに・・・可能性が無いわけではない。
王子はまだ十七歳だったか・・・・・春が今から皇族入りの準備をするのも間違ってはいない。
悠真は頭をかきながら、その時はその時だと考えるのをやめ、蒼真と食事が用意されている部屋へ向かった。
コッコッコッとヒールの音が聞こえる。
「悠真のお父様に、春のお父様でいらっしゃいますね?」
「これはセイラ姫様、その通りでございますが・・・」
「お話したい事がありまして。お帰りになる前にお時間を作っていただけます事?―――」
□□□□□ラティの日記□□□□□
◯月×日
久々の瑞穂皇国!
空気が綺麗で美味しい!
蒼真も元気そうだった。
でもセイラお姉様はなぜに春を
皇室側の関係者のように扱っていたのだろう・・
何かまた悪巧みを・・・




