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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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第二十七話 進展

調味料を下げた春が帰ってきた。


「あれ?二人は?」

「な、なんか慌てて帰ったよ。」

「そう。じゃご飯作るね」

「いや、春。どこか食べに行かないか?」

「え、いいの?」

「あ、ああ・・・・(なんか、二人でいるのが怖い)」


春は前にセイラとメティラが選んでくれた普段着に着替えてきた。

皇国の侍女の制服を未だ着ている普段の春ではなく、年相応の元気で綺麗なお姉さんだった。

悠真(ゆうま)見惚(みとれ)れて春を見つめていた。


「どうしたの?変?」

「い!いや!いいんじゃないか?うん。」

「そ?よかった。何食べるの?」

「ん・・・?春が食べたいものでいいよ」


二人は春が以前から気になってたという、肉を丸めて焼いた料理を提供する店で食事をしていた。

焼けた肉とタレの匂いが食欲をそそる。


「おいしーっ!どう?」

「あぁ、いいな。美味(うま)い。」

「これ家でも作れるのかな?今度挑戦してみるね。」

「あぁ・・・・。」


和やかな時間が過ぎていく。

悠真も春とのこんな時間が実は好きだった。


「それで、さっきは何だったんだ?」

「さっき?」

「ポピン達がいた時さ。あいつら(春がいつもと違う!)って大騒ぎだったんだぞ。」

「そ?何か違ったかな。」

「あぁ、違ったな。」

「どう違った?」

「どうって・・・・違ったもんは違った。」

「ふーん。ほんとに違ったって思ってるの?」

「・・・何年一緒にいると思ってるんだ。それぐらいわかる。」


春はガラスの器に入れられた水を飲む。

たったそれだけでも、その一つ一つの所作が綺麗で、悠真は息を呑む。


「そうだねぇ、もう長いねぇ。十四年も一緒なんだね。」

「・・・・そうだな」

「そろそろ気づいてもいいんじゃないかねぇ・・・悠真兄ぃ。」


悠真は春が行った言葉の意味は・・・少し理解してるつもりだった。

いつかはちゃんとした答えを伝えなければと・・・。


「ともかくだ!あんな春は嫌だ。いつもの春でいてくれ。」

「・・・・」


春の水を飲む手が一瞬止まった。

無言で少し微笑むように見えた。


「いつもの私でいてくれ・・・かっ。」

「何だよ・・・・お前は俺の専属侍女(せんぞくじじょ)なんだろ?」

「そうですよ、ご主人様ぁ。」

「じゃ、じゃぁ命令だ。いつもの春でいろ。」

「かしこまりました。そのようにいたします。」

「・・・・やめろ。やっぱり侍女としてじゃなく・・・・俺の・・・」

「・・・・。」

「俺の大事な春だから、変わらない春でいてくれ。」


春は少し驚いて悠真を見つめた。

悠真は顔を赤らめて、別の方を向いている。


「実は今日ね、カルラさんが(旦那ともっと仲良くなりたいからここ、付いてきて)って言われてね。」

「どこにだ?」

「地区の寄り合いで(男の気を引くもて女の作り方)講座っ。」

「何だそれ?」

「勉強になったよー!でも・・・鈍感な悠真には効かない事もわかった。」

「・・・・・」

「仕方ない!せっかく勉強したけど辞め!いつもの春がいないと悠真はダメダメですからねぇ。」

「ダメダメは余計だ!でも・・・・春がいないと調子がおかしいのは・・・認める。」

「ほぉ・・・・悠真は春ちゃんの(とりこ)ですなぁ!」


何もい言い返せない悠真と、してやったりの春。

二人は店を出て日が落ち、綺麗な月が出る夜道を家路についた。


「そう言えば・・・二人にレゾナス補充?とか言われて嬉しそうにしてたよね?」

「嬉しそうにはしていない。」

「ふーん。じゃぁ私もレゾナス・・・私は残響かな?補充しよっと」

「・・・・」


腕に絡みつく春。それを無言で受け入れる悠真は、いつもの春に戻って、安堵の表情を見せていた・・・・。


「あ、明日はかぼちゃづくしのメニューだからねっ!」


◇◇◇◇◇◇



早朝、アルスティア城にくるようにとセイラの従者がやってきた。

廃坑の調査が終わって報告があるとの事だ。なぜか春も一緒にくるようにと告げられる。


「お待たせしました。」

「すまぬな、悠真。」


メティラとポピンはすでに座っていた。

二人は春の様子を(うかが)っている。


「春は別件で来てもらったのだ。これ【モラ】よ、春を案内せい。」

「はぁ・・・・。」


春は何をされるのか不安で悠真をみる。

悠真は(大丈夫だ)と春に頷く。

セイラのメイド(じじょ)【モラ】に連れられてどこかへ向かった。


「では今回の調査団長として向かってもらった【デルン】より報告してもらおう。」

「こんにちは、鉱山学者の【デルン】と申します。どうぞよろしく。」


彼は四十八歳、各地の鉱山で取れる鉱物や、地層を調べている学者だそうだ。

ポピンの【国家特別技師団】内に属する研究室に所属しているらしい。


「早速、ご報告いただきました場所から奥へ掘り進めた結果、見事な鉱脈が発見されました。」

「これがそこから見つかった海青石(かいせいせき)にょん。」


ゴトッとポピンが木箱にはいった鉱石を机に置いた。

それはまだ原石の状態が故黒ずんだ所もあるが、わずかに見えるその色は綺麗な(あい)であった。


「これほどまでに密度の濃い鉱物は初めて見たにょ。」

「どう思う、悠真。」

「触っても?」


ポピンが悠真の前に木箱を寄せる。

悠真は手に取り眺めた。重さは3kgはあるだろう。


「確かに残響を感じる。感じるが・・・・」

「神霊石までは行かない・・・だにょ?」

「あぁ、その通りだ。前にも言ったが、俺たちは神霊石がどうやってできるのかは知らない。」

「(大昔の人が洞窟とかで見つけた)って言っていたな・・・。」

「あぁ。俺たちは数少ないそれを代々受け継ぐ。それと比べたらこの鉱石は・・・」

「残響は少ない・・か。確かに功に借りた【無の神霊石】の残響は凄まじかった。」

「共和国には本物の神霊石は無いんだったよな?」

「うん。私が作った【蒼の神霊石(あお  レゾナイト)】も結局は人工物。本物ではないにょん。」


悠真は鞄から(あか)(みどり)の神霊石を出して木箱の中に置いた。


「これが本物だ。触ってくれてもいい。でも、メティラは大丈夫だが元々のレゾナスの蓄積が少ないセイラ様達は、問題はないが(しび)れを感じるかもしれません。」

「なるほど・・・それでは少し触らせていただきますわ。」


セイラが【翠の神霊石】を、デルンが【朱の神霊石】手にした。

三人は二人を見守る。


「こ、これは・・・確かに手がビリビリと痺れますわ!でも・・・なんでしょう、この癒しのような心地よさは・・・。」

「わ、私は身体中が燃えるような感覚でございます。でも嫌な感覚では無い・・。力が(みなぎ)ると表現すれば良いのか・・・」

「お二人とも大体合っております。セイラ様が持つ【翠】は治癒、癒しの効果を持っております。そして【朱】は炎系の神霊術の力を(おぎな)います。」


皆は感心して神霊石を見つめている。


「朱は【柘榴石(ざくろいし)】、翠は【翠玉(すいぎょく)】から出来ています。」

「どれも共和国にない鉱石なにょ。」

「あぁ、ポピンそうだな。でもこの【海青石】にはある程度強い残響が感じられる。てことは・・・」

「神霊石に近い・・・。」

「もし長い年月をかけて鉱石が自然に残響を取り込み蓄積し、神霊石になったのだとすると・・・。」

「残響の濃さが原因で、濃度の濃い皇国では神霊石が出来やすかった。しかし、薄い共和国は神霊石まで変化しなかった。」


『!』


「悠真・・・・それは神霊石の存在についての答えにょん・・・・。」

「謎が解けましたな。」

「やっぱり、それに近い蒼のレゾナイトを作ったポピンは本物の天才だよ。」

「いやぁ!それほどでもないにょん!ってそんな場合じゃないにょ。」

「もし、共和国にもレゾナスが強い鉱脈があったら、天然レゾナイト(神霊石)がある可能性が出てきたにょ!」

「それで・・・もし可能なら、この海青石を宝玉にしてくれないか?」

「どうするにょ?」

「少ないとはいえ、残響を感じられる・・・。俺と功なら、この石が何の効果をもつ神霊石もどきか試せるかも・・・」


悠真の言った言葉で全員が止まった。

口火を切ったのはセイラだった。


「ポピン!す、すぐに加工しなさい!」

「わかりましたにょ!!!」


一時間ほど待って欲しいと言ってポピンとメティラは慌てて部屋を出ていった。


「悠真・・・・これは凄いことなのですよ。」

「そ、そうなのですか?私にはいまいち何が凄いのかわかっていなくて・・・思ったことを口にしているだけでして。」

穢人(けがれびと)・・・・もうご存知でしょ?」

「ええ。」

「あの禍々しい物・・・我々は(いにしえ)の何かが影響しているのではないかと考えておりますの・・・。」

「・・・・」

「共和国では今後の穢人の対処の為にも、古から伝わる技術を解明しようと研究を進めてきました。」

「ええ、それが今少し前進しました。共和国に天然のレゾナイトがあるかもしれないと!」

「皇国と交流をするまで、神霊石の存在は知りませんでした。」

「このわずか、数ヶ月でここまで進展するとは・・・。」

「よかったです、少しでもお役に立てているのなら。で、鉱脈はどうなのです?」

「それが、今回見つかった場所以外で発見はできませんでした。」

「そうでしたか・・・・。」

「でも、こんな素晴らしいものが見つかったのです。良しといたしましょう。」


コンコンっと扉を叩く音が突然する。

春と一緒に出て行った【モラ】の声がした。


「失礼致します。ハル様をお連れしましたが、いかが致しましょう。」

「おお、待っておった!入るが良いぞ」


セイラに言われて扉が開いた。

そこには、なんとも可愛いらしい服装をした春がいた。


「セイラ様、これは?」

「悠真へのご褒美ですわ!可愛い侍女服であろう?」

「これが・・・侍女服ですか?」

「そうですわ。城のメイド(侍女)たちの服を改良して作った春専用メイド服ですわ!」

「これは・・・・春へのご褒美でわ・・・」

「何を言うのです!こんな可愛い春をこれから毎日見れる悠真へのご褒美ですわ!」

「あ、ありがとうございます・・・・。」


この服装は、実は悠真の一番好みに合っていた。

綺麗な光沢のある黒の生地に所々に金色の刺繍が施され、白いレースがひらひらと揺れている。

悠真は春から目が離せないでいた。


「悠真様・・・似合ってますか?」

「あぁ・・・可愛い・・・。」


何も躊躇(ためら)わず発せられた悠真らしくない言葉に春は顔が沸騰してしまった。

セイラはクスクス笑いながら二人を眺めてはいるが、複雑ではあった。


(ラティスの入り込む余地がなくなってきましてね・・・。)



□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日

 春が元に戻っていた。

かぼちゃのようにならずに済んだ・・・

それより海青石だ!

悠真が試してくれるみたいだ。

どんな効果を得れるのか楽しみだ!

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