第二十六話 春の異変?
「な、なんなのこれ・・・」
ポピンは慌てて右目をで塞いだ。
そして恐る恐る手を離すと、光は消え普通の視界が戻っていた。
誰かに話したいが、異常な事だと理解できるので言いにくい。
得体の知れない自分に起きた現象に不安になる。
でも皆に心配はかけたくはないと、黙っておく事にした―――
◇◇◇◇◇◇
悠真達が入院して二日目の昼頃に【レゾナス・シーカーズ】の本部長【ガルド】が治癒院に出向いてくれた。
早く結果を知りたいのだろう。
「えらい怪我になっちまったな!すまない、あの廃坑を勧めたのは俺だ。」
「気にしないでくれガルド殿・・・結果的に黒の宝玉の事が一つわかったのだから。」
「と言うと?」
「人を穢人に変えるだけではなく、獣も変えてしまうと言うことだ。」
「・・・・厄介な石だな」
「しかもあの時は、獣が偶然石に触れたと言うより、自ら触れに行った・・・。」
「触れたらどうなるのかを判っていたと?」
確かにそうだ。
あの時、白蛇は自ら祠へ向かい、黒の宝玉から【邪】の力を得た。
悠真はそれよりも引っかかる事があった。
(あの祠はいったい何のためにあそこにあったんだ)
「詫び。と言えば聞こえがいいが報酬は満額の5000レゾ支払うからな!嬢ちゃんの研究の足しにしてくれ」
「いいのですか、本部長」
「もちろんだ!またたのむぜ、悠真」
「わかりました。」
ガルドも忙しい身、退院したらまたきてくれと帰った。
三日だけとは言え、寝ているだけで退屈だった入院も退院許可がでて、院長にしっかりお説教されてから家に向かった。
「みんなおかえりにょ!」
「ただいま。春は?」
「にょ?来た途端に(留守番よろしくっ!)ってどっかいったにょん」
「買い物かな?」
「でも、買い物籠もってなかったにょ」
「そうか、まぁいいや。それで、何かわかったのか?」
「全然にょ。結局、海青石も取れなかったし・・・」
「まぁ、仕方ないさ。無いから廃坑になったんだろうし。」
「・・・その事で一つ気になってる事があるんだが。」
功が顎をさすりながら、続けた。
「実はあの祠の先にも、空間があるように見えてたんだ。」
「どう言う事だ?」
「封印の壁あっただろ?あの時、明らかに祠があった採掘場より広い空間が見えてたんだよな・・・」
「じゃあまだ先があると?!」
「多分だがな。しかもそこの残響は結構濃く感じ取れた。だからひょっとすると・・・」
「確認する必要がありそうだな・・・でも、今回は国に任そう。」
「そうだな、もし新たな鉱脈だったら国の管理下になるんだろうしな。」
「残念だけど、仕方ないにょ。」
「では、私から父上に報告しておく。」
悠真の案に皆賛成した。
あれだけ危険な目に遭ったところだ。
しばらくは大人しくするべき―――そう感じたからだ。
「所で春はどこ行ったんだよ・・・」
「帰ってそうそう、春、春ってうるさいにょ!」
「そうだぞ悠真!春はきっと散歩だ!だから今はレゾナスの補充がしやすいぞ!」
メティラとポピンの目が冗談ではなかった。
ジリジリ近寄る二人をかわしながら、春の事を考えていた。
「あーっ!また春の事考えてるにょん!」
「そうなのかっ!」
「いゃ、別に・・・」
「悠真がいつまでも春をほっとくから、彼氏でも出来たにょ!」
それから約一時間。
抵抗も虚しく、悠真は二人にレゾナスを吸い取られ続けた。
一度帰ると言って出た功がすぐ戻ってきた。
「(春と一緒に出かけてきます。)だってさ。」
功の侍女カルラの置き手紙をピラピラと振りながらそれだけ言ってまた上の階へ向かった。
カルラが一緒と聞いて、少し安心した悠真だった。
「レゾナス補充も完璧にょ!研究室へ来るにょ!」
「まさか、実験台にするんじゃないだろうな?」
「しないにょ、やっと完成したにょん!」
昇降機で地下2階へ向かう。
そこには見たことのない空間が広がっていた。
昇降機の前は一面のガラス張り。
中央の術印が刻まれたガラスをポピンが触ると、そのガラスの扉は横に滑り室内へ入れる様になっていた。
入ってすぐに階段が十段・・・明らかに最初の地下室とは違った空間が広がっている。
「こんなに広かったか?てか広過ぎだろ!」
「にょ?だから拡張してるって言ったにょ!」
「確かに言ってたけど・・・これ完全に前の道越えてるよな」
「向かいの建物過ぎたぐらいまであるにょ!」
「いゃいゃ・・・人様の敷地まで入っちゃ駄目だろ」
「そこは国家権力なにょん!すでに国が周りを買い取ってるにょ」
「・・・・」
部屋の中央には巨大なレゾナイトが据えられていた。
そこから床へ幾本もの溝が伸び、細かく砕かれた蒼晶石が埋め込まれている。
それらは各種計器へと繋がっていた。
「さ!こっちにょ」
「まだ何かあるのかよ・・・十分驚いたんだが」
「ここからがすごいにょ!」
部屋の奥の壁には、さっき入った入口とは別に巨大なガラス扉があり、そこを開けるとこれも巨大な昇降機になっていた。
「地下三階に行くにょ!」
「本当に地下を追加したんだな・・・お前ん家の財力が恐ろしいよ、メティラ。」
「国家の重要な事業の一つとして新たに予算が当てられたのだ。」
「にしても、どれだけ費用がかかってるんだか・・・」
「たしか、今年度は二百億レゾだったはすだか」
「規模がデカ過ぎてわかんねーよっ!」
巨大な昇降機を降りると、そこはまるで駅だった・・・
直径10mはあろうトンネルが何処かへ伸びている。そして反対側も掘り進めているようだ。
「なんだこれ!」
「ふふん!これぞ重要機関を地下で結ぶ新交通網にょ!」
「・・・地下にレグナント?」
「ここにレグナントを飛ばすにょ!」
再び家に戻ると春が帰っていた。
「悠真様お帰りなさい。すいません、お出迎え出来なくて」
「別にかまわん」
「?」
「なんだよ」
「いえ、別に。」
「春!悠真は帰ってくるなり春は春はとそればっかりにょ!」
「だから静かにするために悠真のレゾナスをもらったのだ!」
「あっ!余計な事いったらだめにょ―――」
「あら、それはまた。仲良しで。」
『!?・・・・』
「では私は夕食の準備しますので。」
そう言って春は炊事場に向かって行った。
『・・・・・』
「は、春はどうしたんだ?!」
「わ、わかんないにょ!」
「な、なんの反応もなかったな。」
「まさか・・・本当に彼氏ができて、悠真の事なんかどうでもよくなったにょ?!」
「と言うことはレゾナス補充し放題なのかっ!」
そう言ってメティラはまた悠真の腕にしがみついた。
負けじとポピンも反対側を奪う。
「メティラもポピンもご飯食べていくの?」
スッと顔を出して聞いてくる春。
慌てて悠真から離れて姿勢正しく返事をする二人。
『はいっ!』
「じゃあすぐ作るから待っててね。」
それ以上何も言わずに炊事場に戻る春。
「やっぱりおかしいな!」
「普段なら飛び回る鬱陶しぃ小蝿を見る様な顔で見てくる状況だったにょ!」
「いったい何があったんだ・・・」
「ごめん、調味料切らしてたから、買ってくる。もう少しまってね」
出かける春を確認して、炊事場に行ってみるメティラとポピン。
そこには春の鞄から一冊の本が見えた。
春に後でバレないように慎重に本を取り出す二人。
(男の気を引くもて女の作り方)
「春・・・・健気な子にょ・・・」
角を折ってあるページを開くとそこには。
(推してだめなら引いてみろ)
『・・・・これだ』
メティラとポピンは確信した。
春のさっきからの行動はこれが原因だと。
本を元に戻して調理台に目が行く二人。
全身がブルブル震え、抱き合って半泣きになった。
「ゆ、悠真!ちょっと急用を思い出したから城へ戻る!」
「わ、私も同じにょ!・・・悠真、気をつけるにょ・・・」
そう言って逃げる様に家を後にした。
「なんだ?」
不審に思った悠真は炊事場へむかう。
「!!」
悠真も脚が震え、立っていられないほどの恐怖を覚えた。
そこには・・・・
真っ直ぐに包丁が突き刺さった(かぼちゃ)が三つ。
生首の様に並んでいた―――
□□□□□ラティの日記□□□□□
◯月×日
無事退院できた。
お姉様に心配ばかりかけて申し訳ないと思う。
海青石も見つからず、結果は残念だったが次を
目指そう!
それよりも春が本当に怖かった。
いつもの春しかよっぽどマシだ。




