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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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第二十五話 加護

悠真(ゆうま)がポピンの肩を(つか)もうとした時


バチッ!


黒く禍々(まがまが)しい(きり)がポピンを包み、悠真の手を弾いた。


「痛っ・・・なんだこの霧はっ・・・駄目だポピン!行くな!」

「ポピンッ!」


メティラも近づくが弾かれてしまう。

もうポピンの瞳には(ほこら)ではなく、黒い宝玉(ほうぎょく)しか見えていない。

何度か抑えようとしたが、祠に近づくにつれ霧の威力は増し、悠真達を弾き飛ばした―――


「ポピンッ!宝玉に触るなっ!」


祠の前に立ち、ポピンは躊躇(ためら)うことなく黒の宝玉を手にしようとする。

しかしその前に頭を破裂させて倒したはずの白蛇(はくじゃ)の胴体が祠へ吸い寄せられた。

その胴体はポピンより先に黒の宝玉を体内に取り込み【(じゃ)】を吸収する・・・・。


辺りの残響も禍々(まがまが)しい黒い霧に飲み込まれてゆく。

そして白蛇の残骸は黒い霧となり再び姿を見せた。それは紛れもなく。


「穢・・・・・人?」

「いや・・・・人ではない。蛇の悪霊だ。」

「悪霊・・・・黒の宝玉の【邪】を取り込み自ら悪霊に・・・・」


大蛇の形を()した悪霊は今まで物と同じく真っ黒で白い目・・・赤い口・・・

悠真が今まで遭遇した悪霊のどれよりも強力な【邪】を放っていた。


大蛇が鎌首を上げ、悠真達に()い寄ってくる。

黒い霧を体から撒き散らし、近づくことができない。悠真達は一歩ずつ後ずさるしかできなかった。


「ともかくポピンが宝玉を手にしなかったことが(さいわ)いだが、どうしたもんかな・・・。」

「悠真・・・こいつは(はら)えるのか?」

「わからない。でもなんとかしなくちゃな・・・・。」

「ポピンを助け出して逃げるのも有りだぞ。」


 神々の残響よ

 我が手となりて

 悪霊を捕らえたまへ


 神響術 【(しばり)


そう行って残響術を功は発動させる。

しかし大蛇の動きは一瞬止まっただけだった。


「功!もう大丈夫なのか?!」

「なんとかな・・・・・それよりあいつを()きつけている間にポピンを助けて来いよ。」

「わかった・・・頼むぜ・・・コン行くぞ!」

「きゅ!」

「メティ、功と一緒に大蛇を惹きつけてくれ!」

「わかった!」


功は神響術【(ほむら)】で攻撃を仕掛け、メティラはレゾナスを(まと)い物理攻撃を始めた。

悠真はその隙を見て祠へ向かう!

功は連続して【焔】を打ち込み大蛇の動きが少しではあるが止まり始めた。

その攻撃に連動してラティスの剣技が大蛇の霧を削っていく。

そしてコンは一足先にポピンへ向かっている。


(よし、皆その調子で頼むぞ!もうすぐだ!)


シャァアァァアァ!!!!!!


攻撃を受け続けていた大蛇が奇声を上げた。

周りの霧が竜巻となり、一斉に三人を石壁に弾き飛ばした。


「ぐあぁ・・・」


壁に打ち付けられ・・・・ズルリと落ちる三人。

功とメティラは動かない。


(くっそ・・・!どうすんだよ、この状況・・・・)


口からは血が流れる。起き上がりたいが体が動かない悠真。


(あいつら大丈夫なのか・・・ポピンは・・・)


大蛇は白い目を悠真に向け赤く大きな口を開いて威嚇(いかく)している。


(なんとか・・・なんとかしなければ・・・功・・メティ・・ポピ―――)



そこはただ真っ白だった。

永遠に続く真っ白な空間の真ん中に、祠が一つあった。


「おい、人間。目を覚ませ。」


少し荒くそれでいて優しい声が聞こえる。

その声に人間と呼ばれたのは、ポピンだった。


「う・・・うぅ」

「こら!起きろと言っておろうが。」


祠の前に倒れていたポピンが目を覚ます。


「痛っ・・・体が痛いにょ・・・・」

「だろうな。あれだけ強く打ち付けたのだ。その華奢な体では痛かろう。はっはっは」

「だ、だれ?」

「誰でも良い。人間よ、名は?」

「ポ、ポピン・オスリア・・・ここはどこ!?」

「ポピンか。よい名だ。ここは我の神域だな。」

「神域・・・・・?」


ポピンは 起こっている事が理解できない。


「わからなくてもよい。ポピンよ。其方(そち)と其方の仲間が我に掛けられた呪いをどうやら解いてくれたようだ。」

「呪い?」

「黒い宝玉が祠にあったであろう。あれだ。」

「!!」

「数年前に何者かが宝玉を祠に置き、それが発する【邪】の力で我は身動きが取れなくなってしまった。」

「だ、誰があれを持ってきたのです!?」

「わからぬのじゃ・・・。してやられたわ。はっはっは」

「そうですか・・・・」

「・・・ポピンよ。祠に手を乗せてみよ。」


ポピンは言われるがまま、そうした。

何かが全て吸い出されるような感覚・・・・・。


「なるほどの。」

「?」

「勝手にすまんが、其方(そち)の記憶を見せてもらった。」

「・・・・あなたは・・・神様ですか?」


少しの間が空いた。

ポピンは祠を見つめ、帰ってくる言葉を待つ。


「ポピン・・・お主、我の力を(ほっ)するか?」

「と、申されますと・・・?」

「いや何、今回の礼じゃ。我の力なら其方が求めている事の力になれよう。なんせ我の分野だからの。」

「?」

「深く考えんで良い。いるのか?いらないのか?」

「ほ!本当に宝玉の謎を解く力を貸していただけるなら!ください!」

「うむ。では其方に我の加護を授ける。少し痛いぞ・・・。」


ポピンの右目に激痛が走る―――


「うわぁぁっ!!」


右目を押さえ、前のめりになり痛みを(こら)える。

そして数秒で痛みは(おさま)った。


「それから奴らにも何か褒美を与えねばな・・・・。加護は・・もう有るのか」

「加護とは・・・・なんでしょうか?」

「小さな事は気にするな。さぁ我の力をこれから先、存分に使うが良い。また会う日があろうしな。」

「あの・・・お名前を!・・・・」

「いずれ分かるだろう。其方の仲間達は我が助けてやる。安心せい。さぁ、戻るが良い」

「それから蛇の事は頼んだぞ、我の眷属で有るし、其方を手助けするであろう―――」



・・・・・・【(めつ)


その言葉と同時に、ただ真っ白い空間がさらに白くなる気がした。


(二人が動いたのなら、我も動かぬ訳にはいかまいて・・・)





突然、神々しい光が採掘場をを包み込む・・・・・

ついさっきまで悠真を威嚇していた大蛇が苦しみもがいている。

メティラ達も意識を戻し、その光景を見つめている。


邪悪な霧が薄れ、消滅していく。祓われた魂が黄泉と戻るはずが、その魂は途中で祠の中へ吸い込まれ、扉が閉められた。


「なんだ・・?助かったのか?」

「悠真・・・どうなったんだ?」

「解らない。でも助かったみたいだな。」


祠の前には地面にペタンと座り込んで呆然としているポピンが居た。

互いを支え合い、三人はポピンの元へ歩みを進める。


『ポピン!!』


ポピンの様子を伺うが、どこも怪我はないようだ。

まだ呆然としているポピンは皆に呼ばれ(ハッ)となる。


「蛇!蛇はどこ?」

「蛇?悪霊になった蛇のことか?それはなぜか突然(はら)われて魂がその祠の中―――」


そこまで聞くとポピンは慌てて祠の扉を開ける。

そこには頭の大きさぐらいの真っ白い卵があった。


「これは私が連れて帰らなきゃならないの。誰にも傷つけさせない・・・・。」



◇◇◇◇◇◇



「悠真様!皆!大丈夫なの!?」


家に着くや否や、春と功の侍女【カルラ】が皆の怪我をみて慌てている。

悠真も功も、ここまでボロボロになるのが初めてだった。

メティラは今までにも何度か経験したことがあるらしく、すべき事はわかっているようだった。


「皆、今は止血薬や痛止薬で誤魔化しているが、結構な怪我だし今から国家治癒院へ行くぞ。」

「そうだな・・・」


道ゆく人が、ボロボロの三人をチラチラ見て通り過ぎる。

悠真は春に、功はカルラに、メティラはポピンに支えられて、治癒院までゆっくり歩いた。


「全員!三日間入院!無茶しすぎじゃ!」

「・・・・」


来院したのがメティラ達だと聞いて、院長が自ら診察にやってきたのだ。


「肋骨骨折に裂傷、全身打撲・・・三人にとも無茶しおって!心配―――」

「メティラ!!!!」


セイラが眉間に皺を寄せてやってきた。


「メティラちゃん!またまた無茶して怪我したと聞きましたわ!本当にもうっ!!!」

「ごめんなさい、お姉様・・・。」

「まぁっ!綺麗な顔に傷をつけて!」

「セイラ様!それは私どもが必ず、後を残さず治療いたしますゆえ・・・」

「当然です院長!私は貴方を信頼しておりますの!今回もよろしく頼みますわよ!」

「はっ、お任せくださいまし。」


小さくなっているメティラ。次に矛先は悠真達に向かった。


「悠真も!なんですかその傷だらけの体は!」

「すいません・・・」

「功も無茶なことをっ!」

「はい・・・・」

「しばらくは三人とも大人しくしてくださいまし!では、院長頼みましたよ!」


そう言って帰っていった。忙しい公務の間にわざわざ来てくれたのだろう。厳しい言葉も本当に心配してくれているからこそだ。


「ねぇポピン、その卵はなんなの?」

「これ?これは蛇にょ!」

「え」


春の血の気が引く。


「へ、蛇って・・・蛇?」

「そうにょ!にょろにょろにょ!」

「にょが多い・・・なんでそんな、蛇の卵なんて持って帰ってきたの?それに大きすぎない!?」

「にょ?春は何言ってる?蛇は大きいにょん。この家位あるにょ!」

「・・・いやいゃ、それ(かえ)ったら家潰れるよ・・・」

「大丈夫にょ!」


ポピンは軽く捻挫(ねんざ)をしただけだと、治癒院には行かず家にいた。春とのやり取りから逃げ、地下の研究室にある自分の部屋にこもった。


「大丈夫とは言ったものの・・・どうなるかわかんないにょ。」


卵をベッドの上にそっと置き撫でるのだが、どうして良いのかわからず布団をかけた。そして研究室へ向かい沢山の鉱石を見ながら不思議な出来事を思い出していた。


(あの場所、声は夢じゃないにょん・・・蛇をよろしくと言われて、祠になかったはずの卵があったにょ。「それに悠真は蛇の魂が祠に入った。」って言った・・・だからあの卵は蛇で間違いないにょ。)


鉱石をひとつ手にとり見つめる・・・


(じゃあ、加護。声の人の力とはなんなにょ――)


ジ、ジジッ


突然、右目だけ焦点(しょうてん)が合わない。

ポピンは慌てて右目を押さえた。


「な、なんなの・・・」


そっと手を動かして視界を戻した。


「えっ?なに、これ・・・」


目に見える物が色を放っている。しかしそれらはボヤけて見えて気持ち悪く、乗り物酔いを思い出させた。

ポピンは誰に言われたでもなく、左目を瞑った。

今度ははっきり見えた。

物質が放つ光が―――



□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日

色々不思議な事が起こったが、無事に帰ってきた。

無事ではないか。お姉様にまた心配をかけてしまった。

それより、悠真の傷だらけの素敵な・・・じゃなくて痛々しい体をみて、日頃から鍛えている証拠だと感じた。


それにしてもポピンの卵はまさかあの蛇?


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