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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア国

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25/31

第二十四話 第三廃坑にて

「ラティ、疲れた顔してどうした?」

「お姉様に一晩中、猫だけの話を聞かされてな・・・もぅだめだ。」

「なんだそりゃ?」

「考えてみろ、明け方まで猫の肉球の匂いがどうとか、(ひげ)が敏感だとか永遠に聞かされるんだそ!」

「はぁ・・・」

「ともかくもう駄目だ・・・レゾナスが・・・」

「じゃあ悠真に抱きついてレゾナス分けてもらったらいいにょ」

「なっ!そ、そんな事・・・出来るのか!?」

「きっと元気になるにょ!」

「なら、悠真!」


メティラが悠真に近づく。

今にも飛びかかろうとジワジワ詰め寄る・・・


「今なら春も買い物に出てるから大丈夫にょ!」

「で、でわ・・・レゾナス補充〜っ!」


メティラは叫ぶと共に悠真の腕にしがみついた。

少し顔を赤らめて、悠真の腕に寄り添う。


「ちょっ、なにしてんだ!」

「ちょっとぐらい分けてくれても良いでわないか・・・」

「じゃあ私ももらうにょん!」


今度はポピンが反対側の腕にしがみついた。


「なんだこの状況・・・」


その頃買い物中の春は寒けを感じていた。


「なんか・・・家に大きな虫が二匹いる予感・・・」



◇◇◇◇◇◇



「さて、そろそろ向かおうか。」


悠真、春、メティラ、功、ポピン、コンは屋上にいた。

屋上にはレグナントの発着場が用意されていて、いつの間にか格納庫には一機のレグナントがあった。


「じゃあ皆、気をつけてね。」

「留守番たのんだにょ!春」


今回、春は自ら留守番をしていると言った。

万氷樹の山脈まんひょうじゅのさんみゃくの時、私はなにも出来なかった。悠真の邪魔になっていたりしないか・・・

そう考えての事だった―――


東へ約30km。岩だらけの山が見えてきた。

廃坑への入口は簡単な木の扉がつけられていた。


「すでに雰囲気(ふいんき)あるなぁ、確実になんかいるだろ。」

「余計な事言うな功!本当に出てるから。」

「なにが来てもこのメティラが退治してやる!」

「にょん。」


ギイィ・・・


扉を開けると、ただ真っ暗な通路に吸い込まれそうだった。

少し進めば、何かの羽ばたく音、ジメッとした空気。

地面にはトロッコのレールが残り、作業で使われていたのかドロドロの手袋や布。土嚢や木箱が残ったままだった。


「にょーっ!コウモリにょ!血吸われるにょ!」

「何にもしてこないよ、俺たちに驚いて外へ逃げただけだ。」

「光をつけるぞ。」


ラティスは肩から斜めがけした(カバン)からランタンを取り出して火をつけだ。ランタンの灯りに目が慣れ見えたのは、ずっと奥に伸びる通路、()き出しの岩肌。

そして、胴体から大量の長い脚が生え、無数の触覚(しょっかく)が伸び、ガラス玉の様な目玉が黒光した小さな生き物があちらこちらに・・・


『ギャアァアーッ!!』


その恐ろしい(気持ち悪い?)姿に全員が発狂し奇声をあげる!

駆け足で奥へ進む悠真達。


「な、なんなにょ!あのへんな虫!」

「あれは湿った洞窟とかによくいる奴だ!」

「春居なくてよかったにょ!気絶してるかもにょ」

「いゃ、あいつは(気持ち悪っ!)て手で払いのける・・・」

「やっぱり春が最強にょん・・・」


メティラは皆を忘れて暴走中である。

流石の騎士姫様も虫には弱かったようだ。


「メティラ待ってーっ! 一人で行くと危ないにょ!それより暗くて見えないにょ〜っ!」


みんな駆け足で奥へと進む・・・。


「ぎゃーっ!」

「それは特大ミミズだな」

「にょぉぉぉ!」

「それはモグラだ」

「ぎゃぁああああ!」

「それは三百本足ムカデだな」


「・・・・・おいお前らちょっと待て!」


走り過ぎて息を切らした功が皆を呼び止める。

それぞれその場で足を止めた。


「お前らこれじゃ探索になってねぇよ!入口からギャーギャー言って走っただけじゃねーかっ!」

「あ・・・・。」

「お前らちゃんとしろよぉぉ・・・・・走るのしんどいだよ!」


皆、功に言われてハッとなるが、まだ300m程しか走っていないのに息切れしている功に少し呆れた。

そして本音は走るのが嫌だと言うこともわかった。


「悪い悪い、その通りだな。ここからちゃんとしよう。」

「そうだな功、すまなかった。私としたことが虫ごときに――」


メティラの肩に()が止まった。

メティラは白目を()いて意識を失いかけ、ヨロめいた。

悠真はそれを支えた。


「あーもぅ!面倒くさい!」


 神々の残響よ

 我が進む暗闇(くらやみ)

 清らかな光で

 照らしたまへ・・・


 残響術 【無暗(むあん)



 功を中心にして、洞窟内が明るく照らされて行く・・・・。

 強い光を受け、虫達も土の中や岩の隙間に隠れた。


「早く探索するぞ!まったく・・・」


『はいっ!功殿!』


久々に頼りになった功を(おだ)てながら皆は隅々をよく観察しながら前へ進む。

数十メートル置きに採掘場所なのか、部屋のようになった空間があった。

その中も全て見回ることにした。

どの採掘場所の岩肌にもツルハシで削った後が綺麗な模様になっている。

きっと丁寧な仕事をする坑夫達だったのだろう。

そして少しではあるが、砂粒ぐらいの海青石(かいせいせき)欠片(かけら)なのか、キラキラした鉱石が残っていた。


「全く、行方不明者が出るような気はしないが・・・・」

「同感だ。これはただの廃坑だ。」


入口から800mは進んだだろうか、そこから雰囲気が少し変わった。

さっきまでとは違い、傷んだ木枠・歪んだレール・砕けた壁。

何かが()いずった後・・・・。


「これか?依頼書に書いていた(巨大生物が()ったような後)てのは。」

「そうだろうな、功!探索してくれ。」

「はいよ」


  神々の残響よ 

  我が眼となりて

  隠れしものを映したまえ

  神響術 【(さく)


「・・・・・」

「どうだ?」

「うーん、これといって特に()からないな。」


功は目を閉じ集中して脳裏に浮かぶ廃坑内を見ている。

残響が漂い感じる場所は空間。 無いところは岩や地面などの無機物(むきぶつ)

生物が入れば残響が震えるのだ。


「?」


一瞬、残響が震えた気がした。

ここからまだ500mは先の空洞だった。


「わからない・・・・残響が薄いってのもあるが。とりあえず、まだ先に何かいるかもしれない。」

「よし、慎重に行こう。」

「海青石はどっこだぁ〜!ふんふふんふ〜んっ」

「どうにも締まらねぇな・・・・」


鼻歌を歌いながら行進するポピンだが、鼻はきく。

ここまで1km程の間にも今までは見つかっていなかった行方不明者の持ち物と思われる指輪やシーカープレートを何個か発見している。

どれも壁の隙間や、天井の支え木に引っ掛かっていたり、死角になっている場所だった。

そして悠真は一つ気になる事があった。


「なぁ功。所々にあるのって・・・」

「あぁ、この書き方から見て結界印だな。」

「鉱山に結界印が必要なのか?」

「それはおそらくあれにょん!掘った穴が崩れても大丈夫なようにだにょ。」

「あぁ、騎士で洞窟を調べたり、野営に使ったりする時も、安全のため結界印は書くぞ。」

「そうなのか・・・・・でも」


悠真は何か違和感を覚えたが、共和国の二人がそう言うならと気にするのをやめた。

それからも特に変わったこともなく、前へ進み功が言った500m地点へ着いた。


「おかしいな・・・ここからまだ先があるのに、行き止まりだとは。」


そこで道は終わっていた。

突き当たった壁には大きな結界印が書かれていた。


「まだ先はあるように見えているのか?」

「あぁ・・・・そうなんだが・・・。」

「では手前にあった採掘場の方から回れる道があって見落としたとかでは?」

「えーっ、そんなのなかったにょん!」

「ふむ、どうしたものか。功、サボりすぎて術の精度落ちたんじゃないか?」


「いや・・・・君たち・・・。」

「?」

「さっきから地面がちょっと揺れたりしてるの気づいてないの・・・・?」

「地震なのかっ!」

「ここで地震きたらやばいにょ!」


功は目の前にある術印から目を()らさずにさっきから話している。

額には、あきらかに体を動かして出る物とは違う汗をかいていた。


「なぁ、悠真・・・・。これはやばいな・・・。」

「何がだ?地震がか?」

「いや・・・・その術印。結界じゃないぞ・・・。」


悠真達は一斉に壁の術印を見た。


「それ・・・封印だ・・・・しかもひび割れて効果が消滅している・・・。」


皆、功が呟いた瞬間、数メートル吹き飛ばされていた。

体を打ちつけたのと土煙を吸ったせいで立ち上がれず、咳こむ。

ようやく煙も落ち着き、視界が開けた。


「シュルルゥゥ・・・・・」


壁が吹き飛び、さっきまでの数倍はありそうな広い採掘場に変わっていた。

あちらこちらには人骨が転がり、異様な光景を(えが)いていた。

そして―――

(うろこ)に守られた長く真っ白な体。赤く大きな目と大きな口から出る先が割れた紫の舌。

巨大な白蛇がそこにいた。


「みんな・・・大丈夫かっ・・・」

「私は大丈夫だ・・・。」

「俺も大丈夫だ、左腕をやられちまったがな・・・・」


功の左袖から血が流れていた。

羽織は裂け、切り口が見えている・・・。


「な、なんなの!あのおっきい蛇わっ!」

「とりあえず下がれ!功!本当にいけるのか!?」

「私が止血薬を持っている!大丈夫だ!!」


前には戸愚呂(とぐろ)を巻いて獲物を見つけた大蛇が今にも飛びかかろうとしている。

(行方不明者の犯人はこいつか・・・)


「ポピンは出来るだけ下がって物影に隠れろ!メティラ!功の治療を優先で!終わったらこっちを頼む!」

「わかった悠真!」


メティラとポピンが功に駆け寄りメティラが薬を出している間にポピンが傷口を水で流していた。

大丈夫とは言っても結構な深さの裂傷だった。


「これは縫合が必要だが・・・・すまない、持ってきていない。」

「にょん・・・・何か代わりになるものは!」

「ははは、大丈夫だって。その止血薬ってのは痛み止めにもなるのか?」

「あぁ、少しだが麻酔の効果はあるぞ」

「わかった、それより先にだ・・・ポピン、俺の鞄から護符をニ枚出してくれないか。」

「わかったにょ」


取り出した護符を渡す。 立ち上がり護符を掲げ言霊(ことだま)を唱える。


 神々の残響よ

 

 御身(おんみ)の守護のため

 命削らんとす我らに

 その力を分与たまへ

 そして偉大なる力を

 貸与(かしあたえ)たまへ


 神響術 【神威(しんい)】【荒御魂(あらみたま)


唱え終わると護符を悠真に向けて投げる。

投げられた護符は悠真の頭上で燃え尽きると同じに全身を光が包んだ。

神響術によって身体能力が大幅に向上、戦闘能力も向上した。


「悪いな、功!」

「しばらく俺は戦線離脱だからな!」

「おおよ!」

「さて、メティラは悠真の手伝いに行ってやってくれ。メティにもさっきの強化術かけてるから」

「腕はいいのか?」

「あぁ、薬だけくれたら後は荒治療で大丈夫だ。見せれるもんじゃ無いしな」

「?わかった、ポピン頼んだぞ」

「にょ!」

「ポピン、えぐいの大丈夫?」

「にょ?」

「残響術【焔灯火(ほむらともしび)】」


そう唱えた功の指先に炎が出た。


「さ、手術の時間だ。」


功は歯を食いしばり、その炎を傷口にあて、肉を焼き付けていく・・・・。

ジュウゥと肉と血が焼ける音と匂い・・・・さすがにポピンは目をそらした。


「ははは・・・・ポピン、俺たちにとっちゃ普通のことだ・・・。」

「・・・・・」


悠真は尻尾で攻撃してくる白蛇を刀で弾き、斬撃を入れるも、鱗の硬さで刃が通らないでいた。

しかし、白蛇の攻撃は俊敏(しゅんびん)だが、悠真からの攻撃に対しての反応は鈍かった。

(こいつひょっとして白化種(はっかしゅ)か?だとしたら・・・。)


「皆、今から目眩しをするから目を(つぶ)れよ! メティ、ぶっ放せるか?」

「ああ!まかしてくれ!」

「よし、あいつの口の中を狙ってくれ!コン!メティに力を貸してやってくれ!」

「きゅうっ!」


コンはメティラの頭に乗っかり集中し始めメティラも、レゾナスアーツを(まと)い唱え始めた。

悠真は護符を準備し、作戦に入る。


「いくぞ!」


 神々の残響よ


 神の光を我が手に

 悪霊を塞ぐ霧を我が元に

 光の幕を張り封じたまへ


 残響術 【白閃(はくせん)輝霧(きり)―】



あたり一面が一瞬で霧に覆われ、巨大な白蛇の周りの霧が(まばゆ)く発光した!

白蛇は驚き大きな口を開き叫ぶ!


「今だメティ!!」


  神よ

  我が(つるぎ)と共鳴し

  最大の光の咆哮(ほうこう)(はな)ちたまえ

  レゾナスアーツ・・・


  【ルクス・ドミナ(光の覇声)


莫大な光の帯が大蛇目掛けてレイピアから放たれる・・・。

白蛇に向けられた【ルクス・ドミナ】は鱗のない口から体を(つらぬ)いた。

体半分が砕け散った大蛇はその場に倒れた。


「やったなメティ!しかもすごい技だな!!」

「そうだろう!ううくしいだろ?」


「まだだ!!」


功の叫び声に慌てて大蛇の方を見る二人。倒した白蛇の後に術印が浮かんでいる。

術印が光を放ち、そこに現れたのは【(ほこら)】だった。


―――ドクンッ!!


全員の心臓が一度大きく鳴って止まった気がした・・・・。

それはその祠が発する恐ろしく禍々しい物による影響だった。


「こ、これは・・・・」

「すごい禍々しい気配だ・・・・・。」


両手で抱え、ガクガク震え出すポピン。


「あ、あそこ・・・・祠の中・・・・・」

「祠の中?・・・・・・・!!!」


そこにあったのは海青石と【黒の宝玉】だった。


「あの宝玉が私を・・・」

「おぃポピン、待て!何処に行くつもりだ!」

「あるが私を、研究員を苦しめたの・・・だから壊さなきゃ・・・」

「おい!悠真!ポピンの様子が変だ!」


ポピンの目は瞳孔が開き、ブツブツ呟きながら歩き出す。

悠真の声にも反応せず祠だけを見つめて。

それはまるで黒の宝玉に呼び寄せられているように―――




□□□□□ラティの日記□□□□□

◯月×日

悠真にレゾナスを分けて貰った

とっても暖かくて・・・優しいレゾナス・・・

たまらん・・・


それのおかげか、レゾナスアーツも最高の出力だった!

また・・・くっつこう


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