第二十三話 初依頼を受ける
受付の中央に大きな扉があり、そこから一人の大男が現れた。
その大男を見るや否や、シーカーの皆がおとなしくなった。
「なにを騒いでいるんだ?」
片目が潰れた彼の名前は【ガンツ】 レゾナス・シーカーズの本部長を務め、共和国に二人しか存在しない【エクシード級】へ到達した怪物である。
「これはガンツ殿!」
「なんだ、メティラ嬢じゃないか、どうした?」
「実はこの二人をシーカー登録してもらおうとおもってな。」
ガンツは鋭い片目で悠真と功を見る。
そして満面の笑みで言った。
「これはおもしれぇガキがきたな!! じゃあさっきのレゾナスはこいつらが?」
「あぁ、皇国の術者だ。」
「中へ入れっ!それからこいつらに刃を向けた奴ら!お前らしばらく出禁だ。」
◇◇◇◇◇◇
シーカーズ本部の奥には上階へ繋がっていた。
三階の本部長室へ案内された悠真達三人はガンツにあれやこれや質問されていた。シーカー登録には関係ない、ガンツの探究心を満たすための質問を。
「で、話に聞く【神響術】てのはレゾナスアーツみたいに体に纏うのか??」
「体にも纏うが、あくまでも防御のため、主は護符に残響を集めて放出するんです。」
悠真は一枚護符を取り出してガンツに渡した。
ガンツは大興奮だ。
「へぇ!この紙に!?術を使ったらこの護符はどうなる?」
「燃え尽きます。」
「なるほどねぇ・・・まさしく神を響かし行使する。神秘的な事だ・・・」
「ガンツ殿、悠真達は我々のレゾナスアーツの様な技もあるんですよ!それに強い・・・(本当は美しぃ・・・)」
メティラまで興奮して話し出し、二人で盛り上がりはじめた。
「あの、シーカー登録は・・・」
「おぉ!悪いな!盛り上がってしまった。勿論登録してやるさ!」
「お手数をかける、ガンツ殿」
「なに言ってる、メティラ嬢!こんな面白い奴らに会わせてくれてこっちも感謝だ!俺の最大の権力を使って【マスター】で登録してやる!それによ・・・」
「?」
「シーカーズのランクなんてもなぁよ、一般の奴らを評価する為だけのもんだ。俺やメティラ嬢、そしてそっちの二人にしてみりゃ意味のねぇもんだよ」
「と言うのは?」
「レゾナスアーツを本気で扱えるやつなんて一握りさ。シーカーズランクと実力は別ってことだ。」
「・・・・」
「こっちの国での内容なんて言っただけじゃわかんねぇよな・・・ともかく、騎士としてのランクの方が重要だってことだな。マスターランクなんざ、騎士の初級に毛が生えたぐらいさ」
ガンツはニィッと笑みを悠真達にむけて、席を外した。
わかるような、分からないような・・・・。要はメティラのパラディン級やガンツのエクシード級と呼ばれる騎士ランクがすごいんだって事だな・・・多分。
五分程でヨラさんを連れて戻ってくると、登録書類一式を渡された。
「さぁ、それに記入して俺が判子おしたらそれで終わりだ。後は下に行ってプレート登録してくれ。」
「わかりました。」
「で、わざわざシーカーなんぞにならなくても良いんじゃないのか?」
それについてはメティラが詳しく説明してくれた。
「ガハハハハ!ポピンの嬢ちゃんかっ!?そりゃ傑作だ!」
「ポピンには困ったものだ。」
「まぁそう言うなメティラ嬢、それがあの子の良いとこじゃねーか! そうだな、それじゃあ・・・」
ガンツは自分の机の後ろの巨大な書類棚から一冊の綴りを持ってきた。ペラペラ捲って止めた書類を指でベチっと弾いた。
「あったあった!これに行ってみろ、海青石の廃坑だ。」
「ガンツ殿、助かる!」
「なぁに気にすんな。採掘はとうの昔に終わったが、奥で何人も行方不明になってな。今じゃ誰も近寄らねぇ。だからついでにシーカーズ本部からの依頼として、行方不明者の探索もつけといてやらぁ!後は好きにすれば良いさ!」
ガンツはまた悠真達を見てニカッと笑う。
豪快な人物で荒さはあるが、憎めない。
頼りになる男とは、このような人物を指すのだろう。
帰ってきたら、また話をする事を約束して部屋をあとにし、受付へ向かう。
「ヨラさん、お願いします。」
「はい、悠真様。では、このプレートに血を一滴お願いします。」
言われた通りに渡された針で指先を突き、血を一滴プレートに垂らした。
するとプレートは蒼白く輝き、元の姿に戻った。 血を垂らしたのは、悠真の残響をプレートに記憶させる為らしい。
3×5cm程の大きさで左角に紐を通せるよう加工されたそのプレートの表面には【レゾナス・シーカーズ】の紋章が付いている。
中央に巨大な結晶、上下に三個づつの小さな結晶が埋め込まれ、両翼が今にも飛び立とうと存在感を出している。
「悠真様と功様は本部長命令により、マスター登録となります。中央の大きな結晶が赤色に変色しましたが、それが印です。」
「本来なら緑から始める事になるのだ。実は私も・・・・・」
メティラが首にぶら下げたチェーンを引っ張り、手に取って見せてきた。
そこには、悠真達が今手にした物と同じプレートがあった。
「実は私もマスターシーカーだったりするのだ」
「・・・・・・・」
メティラは勝ち誇った顔でプレートを悠真達に見せている。
(じゃぁ・・・・俺たち登録する必要なかったんじゃね・・・・?)
そんなことをよそに、周りはザワザワしている。
「お、おい!マスタークラスが三人だってよ・・・。」
「メティラ様はともかく、あの弱そうな二人まで・・・・・。」
「特例だってよ・・・・」
「でも確かにさっきのレゾナスやばかったよな。」
「あぁ、圧迫死するかと思ったよ。」
「ガンツさんが認めたんだろ?本当にすごいんだな・・・。」
変に目立っている気がしてならない。
さっきみたいに無駄に絡まれるのも面倒だし、早く依頼を受けたい悠真だが・・・。
「お前達!どうだ!悠真達はすごいだろう!?」
「おおぉ!メティラ様もここまで仰るんだ!アルスティアに新たな強者が誕生だ!」
『うぉおぉー!!メティラ様ー! 悠真! 功!・・・・・』
なぜか歓声が上がり出して、英雄のように讃えてくれている・・・。
メティラは満足そうに手をあげて応えている。
だめだこれは・・・・。
「とりあえず、早く依頼を受けようぜ、メティラ!」
「そうだったな!ヨラ殿頼めるか?」
「はい、ではこちらへ。」
そう言って今度は受付の右側にある部屋に案内された。
ここは重要な案件やシーカーズからの指名依頼などの時に使われる部屋らしい。
「それでは本部長よりの指示でこの依頼書をお渡しいたします。」
悠真は受け取り、メティラと功も左右から受け取った依頼証を覗く。
指名依頼書
東側 第三の廃坑 探索依頼
二年前よりシーカー及び不法侵入したとされる一般人がこの廃坑にて行方不明となっている。
原因は未だ分からず、未解決のままである。
よって貴殿らに上記内容の不明者の捜索、情報収集をシーカーズ本部よりの指名依頼とする。
達成条件 不明者の発見又は有用な情報収集
達成報酬 不明者の発見、救助成功 5000レナ
有用な情報収集 3000レナ
共有事項 過去の探索において
◯血痕などは見当たらない。
◯武器や防具は残されていた事もある。
◯廃坑の奥から獣のような鳴き声
◯巨大な生物が這ったような跡
「なんか・・・結構な場所だな。」
「あぁ、この問題は国家騎士団で対処すべきかと話にも上がっている。」
「そんな場所に行くのかよぉ・・・俺家で留守番でもいいか?」
功の事は放っておき、悠真とメティラは受諾した。
シーカーズ本部を後にして、家路に着く。
「さて、メティラは行くのか?」
「当然だ!もはや私もこの悠真隊の一員だ!行くに決まっている!」
「悠真隊って・・・なんかダサいな。」
「ダサいとはなんだ功!ダサいのか!?」
「俺はダサいと言うより恥ずかしい。」
「・・・・別名を考えねばな。」
◇◇◇◇◇◇
「お帰りなさい、皆。」
「ただいま春、変わったことは無かったか?」
「ええ、でもメティに手紙。お城の従者さんが持ってきたよ」
「私にか、ありがとう」
手紙を読みながらメティラの血の気が引いていくのがよくわかった。
これは・・・・あれだ。
「悠真・・・出発は明後日にしてくれないか・・・・。」
「セイラ様か?」
「あぁ・・・・おそらく今から完全に捕まる。最悪だ。」
「ははは、それは仕方ないな第三王姫様、出発はそれに合わせるから行ってこい。」
「すまない・・・・では失礼する。」
肩がガックリと落ちて前屈みにトボトボ歩くメティラが少しだけかわいそうに見えた。
「功はもちろんいくよな?」
「行きたくない。」
「いい年したおっさんが、わがまま言うな。」
「そうですよ功様。悠真様みたいなやる気ないおっさんが行こうとしてるのに。」
「春?やかましいぞ?なんだって?」
悠真が春に文句を言おうとした時、今のドアを叩く音がした。
「失礼致します。功様はお戻りになられて――」
「やぁカルラ、どうしたんだ?」
現れたのはポピンが紹介して雇われた功の侍女【カルラ】だった。年齢は二十九歳、メガネをかけた生真面目そうな侍女であった。
「功様、お帰りになられたらまずは家に戻ってくださいと申しましたが?」
「あ、はい・・・ごめんなさい。」
「ご夕食はどうされますか?食べられるのですか?」
「かしこまりました、今から作りますので三十分ほどお待ちください。」
「いいよいいよ、慌てないから。」
「いいえ、私が慌ててるんです。」
「なんで?」
「なんでと言われましたら、本日私用がございますので早めにお暇させて頂きたいと今朝申し上げましたが?」
「あ・・・。」
「ですので早く夕食をお召し上がりいただきたいのです。」
「カルラさん、私が作るからいいよ、もう上がったら?」
「いえ、春さん。これは私の仕事ですから終わらせます。ありがとうございます。」
「いいのに、悠真ん家で食べてくのに」
「人様のご夕食に毎回毎回お邪魔してどうするんです!さぁ、早くお戻りくださいませ!」
「はい、わかりました・・・。」
功はカルラに連れられて戻って行った。
いつの間にか現れたポピンはさっきカルラが言っていた(人様のご夕食に毎回毎回お邪魔してどうするんです!)は通用しないみたいだ。
「なかなかの侍女ですね、カルラさんは・・・」
「あぁ・・・今日ほど春でよかったと思った事はない。」
「今日だけですか・・・・ほぉ」
「いやいやいや・・・・」
「さ、ご飯食べましょ!」
□□□□□ラティの日記□□□□□
◯月×日
お姉様と約束していたことを忘れていた・・・。
お城に着くとかなりご立腹のお姉様が待っていた。
夜遅くまでお話を聞かされた。
その内容は・・・・猫の話だけだった・・・。
しんどかった・・。




