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神々の残響  作者: 蒼凪 悠
アルスティア共和国

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第十一話 第三王姫の正体は

エルディア号はゆっくりと旋回しながら高度を下げて駐機場へ向かっている。

大勢の人達が作業をしているのが見えた。

数人がこちらに向けて光る何かをくるくる回している。


「あれは何をしているんだ?」

「地上から、着陸する場所を教えてくれてるにょん」


砂煙をあげて誘導された場所へ着陸するエルディア号。

広い駐機場にはたくさんの神翔船(しんしょうせん)が留まっている。

奥にある巨大な箱型の建物の中にはエルディア号と同じようなサイズの船もある。


「あそこでエルディア級の二番艦を造船中なのだ」

「二番艦・・・こんな大きな船がもう一つあるのか!」

「ああ、二番艦は設計、製造の功績から艦名を『オスリア号』と命名することが決まっているんだ」

「それって」

「あぁ、ポピンの名だな」

「恥ずかしいから嫌だって言ったんだけど、王様が聞かないにょん!」

「いやいや、すごい事だよ。」


この国は馬、馬車での移動手段もまだあるらしいが、主としてこのレグナントと呼ばれる飛行船を使うらしい。 


 ◯中型機 ー レイズ級レイズ号含め三機 百五十人乗り

 ◯小型機 ー テレル級エリーテレル号含め五機 五十人乗り

 ◯超小型機カイト級 一号から十号 十人乗り

 ◯一般機多数


ポピンはこれだけのレグナント(神翔船)が駐機していると説明してくれた。

神翔船が飛び交う世界・・・・いや、共和国にいるのだからレグナントと呼ぼう。悠真(ゆうま)は大興奮である。

レグナントの説明が終わって誘導される方へ進んでいくと、五十歳くらいのビシッと張りのある衣装を纏った男性が出迎えてくれる。


「ようこそおいでくださいました!初めまして、私アルスティア国の国王補佐を務めております(クダム)と申します。以後、お見知り置きを。」

「クダムさん、ただいま戻ったにょん!」

「これはこれはポピン殿、お帰りなさいませ。相変わらずにょんですか?みっともないですよ。」

「にょん・・・・」


しょぼんとしたポピンがこちらへやって来て、ラティに抱きつく。


「あいつ苦手にょん・・・」


皇国(こうこく)使節団(しせつだん)がゾロゾロと歩き出す。

警備員に誘導されて超小型のレグナント(カイト級)が留まった方へ向かう。


「ここからお城まではあのレグナントで行くにょん!」

「悠真と功は私達と行動を共にしてくれ」


カイト級は大樹の街(たいじゅのまち)で載せてもらったレグナントの一回り大きいサイズというだけで、他は変わりないようだ。

もう見慣れた蒼白い光が走り出し、瑞穂皇国(みずほこうこく)使節団はアルスティア城へ向かった。


 そびえ立つ巨大で真っ白な建造物

 無数にある三角錐(さんかくすい)の青い屋根

 正方形の敷地の角に建つ巨大な塔


どれもこれも瑞穂皇国とは規模が違う。

城への長く大きな二十段の階段を登り切ると丸い噴水、綺麗な花壇。さらに十段の階段を登った先に巨大な門、前に立つ騎士が数名。 

(しんどっ!) 

悠真は心の中で叫んでいた。

使節団と悠真達は広い待合室へ通され、ポピン達といったんわかれる。


「なあ功、残響やっぱりあるよな」

「確かに感じるが、薄くないか?」


一時間ほど待っただろうか、謁見(えっけん)の間へ

左右の壁に武装した騎士が等間隔で、その前に沢山の人が並んでいる。

(この国の偉い人達なんだろうな・・・・)

玉座(ぎょくざ)には髭を蓄えた割腹のよい初老の男性、アルスティア国王がすでに着席している。

右側には鮮やかなドレスと宝飾品に身を包んだ四名の女性、左側には男性が三名並んでいた。


「瑞穂皇国の使節団の方々、よくぞ参られた。何百年ぶりかの国交を祝おうぞ!」


国王の後、瑞穂側の代表からの挨拶が続き、謁見は終わった。国交の決まり事等の堅苦しい話は使節団のお仕事。

俺には関係ないと蒼真達はさっさと待合室に戻って、ポピンを待つことにした。街を案内してくれるのだ。


「お待たせにょん!!」

「お疲れポピン。メティは来ないのか?」

「メティは今取り込み中なんで、後から合流するよ!」


タイル張りの建物が整列した綺麗な街。 通りに植えられた木も、街灯も見事なまで等間隔に並んでいる。

皇国のように屋台が通りに出ているのではなく、それぞれ建物として店を構えている。


「こうして見てしまうと、なんか俺たちの国って・・・・」

「それ以上言うな悠真。俺はもう既に帰りたくない!」

「ははは、さすが功だな。お前は子供の時から皇国の田舎くさいのが嫌いだったもんな。そりゃこんなの見たら帰る気なくなるよな」

「もう俺はこっちに住む! そして嫁さんを見つける!」

「何とも気の早い事で。」


途中で飲み物を売っているお店へ入る。ここでラティと待ち合わせをしているらしい。


「悠真達、何飲むにょ?」

「何飲むって・・・・お茶?」

「俺も・・・・・・」

「お茶・・・・はあるけど折角なんだから他の飲むにょん!」

「ポピンは何を飲むんだ?」

「私はラテにょん」

「・・・・・ラテとは?!」


ほろ苦くまろやかな(ラテ)を初めて口にした2人の目は輝いていた。

こんなものが世の中にあるなんて!

お茶と乳が基本の皇国で育った2人には未知の味だった。


「ラテでそこまで感動されたら、これからどうするにょん・・・」

「待たせた」


メティがやってきた。いつも来ている騎士服とは違う軽装備、二十五歳の女性らしさがある姿だった。

ポピンがラテの流れを説明して笑っている。

うん、メティはいつものキリッとした表情より笑った方がいい。


「メティ、そう言えば皇国を出る日、俺の残響術(ざんきょうじゅつ)がどうとか言ってたの教えてくれないか?」

「あぁ、そうだな。悠真の(天昇斬華(てんしょうざんか))。あの技は我々の国のランクで言えば私と同じパラディン級、もしくはそれ以上の力を持っている。」

「なっ!メティと同じ力?!」

「あぁ、しかもだ。ここからが一番重要なんだ。あのランクの技を使って平然としていた。」

「そうだな。天昇斬華はあの時に初めて使った術で多少の疲れは出たが、同等の術を普段から使ってるしな。」

「同等の術を・・・・」

「俺たちでいう(中級残響術)でしかない。確かに中級を支える者は限られてはいるが、一回術を使ってもう無理だとはならない。」

「実は私もあの時、不思議なことがあった。私が使った|イグニス・ヴォルテクス《渦炎斬》だが、普段は一回使えばしばらくは動けない。」

「・・・でもあの時はまだ余裕そうに見えたが?」

「そうなんだ。まだ余裕があったんだ。あんなことは初めてだったんだ。」

「それがどうしてか考えて見たにょん。」

「それで?」

「たどり着いた仮説はひとつだけ。レゾナス(残響)にょん」

「俺たちが思ったのと同じことだな。功も感じていた。(残響(レゾナス))が薄いと。」

「この薄い中で強力な術を使ったら残響(レゾナス)を一気に放出する反動でしばらく動けない。だが密度の濃い皇国では大丈夫だった。当然の理屈だな。」

「だから一度、演習場で試してもらいたいのだ。」

「あぁいいぜ、俺たちも知りたいことだ。」

「さぁ、まだ行ってないところがあるなら行こう」

「お土産でもみるにょ?」


再び周りをキョロキョロしながら歩いていると、服屋があった。綺麗なドレスが売っている。

(春に買っていってやろうかな・・・・)

出発する時の春の顔が思い浮かび、罪悪感と帰った時の事を想像する・・・・

(うん!土産は盛大に買って帰ろう!)


「ここ寄ってもいいか?」

「にょ?さては春ちゃんにだにょ?」

「あぁ、帰った時に地獄を見るか、少し地獄を見るか、ちょっと地獄を見るか・・・・・は機嫌をどう取れるかによるっ!」

「どっちみち地獄じゃねぇか・・・いいよなぁお前は。」

「まぁそう言うなよ、お前も秋花に買えばいいじゃないか」

「誰が結婚決まってるやつにドレス買うかよ!てか何も買わねぇよ!あーっ!思い出させんなよ!」


みんなで功を見て笑う。

本当に数百年会ったことのない人同士なのか?

文化も技術も違うが・・・・こうして笑っていると何ら違いを感じないのだ。


「そう言えば悠真、お城にいた王姫様達綺麗だったよな。王様の横は王妃様だろうから、その横の第一王姫様かな?美人だったな」

「おお!そうだにょん。王妃様から順に第一から第三王姫様達にょん!」

「確かに綺麗な方々だったな。となると俺は第三王姫様が好みだな。こんな田舎者が失礼な話だがな」


メティラがビクッ!となり顔が真っ赤になる。ポピンはニヤニヤしている。


「べ、別に失礼ではないぞ・・・・」

「そっか?」

「誰も聞いてないって悠真。確かにお前は優しい笑顔で時に凛とした表情をする女性好きだもんなぁ。あのお姫様なんて確かにお前の好みど真ん中だな」

「そ、そそそうなのか?悠真・・・・」

「ははっ、何だか恥ずかしいな。でもまぁ、可愛かったよな。」

「だろうと思ったよ。あのお姫様みたいなドレス買ってやれよ、春にさ。」

「春にあのお姫様ほどの可憐さはないから似合わんぞ多分・・・」

「そ、それほど可憐だったか・・・?」


ポピンは大笑いして、お腹を抱えている。ラティスは沸騰したかのように顔が真っ赤だ。


「しかし買ってやりたくてもあれだ功、皇国の金しか持ってないぞ」

「そうだな・・・。」

「春殿になら、私のドレスを差し上げても――」

「なぁポピンっ、お金貸してく・・・・・」

「待て待てぇぇい!!!! ふふ」

「・・・・・・?」

「この流れでメティを放置するな!二人とも酷いにょ・・・・ふふふ」


笑いながら啖呵(たんか)をきるポピン

メティラはしゃがみ込んで顔を隠している。


「いい加減にするにゃ二人とも!ここにいらっしゃるお方をどなたと心得るっ!」

「メティラだな」


「違う!このお方こそ、アルスティア国 第三王姫 ラティス・アルスティ 様だ!」

「もぅ・・・・バラさないでよぉポピン」

「うふふふふ・・・・あはははっ!バラさないでよってバレバレなこと言ってるにょ!」

「ええええ・・・・・・・・恥ずかしいぃ・・・」


キョトンとする二人。話を頭整理中。


「えぇぇぇぇっ!!!!」



どこまで鈍感なのやら。




◇◇◇◇◇『ラティの日記』◇◇◇◇◇

◯月×日

 1週間ぶりに国に帰ってきたのに。

今日は人生で一番恥ずかしい日だった。

ポピンが私の正体をバラした・・・

悠真達は本当に気付いていなかったみたいだ。

まさかあそこまで気付いていないとは思わなかった。

悠真は・・・

私が好みだと言った。

第三王姫の私への感想だとは分かっている。

しかも気づいていなかったし。

分かっているのだが・・・

可愛いと言われた。

可憐だと言われた。

私はどうしたらいいんだ。

今日は眠れない。

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