第十二話 穢人
第三王姫とバレて、散々褒められてまだ照れるメティラ。
「びっくりしたにょ!?数人しか知らないから内緒なにょん!」
「お、驚かしてすまない」
「……」
「どうしたのだ?」
「メティが第三王姫?そんな冗談はいらないぞ!なぁ功!」
「ほんとほんと、あんな可憐で美しい方と一緒にするのは流石に駄目んじゃねぇか?」
「ポピンも冗談きついぞ、確かにラティも可愛いけど王姫様と一緒にしたら駄目だぞ!」
「かわっ!可愛いぃ!?」
メティラはまた顔を真っ赤にする。
「信じてないにょん!?」
「どっちでもいいよ。王姫だろうが騎士だろうがラティスはラティスだ。俺の大切な友の一人だ。」
「悠真…」
その言葉はメティラに刺さった。
王姫と言う肩書きは、どの世界、どの時代でも重たいものだ。
「さぁ、もう城に戻るんだろ?行こうぜ!」
四人はメティラの話で盛り上がりながら、アルスティア城へ向かっていた。
ラテを飲んだ店まで戻ってきた所で、店の路地から数人が慌てた様子で走ってくる。
「穢人だぁー!」
メティラは一瞬で勇ましい騎士の顔に戻る。
ポピンは逃げてきた一人を捕まえていた。
「どこに出たにょ!?」
「この路地裏のゴミ捨て場の前だ!倒れていた奴に声をかけたら、突然穢人になったんだ!」
「わかった!早く逃げるにょ!」
「行くぞポピン!すまないが、悠真達も来てくれるか?!」
「あぁ勿論だ。」
路地に入り角を曲がるとすぐに禍々しい気配を感じる。
それは皇国でも見る姿、黒く煙のようで目が白く口が赤い悪霊だが。
「いたにょ!」
「レゾナスアーツ!」
メティラが斬りかかる。彼女の武器はレイピアだが、レゾナスを纏う事で斬撃も可能になる様だ。
しかし、簡単に弾かれてしまう。何度も体勢を直してぶつかって行く。
「くそっ!やはり効かないかっ!」
「なんで大樹の街で使った技をしないんだっ!?」
「街が壊れてしまう!!」
「そんな事言ってる場合かっ!?」
悠真と功も加勢する。
「功、【縛】やってくれ!」
「わかった!」
功は腰にぶら下げた革鞄より護符を取り出す。
――神々の残響よ
我が手となりて
悪霊を捕らえたまへ
神響術 【縛】
穢人に光の縄が巻きつき、動きを封じた。
功が術を発動させると同じく、護符を手に悠真も言霊を唱える。
――神々の残響よ
我らを滅ぼさんとする
者を天より裁きたまへ――
神響術【雷鳴】
縛られた穢人の頭上に激しい雷鳴と共に光の矢が刺さる。
穢人の動きが一瞬とまるが何の効果も与えられていない。
「全然効いてないにょん!!」
「くそっ…」
穢人は光の縄を簡単に引きちぎった。
「功。やはり残響が弱いよな」
「あぁ、いつもの威力じゃねぇ」
「じゃあ刀で行ってみるわ、もう一度【縛】たのむ!」
功は言霊を再び唱える
「メティ!功が術を発動させたら、同時に斬りかかろぅ!」
「わかった! レゾナスアーツ!」
――神々の残響よ
我が刃の炎となりて
悪しき者を切り裂く力を与えたまへ――
神響技 【炎響刃】
悠真の刀身に炎が纏う。
再び光の縄に動きを封じられた穢人に悠真とメティラが斬りかかる。
まばゆい光と共に、左手右足が消えた。
「くそっ!まだ祓えねのかょ!」
「悠真!大丈夫かっ!」
「大丈夫だ!メティこそ息あがってるんじゃないか!?」
「何を!まだまだ!」
「悠真、メティ…俺は無理」
功は片膝を付き、肩で息をしている。
「メティ、いつもはどう対処してるんだ?」
「ひたすら数で押し切っている!」
「嘘だろ…残響が薄すぎる…なら…」
悠真は革鞄に手を突っこむ。
握りしめたのは蒼真に渡された宝玉【無の神霊石】だった。
「メティ!少しでいいから時間稼ぎたのむ!」
「任されたっ!」
悠真は神霊石を握った手で、人差し指と中指を揃え集中する。
胸の前で【招神印】を書き言霊を唱える。
――数多の神々よ
宝玉に宿りし残響を
我が魂へ与えたまへ――
握った神霊石が光と風を放ち、悠真の体に纏わりそのまま渦となり煙を撒く。
どこからか響くシャランッと言う鈴の音
『ピシッ』
神霊石が割れ光が当たりを包む………ポンッ!
「あ、あれっ!」
「おい悠真!こんな時に何遊んでんだよっ!」
「悠真!もう限界だっ!まだかっ!?」
体力回復中の功と、穢人が動かないよう必死でレイピアを打ち込んでいたメティラが叫ぶ! 焦る悠真。
「きゅううぅ〜」
足元から何かが鳴く声。
「なっ!? なんだお前っ!?」
「きゅうぅ〜」
そこには体長30cm程、白毛に金の模様が入った狐がいた。
応戦中のメティラを除き、功とポピンは目を見開いて狐を見た。
狐の首には割れたはずの神霊石がぶら下がっている。
「悪いな狐!今危ないから向こう行っててくれっ!」
悠真は狐を抱き、後ろ側へ逃し再び護符を手にする。
もう一度炎響刃の言霊を唱えはじめると、狐が頭の上に乗った。
「なんだ!邪魔だ狐!」
「きゅうぅぅう!!」
鳴き声と共に狐が白銀に光を放ち、悠真の体中に残響が吸収されていく。
眩しい光に皆が目を塞ぐ。
――神々の残響よ
我が刃の炎となりて
悪しき者を切り裂く力を与えたまへ――
先程とは比べ物にならない威力の炎が刀身に纏っている。
悠真の体も薄ら光に包まれていた。
「さぁ待たせたな!安らかに逝きな!!」
残響術 【炎響刃】
穢人との間合いを一気に詰め横一閃。
真っ赤な炎に焼かれた穢人はそのあと光となり天へ昇る。
チンッ…
刀を納めた悠真は深く一息つく。
「悠真やったにょん! それで!?」
「悠真!見事な太刀筋であったぞ!それで!?」
「うん?」
『この可愛い生き物はなんなんだあぁっ!!』
女子二人が声を合わせて狐に駆け寄ってきた。
もふもふってやつが好きなのは、どの時代も変わらない。
触りたいけどプライドが邪魔している功がそわそわしている。
「メティラあの悪霊、いゃ穢人って言うんだったか?」
「ああ、我々は穢人と呼ぶ」
「なら呼んで字の如くか?」
「あれは元々は人間だ」
「やっぱりか」
「やっぱりとは?」
「皇国では獣が悪霊化するが、形はなぜか人型に近い。猪退治の時は一匹が悪霊になり、他の猪を引き寄せた。そして退治した他の猪の霊魂を吸収して巨大化した」
「今の穢人は大きさが人間だからそう思ったと?」
「あぁ、そう思った」
「今わかっている事は、怨みをもった者が生きたま穢人になったり、無惨な死に方をした者が死体から穢人になるだけにょん。」
「そしてこの穢人が半年前から異常な数なんだ」
「増えた理由はまだ分からないにょん」
「そうか…だがな、お前らの言葉と表情が合ってないんだよ!」
「な、なにがにょん…はぁっはぁっ」
「そうだぞ悠真!一人だけずるいっ!」
「悠真、ちょっとかしてみろ」
三人共デレデレの顔をして、悠真の頭に乗っかる狐を見ていた。
コンをしつこい女子二人に預けて帰路に着く。
アルスティア城に着くとポピンとメティラはどこかへ向かった。
悠真と功は用意された部屋でくつろいでいた。
悠真の横で丸くなっている狐に功が少しづつ近づいて来ている。
「なぁ功」
「はいっ!」
「なんだよそれっ! バレバレなんだよ、狐に近づいてるの」
「いいじゃねーかよっ」
「まぁ良いんだけどよ。それよりこの狐さぁ」
コンコンッ
「どうそ」
「おじゃまするにょ〜んっ!」
ノックと同時に飛び込んでくるポピンと後に続く美しいドレスを着た可憐な女性。
「第三王姫様っ!」
悠真と功は慌てて片膝を付く。
大笑いしているポピン。
「王姫様。瑞璃悠真と申しましす。この度は皇国との国交樹立を感謝したします。」
「瑞石功と申します。第三王姫様が我々などに、どの様な御用でございましょうか?」
「ぶぁはははははっ!」
大爆笑のポピン。二人はまだ片膝を付き頭を下げた状態だ。
「二人にその様に扱ってもらうのも悪くないな…」
礼儀も忘れて聞き覚えのあるその声に顔を上げてしまった二人。
そこには、顔を真っ赤にして目をそらしている美しい王姫がいた。
「メティラ!?」
「あはははははっ!これで信じるにょ!?」
□□□□□メティの日記□□□□□
◯月×日
やっと私が第三王姫だと信じてくれた。
そんなに疑わなくったって良いのに!
でも悠真の術はどれを見ても綺麗だ。
惚れ惚れしてしまう。
そんな事より!
悠真がもふもふを連れてきた!
悠真が独り占めはずるい!
あぁ、あのシッポを抱きしめて
眠りにつきたい




