第十三話 可能性
街中で穢人を祓った二日後、悠真達四人の姿はアルスティア騎士団の演習場にあった。
メティラ達が悠真と功に共和国へ来て欲しいと願った理由の一つ、レゾナスアーツの強化だ。
昨日は丸一日、四人とポピンの属する研究機関の研究者達、皇国側の研究者達で話し合いが行われた。
まずは皇国と共和国の呼び方の違いを検証した。
(皇国) (アルスティア共和国)
残響 レゾナス
神響術 レゾナスアーツ
神響技 レゾナスアーツ
神霊石 レゾナイト
神巫海 レゾナス海
神翔船 レグナント
皇国は炎や雷など、残響を使い超常現象を起こす事を神響術と呼び、刀などの物理攻撃を神響技と分けて呼ぶ。
しかしアルスティアでは同じレゾナスアーツ。この話の中で仮説がたった。
残響が濃い皇国では神響術が継承、進化したが物理攻撃である神響技はある一定以上の者しかまともに使えない。
残響が薄いアルスティアでは神響術はあまり威力がなく、身体と剣に纏わせて威力を上げる神響技が進化した。
しかも、騎士になるべく訓練を積んだものしか使えない。
「仮説と言うか、そうなんだろうな」
「あぁ、私もそれが正しいと思う」
「実際体感しちまったしな。そうなんだろうよ」
「で、悠真が考える方法を試すわけだにょ?」
悠真が手に乗せた朱、翠色の神霊石をみせた。
ポピンの目が輝いて前のめりになる。
「なんなの!二色ある!これはなにっ!?どう違うの?全部レゾナイトなの?どうしたら作れるの!?」
「待て待てポピン!」
質問攻めのポピンを鎮める。
さすが研究者と言うべきか?
ただ初めて見たものに興味津々の子供と例えるべきか。
でもこの好奇心が優秀な研究者のあかしなんだろうな。
「これはどうやって作るのかとかはわからない。俺たちも受け継ぐ物で、たくさん数がある訳じゃない」
「俺も持ってるぞ」
功も革鞄から無色を含めた三色の神霊石を取り出した。
「にょおぉ! 功は三色もってるの!?なんで?まだ他に色はあるの?山とか掘ったらでてくるの!?」
「ポピン、俺も三色だぞ。俺の無色はあそこだ」
「きゅっ!」
悠真の指刺す方にはメティラの頭の上に乗った狐がいた。
狐はドヤ顔で胸を張り、尻尾を振っている。
「さっきから静かだと思ったにょん!」
自分の顔の前に垂れ下がった真っ白なもふもふに、顔を擦り付けているメティラ。
「でたにょ変態メティ!でもメティラはどうでも良いにょ! 狐さんがレゾナイトってどう言うことなのっ!」
「おそらくだが本来、無色の神霊石は残響の増幅に使う。だからこの間の穢人の戦いの際、足らない残響を得ようと俺は考えた」
「狐さんが現れる前にょ!?」
「あぁ、そしてあいつが現れ俺はあいつから残響を貰った」
「じゃあ、あの狐さんはなんなの?」
「功は分かるか?」
悠真は分かっている様だが、功にも確認したかった。
それは小さい頃からの友だからこそわかるのではないかと悠真は思ったのかも知れない。
自分の答えが半信半疑なので、同意が欲しかったのかも知れない。
「あぁ、あの残響の感じはお前ん家の右側だろ?」
「そう思うか?確信をもてたよ、ありがとな」
「大騒ぎしてる秀真様と蒼真様が目に浮かぶよまったく」
「どう言う事にょ!?」
「あれは俺ん家の鳥居の狛狐だよ、右側の」
ポピンはポカンとしている。
確かにすぐ理解できる内容ではない。メティラはちょっとこっちが気になり始めた。
「全くわかんないにょ」
「まぁ、また俺ん家に来た時に詳しく話すよ。」
「にょ…結局、狐さんはなんにょ?」
「簡単に言えば狛狐とは神様の使い。なんでか実体化してるあの狐はそうだな…神獣ってとこか?」
「にょおぉおっ!」
狐はメティラから飛び降り、悠真の頭に乗っかった。
メティラはしょぼくれている。
「へへっ、ありがとな。助けてくれて」
「きゅう!」
「とりあえず、神霊石を使えば残響を増幅できるのは確かだ」
「私がそれをできるのか?」
やっと騎士の態度に戻ったメティラが聞いてくる。
彼女の変わり様も最近激しい。
「メティも残響術を使うんだから、大丈夫だろ。試しに俺達の方法を教えるから試してくれ」
「わかった、よろしく頼む」
「功、無色の神霊石を貸してやってくれ」
功はメティラに神霊石を渡し、悠真は招神印と言霊を教える。
さすが上位級の騎士、覚えは早い。
「さぁ、よく集中してやってみてくれ」
「よしっ!」
メティラが目を瞑り意識を集中する。
教わった通り、神霊石を握り中指と人差し指を合わせ言霊を唱えながら、胸の前で【招神印】を書きしめす。
――数多の神々よ
宝玉に宿りし残響を
我が魂へ与えたまへ――
メティラの周りの残響が揺れ、神霊石に込めてある残響に吸収されてゆく。
そして握った神霊石が光と風を放ち、メティラの体に纏わりつきそのまま渦となり煙を撒く。
「できたな」
「上々だ」
「おおっ!おおぉっ!!これは凄い!」
「メティすごいにょん!」
試しに何か発動させて、いつもとの違いを確認してみたらどうかと悠真は思ったが、ここは騎士の演習場。
さほど広さも無いし街が壊れてしまう。
「レゾナスアーツッ!」
「お、おい!お前らそこ退け!巻き込まれるぞ!功!結界!」
ため息を吐きながら、悠真と功は護符をだし言霊を唱える。
――神々の神響よ
我らが盾となりて
子らを守りたまへ――
神響術 【日輪】
二重に演習場に防御結界がはられだ。
神よ
我が剣に終焉の炎を宿したまえ
レゾナスアーツ・・・
【|イグニス・ヴォルテクス《渦炎斬》】
轟音と共に演習場が凄まじい炎に包まれ爆破する。
退避していた騎士達は、初めてみる凄まじい威力のレゾナスアーツに驚愕している。
「ゆ、悠真!これは凄い!この威力なら先日の穢人程度ならひとたまりもないな!」
「あぁ、すごいよ」
「びっくりにょ…」
「どうだお前達!私はまた進化したぞっ!」
『おぉっー!メティラ様さすがですっ!』
「試しに悠真もなにか見せてくれないか?」
「それはいいんだけどメティ。もう神霊石の残響が残ってないから無理だ」
「使い捨てなんだにょ!?」
「いゃ、残響がなくなれば、家の神棚に供えて吸収されるのを待つんだ」
「なるほどにょ」
「きゅうぅっ!」
「ん?どうした狐?」
「ききゅっ!」
「へへっ、そうなのか?それはすごいな」
「なっ!悠真は狐と話せるにょっ!?」
「なんとなくだか、なんかわかる」
「すごいにょ…」
「まぁ、こいつが残響を集めるからぶっ放せだってさ」
「おお!すごいのを見せてくれ!」
メティラは興奮している。
「じゃあ、ご期待に添いましてお見せしますよ」
「お前達、場外と場内の防御結界を起動しろっ」
「はっ!」
メティラの指示を受け、騎士が何かを触り演習場に二重の結界印が発動した。
ついでに功も、もう一度結界を発動させていた。
「悠真どうせなら激しいの見せてやれよ、国交記念だ!」
「ははは、そうだな功。メティラ、炎がいいか?雷がいいか?」
「炎が見たい!」
「わかったよ。ポピンは何か参考にしてくれよっ」
騎士達は一番遠い場所に退避し、異国から来た本物の神響術師の術を目に焼き付けようとしていた。
「さぁ、頼むぜ狐!いやお前の名前は【コン】だ。頼むぜコン」
「きゅっ!きゅううぅっー!」
コンが悠真の頭の上で意識を集中し、白銀の光を放つ。
それが悠真の体に吸収されていく。
「よしよし、良い残響だ!さすがコンだなっ!」
悠真は腰にぶら下げた革鞄から護符を取り出し、額の前にかがげて言霊を唱え始める。
――神々の残響よ
我が祈りを神へ捧げる
願わくば灼熱の炎となりて
悪霊を焼き尽くしたまへ
神響術 焔咲乱
それは攻撃の為の術とは思えない華やかさがあった。
幾万もの炎の花びらが川となって空をを流れる。
そして、一気に対象に向かって突き刺さる。
爆炎と共に花は光となって散っていった。
初めて見る者たち全員が無になり、目の前でおこった事が信じられないでいる。
しかし、例外が一人…メティラは恋する乙女かの如くうっとりしていた。
「美しい…」
騎士達が駆け寄ってくる。皆尊敬の眼差し。
「いや大したことないよ。所詮、中級神響術だしな」
「あれで中級なのですか!しかしあなた方の中級とは?先ほどの威力であればセイント級、もしかしたらエクシード級にも…」
「ともかくポピン」
「にょ?」
「わかっただろ?」
「にょん。神霊石に貯める。でもそれが無い。無いなら作れにょ!!」
「正解だ! 作れる可能性が少しでもあるなら、挑戦してみる価値はあるだろ?」
「にょん!もっと早くに気づくべきだったにょん。結構簡単な所に解決の鍵があったにょ」
「あぁ、でもこれは今までよりも簡単に祓う為の鍵だ。穢人が増えている事実を解決する鍵じゃない」
「まったくその通りにょ」
「大丈夫さ!みんなで考えようぜ!せっかく仲間になったんだ」
□□□□□メティの日記□□□□□
◯月×日
レゾナスを吸収して凄いレゾナスアーツを使えた!
悠真の教えがあってこそだ、感謝!
それにしても悠真の術かっこよかったなぁ
焔咲乱れ 術名も好きだな
惚れ惚れしてしまう。
この気持ちはいったい




