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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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墓参り

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

 大空洞に到着し、全員で長い階段を下る。以前この階段を下った時は、暗く何も見えなかったが、今はLED電球が空洞全体を明るく照らしていた。ここを発つ際、ルナは上から通電すれば明かりがつくようにしておいたらしい。どこまで想定していたかわからないが、このケースも考えていたのだろうか。

 

 前を歩くアルテミシアやマーニーの表情はわからない。二人ともリュックを背負い、どこかいつもより言葉少なに足を淡々と動かしている。何事もなく階段を降り、下から上を見上げると改めてその高さに驚きを感じる。この階段を数時間後には上らなくてはならない、そう思うと今から体が重くなりそうだった。

 

「帰る時はまたおんぶしてね」

「おう、任せろ」

 ツムギも同じことを考えたのだろう。グリムの手の甲をキュッと掴んでいる。


「ツカサも運ぶぞ?」

「いえ、自分で登ります」

 なるべく、自分で出来ることは自分でやりたい。アクシスノースを出発してからというもの、ほとんど運動できていないことを考えると、久々に体を動かす良い機会かもしれなかった。

 ルナの道案内ですぐに中央制御室にたどり着く。

 

「ルナ。この上に……、コンピュータルームがあったんですよね」

「はい」

 コンピュータルームは移民船ミラの運行管理AIだったルナの心臓部とも言える重要な場所だが、ミラが不時着した際、船の大部分と共にロストしていた。


「登ってもいいでしょうか」

「どうぞ」


「グリムさん、少し力を貸してもらえますか?」

「ああ」

 グリムが手をアルテミシアの足元に差し出す。アルテミシアは両足をグリムの手の上にそっと乗せると、グリムはゆっくりと腕を持ち上げた。中央制御室の天井より少し低いくらいの位置で止まり、アルテミシアは中央制御室の上に登る。マーニーとルナが続き、僕とツムギもその後に続いた。

 

「グリム、少し待っていてください」

「おう」

 当然中央制御室の上には今は何も無い。だが、かつてはここにルナが居たのだ。AIのルナのコンピュータルーム、つまり人間で言うところの脳、あるいは心臓。

 

「それは?」

 見ればマーニーがリュックから小さな花束を取り出していた。

 

「三人で作りました。生花だとすぐ枯れてしまうので金属製です。これはこれでオートマタっぽくていいかな、と」

「わー、綺麗!」

 

「今度ツムギさんにもアクセサリーを作ってあげますね」

「うん!」


「ちなみに素材はプラチナ、パラジウム、ロジウムです」

「白金族ですね。高かったんじゃないですか?」


「そう、ですね。それなりに高かったかもしれません」

 白金族の特徴は錆びにくく、価値が高い。小さな花が沢山咲いた三本の枝。それを包んでいるのは黒い布状のもの、おそらく紙ではなく炭素繊維だろう。

 

「その花は?」

「この花の名前はライラックといいまして、花言葉は友情、そして思い出です」

 そう言えば、先日図書室で植物図鑑に手を伸ばしていたマーニーを思い出す。

 

「あの時の植物図鑑は、これですか?」

「そうです。私達はそれなりに博識ですが、さすがに地球の植物まではカバーはできません。なので植物図鑑が図書室にあって助かりました」


「……プラチナ、パラジウム、ロジウム。仲の良い金属ですね」

「仲の良い、とても良い言い回しですね」

 

「特徴は……、3つの金属は必ずセットで採掘され、ひとつだけポツンと存在することがない。あとは、耐食性・耐熱性が非常に高い、でしたっけ」

「はい。ルナへのメッセージは『変わらぬ仲間』、『色褪せない思い出』、そして『錆びない友情』と言ったところでしょうか」

 必ずセットで採掘される金属を選んだのは『仲間』をイメージしたのだろう。強い耐食性・耐熱性を持つということは『錆びない』、そして『色褪せない』ということ。それに花言葉の『友情』、『思い出』を組み合わせたのだろう。とても、いいアイディアのように思えた。


「……あとは『一緒にいたかった』ですか」

「……」


「ずっと一緒の場所にいたのに、採掘された後は分離されてしまいますから……」

 最後にそう言ったのは、アルテミシアだ。何となく、小さいころは当たり前のようにずっと一緒だった双子の兄、タクミのことを思い出した。

 アルテミシアはリュックを降ろし、中から抱えるほどの十字架とそれを立てる土台を取り出す。中央制御室の中央に土台を置き十字架を立てると、それは墓になった。十字架にはごく短い文字が刻まれている。


『ルナ ここに眠る』

 この大空洞に眠る人たちと同じ文言だった。

 マーニーが花束を土台の上に置く。


 アルテミシアとマーニー、ルナは両手を胸の前で組み、併せて僕とツムギも手を合わせて頭を下げた。祈るという行為が、オートマタにとってどういう意味を成すのかはわからない。マーニーが前に言っていた『まずは形から』ということなのかもしれなかった。

 

 再びグリムに降ろしてもらった後、マーニーとアルテミシアは大空洞を少し見て回りたいということで、別行動になった。歩いていく方向から、舞台から階段を登った先にある石碑を見に行ったのだろう。ルナもついていくようだ。残りのメンバーで懐かしのキャンプに戻り、久しぶりにくつろいだ。あの時と大きく変わったのはグリムの腕が修理されていることくらいだ。

 

「さぁ、これで墓参りミッション完了ですね!」

 戻ってきたマーニーの威勢のいい声を皮切りに、みんなで帰る支度を始める。忘れ物はないかと舞台の上を歩いていると、中央制御室の入口脇に雪だるまのような形をした何かが置いてあることに気づく。砂でできているので砂だるまか。水で濡らした砂の団子を重ね、目と口は石でできていた。


「いなくなったルナちゃんも、これで寂しくないでしょ?」

 ツムギのアイディアもマーニーの花束に負けない、いいアイディアだと思った。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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