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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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深夜の訪問者

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

 夕飯と入浴を終え、コンパートメント車両の自分の部屋に戻る。

 机の上にはいくつかの論文が開かれ、コルクボードには沢山の付箋がピン留めされていた。いくつかの論文のうち、ある一つの論文を手にし目を走らせる。そこに記載された内容は赤道上に移動する街を作るというもので、非常に面白い内容だと思う。


 アリアの自転に合わせ、40km/hで移動する街。もし建設できれば北と南の中継基地としてだけでなく、赤道付近の採掘拠点としても多いに活躍してくれるだろう。問題はそれを建設できるだけの余力がアクシス政府にあるかどうか。おそらく相当な資源を投入する必要があるだろうし、それだけのメリットを示せるかどうか。


 ペラペラと紙をめくるのに夢中になっていると、気づけば随分と時間が経過していたようだ。


 コン、コン―――。

 控えめなノックの音。時計を見ると時刻は深夜0時を回っている。

 誰だろう、普段この時間に部屋を訪ねてくる人は居ない。


「どうぞ」

 扉の向こうに聞こえるよう少し大きめに返事をするが、扉は開かなかった。椅子から立ち上がり、扉を開けると廊下の薄明かりの中、ツムギが立っていた。枕を右手に抱え、頬にも涙の跡があった。


「ひっぐ……。ぐすっ………」

 左手で目から溢れた涙を拭う。


「ツムギ?」

 声をかけるとツムギはうめき声を発しながらしがみついてくる。


「怖い夢でも見た?」

 右手をツムギの頭に乗せ優しく撫でてやると、こくりと返事があった。


「そっか」

 どう、すればいいのだろう。よくわからなかったがこのままツムギを部屋に戻すのは気が引ける。


「今日は、一緒に寝ようか」

「うん」

 結果、しばらくはツムギの側で様子を見ていたほうが良いだろう、と判断する。


「ねぇ、ツカ兄」

 机の明かりを消して、ベッドに入る。しばらくするとツムギから声がかかった。視線を送ると、ツムギはいつの間にか体をこちらに向けている。


「ツカ兄はどこにも行かない?」

「………うん、どこにも行かない」

 長い目で見ればずっと一緒ということはないだろう。ツムギもそのうち中学、高校、大学と進学が必要になる。本人が希望すれば街の学校に通わせることになるだろうし、もっと言えば結婚でもすれば自然と離れていく。

 けれど、今は安心させてあげたい気持ちが強かった。


「ぜったい?」

「うん」

 そっか、とつぶやくツムギの声。


「どんな夢を?」

 聞かないほうがいいかと、思っていたが、思わず聞いてしまう。


 うーん、と頭をひねるツムギの仕草は少し父さんに似ていた。


「最初はね。

 お庭でバーベキューしてたの。パパとママと、タク兄とツカ兄、みんなで」

 地球の家には大きな庭があり、そこでよくバーベキューをしていた。母さんの焼きおにぎりが大人気でよく兄妹で奪い合いになったのを覚えている。


「でもね。

 だんだんタク兄がお葬式の時の写真みたいにお爺さんになって………、怖くなってパパとママの方に走っていったら、パパとママも骨みたいになっちゃって、最期にはさらさらーって砂みたいに崩れちゃって」

 ツムギの頭をそっと撫でてやる。


「怖くって何もできなくて………」

 ぐずっ、ツムギが鼻をすする。


「………それにね、気づいたらツカ兄の手も、しわしわになってて………、顔を上げたら………」

 それ以上は聞かなくても何となくわかった。多分僕も老けて骨になり、砂になったのだろう。


「ツムギ、手を出して」

 布団の中でツムギの小さな手を探し、両手で包む。


「しわしわ?」

「……しわしわじゃない」


「うん、僕は大丈夫だから安心して」

「……うん」


「さ、もう遅いしそろそろ寝よ。眠くなっちゃった」

「……おやすみなさい」

「おやすみ」

 ツムギのまぶたが閉じるのを見届けて、自分も目を閉じる。小さな寝息が聞こえてくるまで、そう時間はかからなかった。ツムギの寝息を聞きながら意識がゆっくりと沈んでいく―――。


◆ ◆ ◆


久しぶりにあの夢を見た。

―――いつかルナが説明してくれた『星の記憶』。


深い水の底から、ゆっくりと何かに引き上げられていく感覚。

体はうごかない、けれど不思議と怖くはなかった。


はるか上方に、光に照らされた波が揺れている。

少しずつ体は浮き上がり、光が近づくにつれ、水はだんだんとあたたかくなっていく―――。


あたたかい。

とてもあたたかい。


まるで湯船につかっているような?


◆ ◆ ◆


 目が覚めた。

 客車の窓は時間に合わせて開くようになっており、外に空が見えていた。つまり、朝だ。隣を見ると、ツムギが布団を鼻の下まで引き上げて、こちらをじっと見ていた。目が完全に覚めている。おそらく、僕より前から。


「………」

「………」


「……ごめんなさい」

 布団の中から、蚊の鳴くような声がした。布団の裾をめくれば、腰の辺りまでツムギのおねしょでびっしょり濡れてしまっていた。


「大丈夫」

 ツムギの頭にぽんと手を乗せる。


「タクミも8歳までおねしょしてたから」

「………ほんと?」


「ほんと」

 布団の縁から出ていたツムギの目の緊張が、少しだけ緩むのがわかった。布団を持ち上げようとすると、随分と重くなっている。


「ツカ兄は?」

「乾かすだけなら、干しておけばすぐ乾きそうだけど、丸洗いできるかなぁ?」


「ツカ兄はいつまでしてたの?」

「このままじゃ風邪引いちゃうから、さっさと着替えようか」


 ちょっと待ってて、とツムギに告げ服を着替えを済ます。ツムギを連れてツムギの部屋へ一緒に行き、着替えさせた。

「ねぇ、ツカ兄は?」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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