旅程
黄昏急行は完結しましたが、アフターストーリーを週一くらいの頻度で追加していこうと思います。
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ガタンゴトンと揺れる列車の中、朝食の後片付けが済んだリビングの座卓に、ルナがアリアの地図を広げる。アクシスサウスまでの補給地点を決め、そのルートを確認するためだ。地図上にはアクシスノースからアクシスサウスまでの地形と線路が描かれている。
「ルナ」
地図が広がるのを待っていたかのように、最初に声を発したのはカーペットの上に人魚座りをしていたアルテミシアだ。
「はい、何でしょう」
「行ってみたい場所があります」
アルテミシアの視線の先―――、座卓に広げられた地図の一点。赤道のすぐ北、小さく手書きでミラと書かれた場所を見つめながら、少し不安げな表情を浮かべている。
「私は―――、一度ミラに行ってみたい。
ダメ、でしょうか」
アルテミシアが自分の要望を口にするのを初めて聞いた。
ミラにはAIのルナだった一部が存在する。言ってみれば墓のようなものだ。
「私も行ってみたいです」
少し間をおいて、小さな身体で右手を高く挙げたのはマーニーだ。
「そう、ですね。
ダメではありません。
母さんも、二人に会いたいでしょうし」
『母さん』と呼ぶのももう慣れたのだろう。ルナの中で何かしら踏ん切りがついたのかもしれない。ミラで『母さん』と口に出した際、少し恥ずかしがっていたルナを思い出した。
ルナがペンで地図上のミラに小さく丸を描く。
「ではミラ経由、アクシスサウス行きですね」
決定を告げるルナの事務的な声。
「あのー、ルナ?」
再びマーニーの右手が挙がる。さっきよりも心持ち謙虚に。
「はい、何でしょうか」
「わたし、一度グランケイブに行ってみたい―――。
ダメ、でしょうか?」
さっきのアルテミシアと、寸分違わぬ抑揚だった。
「不思議ですね。
マーニーが言うとただの遊び目的だとすぐにわかります」
「酷いです。同じ言い回し、同じイントネーションなのに。
せめて何か理由があるのかくらい、聞いてくれてもいいと思います」
「何か理由があるんですか?」
「観光目的ですね!」
「ふふ、だと思いました。
グリム、エドガーにラビはどうですか?」
「いいんじゃないか?
大回りになるが特に急ぐ旅では無いし、何より深さ7000mの大渓谷に3kmの橋が架かっている様はなかなか見ものだと聞くしな」
「行ってみたい!」
「カァ」
止まり木のエドガーは羽づくろいの手も止めない。
「では、グランケイブも行きましょう」
ルナが赤丸を地図に追加する。
その後もみんなの行ってみたい場所が追加され、全ての赤丸を経由してアクシスサウスへ往く最終案をルナが計算し地図に反映する。
「ツカサさんにツムギさんもいいでしょうか?」
「はい、問題ありません」
「はーい」
出来上がったルートは観光というには少し重く、墓参りというには少し賑やかな、僕達らしい旅程だと思った。
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