人工植物プラント
はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。
本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。
https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896
北を目指して2ヶ月が経過した。
普通に考えればアクシスノースに到着していてもおかしくない頃合いだが、大空洞の扉をぶち抜いた機関車は痛みが酷く、スカートは大きく曲がり屋根も手すりもないひどい状況だった。そしてグリム。右腕なしで生活するのに随分と慣れたようだが、積載量は少なく、走っている列車からの乗り降りもできないままだ。最低でもグリムの右腕の応急修理と列車の点検はすべき、そうルナと結論を出し大空洞から一番近い地下の街に寄る。
そこは自分が救われてからすぐにエドガーが向かった街だった。ここでアクシスノースに連絡を送り、タクミからの手紙を受け取った場所。思えばあの手紙がなければツムギはここに居なかった。そう思うと途端に特別な場所に感じる。
結果、グリムの応急処置と列車の点検に1ヶ月半ほどかかった。なお、この街での個人的な最大の収穫は食料が手に入ったこと。
「これでちゃんとしたものが食べれますね」
「まだ苔のスープはありますよ?」
「いりません。
残りはすべてタクミへのお土産にします」
「ふふ」
そしてもう一つ。ツムギが誕生日を迎え6歳になった。街にあった素材でケーキを作り、みんなでお祝いをするとツムギはとても喜んでくれた。僕からのプレゼントはノートと鉛筆、消しゴム。ルナからは絵本や教科書が入ったタブレット、グリムからは机と椅子だった。
晴れて6歳になり教科書も手に入れたため、ルナがツムギの義務教育を開始すべきと提案し、僕もそれに同意した。客車にはグリムの作った机と椅子が置かれ、ツムギは毎日4時間、ルナ先生の元で勉強をしている。
「私だけ?
ツカ兄ずるくない?」
というので、自分もツムギの隣で一緒に思いついたことを計算したり、新しい論文のアイディアを考えてみたり、徒然なるままに思いついたことを紙に書き出したりしている。
そこから更に旅をして半月、大空洞を出発してから2か月が経過した頃。見慣れた砂と岩の大地に変化が起きた。
「緑が……」
大地に木が生え、草が生い茂っている。木の高さは低く、横に伸びているがそれはきっと風が強いせいだろう。人類の入植から約70年、その成果が見て取れたことにちょっとした感動を覚えた。そして更に半日が経つと、前方に異様な光景が見えてくる。一言で言えば巨大な緑のピラミッド。それが西から東まで、とても数を数えられないほど、視界の一面を埋め尽くしていた。
風を受けないようにリアルなピラミッドを上から押しつぶしたような形をした建造物、中には植物が光を浴びようと、ところ狭しと枝を伸ばしているのが見てとれる。
「ずっと気になってはいたんですが、僕達が宇宙服もなく普通に呼吸できているのは、テラフォーミングの成果だったんですね。
この光景、これはすごいな……」
「ふふ。その通りです。
ちなみに、あれをお作りになったのはツカサさんのお父様ですよ」
そういえば、家族の調査資料に父の論文が書いてあったことを思い出した。
「なんでしたっけ。たしかタウセチeにおける巨大人工植物プラントの……思い出せません」
「『タウセチeにおける巨大人工植物プラント構築と大気改善のプロセス設計、およびその評価』ですね。入植時、大気の酸素濃度は8%、二酸化炭素は4%を超えていましたので、当然外に出るには宇宙服が必要でした。
普通なら何百年、何千年とかかるテラフォーミングですが、今では地球とほぼ同じ、酸素濃度は20%、二酸化炭素は0.032%となり、外でも宇宙服無しで呼吸ができるようになっています。
たった70年でこの偉業を成し遂げた山城一博士はアリアの環境改善に尽力した第一人者として、アリア中等教育の歴史の教科書に名前が出てくるんですよ」
「父を知っていたんですか?」
「いえ、先日列車とグリムの修理で街に寄った際、ツムギさんのための教科書をダウンロードした時に知りました。
ずっと話したくてウズウズしていたんですが、どうせならこの景色をご覧になってから伝えたいと思いまして」
「なるほど、これは本当にすごい景色ですね」
「はい」
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