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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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フラッシュメモリ

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

 ルナに声を掛け、石碑のところまでついてきてもらった。データを渡すなら、なるべく二人きりのほうがいい気がしたからだ。


「ルナさん」


「はい」


「この後の予定ですが、僕達をアクシスノースに送っていってくれるという話でしたよね」


「はい、そうですね」


「その後、みんなはどうするんでしょうか?」


「そう、ですね。あまり考えていなかったのですが、また採掘のお仕事に戻るかと思います。ただ、列車が無事に修理できれば、の話しですが。

 どうかしましたか?」


「いえ、物語の中でマーニーは『三人で旅をしよう』と、そう言っていましたよね」

 一瞬、ルナの表情が曇る。


「はい」


「どうしてルナさんは、マーニーやアルテミシアに会いにいかないのかな、と思いまして」


「……そうですね。

 簡単な話なのですが、1つ目の理由は旅に出かける条件です。マーニーは『三人が無事にタウセチに着いたら』そう言ったのです。しかし、私のせいで三人の夢は叶いませんでした。そんな二人の夢を壊してしまった私が、今更どの面を下げて会いにいけばいいんでしょうか」


「それは……」


「それともう一つ、私は……。

 私は本当にルナと名乗って良いのでしょうか。確かに移民船ミラに対する完全なアクセス権を持ち、データを検索するノウハウもインデックスも持っていましたが、あの二人が約束したのはミラの運行管理AIのルナであって、オートマタの私ではない。凄まじいほどの演算処理速度も、膨大なメモリもなく、実際に二人と会話をしていたのも私ではない。ただ記憶をコピーされただけのオートマタに過ぎない。

 ……そう感じるのです」


「それだけですか?」


「だけ……。その言い方は、少し酷いです」


「すみません。でもどうしても、今聞いておきたいんです」

 真剣な顔でルナを見ると、やはり真剣な表情のルナと正面から視線が合った。

 1、2、3秒。


 根負けしたのはルナの方だった。


「……わかりました。

 こんなことを言うと笑われそうですが……」

 ルナは一旦、息を切った。覚悟を決めたように言葉を続ける。


「……私は怖いのです。

 マーニーとアルテミシアに会いに行って、もし……」


 両腕で胸を隠すようにするルナ。その姿はその言葉を声に出すのをためらっているかのように見えた。一度声に出してしまえば、何かが壊れてしまうのではないか。そんな様子に見えた。


「『あなたは私が約束したルナじゃない』……。

 そう言われたら?」

 瞳に涙は無い。だが、そう言ったルナは、今にも泣きそうな表情だった。声のトーンは上がり、声量も少し大きい。目が覚めて以降初めて聞くルナの声。


「きっと、私は壊れてしまう。

 正気ではいられない!」


 胸元で交差した両腕が力なく落ちる。

 俯くルナの姿。髪の隙間から微かに見える頬の歯車は停まっていた。


「……そう思うほどに怖いのです。

 ……AIの私がこんなことを思うのはおかしいですか?」


「……いいえ。全くおかしくありません」

 AIのルナは『二人のことを嫌いになりたくない』、そう言っていた。そしてオートマタのルナは『二人に拒否されるのが怖い』。前者は拒絶することを恐れ、後者は拒絶されることを恐れ……、マーニーとアルテミシアを想う二人の姿はどこか重なって見えた。

 ポケットに手を入れフラッシュメモリを取り出す。


「これをストレージルームで見つけました」


「それは?」


「探していた不時着時のログです。

 中には、ルナさんに宛てたメッセージも入っていました」


 誰からの、とは言わない。答えは一つしか無いのだから。


「……実は僕に宛てたメッセージも入ってまして」


「ツカサさんに……?」


「というよりこれを見つけた人に、ですね。

 これを見せるなら、ルナさんが『生きる意味』を見つけてからにしてほしい、そう言われました」


「生きる意味……」


「マーニーとアルテミシアに会いたい、三人で新しい世界を旅したい。

 合っていますか?」


 静かにゆっくりと、それでも力強くこくりと頷くルナ。


「中にはルナさんにとって辛い真実も含まれています。

 ですが、ルナさんは一人ではない。グリムさんやエドガー、ラビがついています。

 ついでに僕とツムギも。

 マーニーとアルテミシア、二人のことをこんなにも想えるルナさんならきっと大丈夫だと。そう判断しました」

 一歩、二歩、ルナに近づきフラッシュメモリを差し出す。


「どうぞ」

 弱々しい手つきでルナが受け取る。


「今、ここで見てもいいでしょうか?」


「一人のほうが良いのでは?

 というより僕がここにいても?」


「はい、居てくれたほうが安心します」


「わかりました」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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