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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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ポアロの推理

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

「少し歩いてきます」


「おう」

 キャンプを離れる。特に目的地はない。ただ、頭の整理をしたかっただけだった。

 グリムの話を聞いてまず思った事は、『犯人の気持ちを察する』という行為を試していない自分に対する呆れだった。プロファイリングはポアロの時代ならともかく、近年の推理もの、あるいは現実の捜査で極当たり前に行われる行為だったはずだ。


 整理してみる。

 AIのルナが、オートマタのルナに『不時着時の記憶をコピーしなかった』こと。これ自体は犯罪でもなんでもない。スーパーコンピュータ並みのストレージとメモリを持つAIの記憶を、一体のオートマタにすべて格納できるはずがないからだ。だから、AIのルナには取捨選択の必要があった。


 ―――だが、ここで一つ引っかかる。


 オートマタのルナが『私なら必ずコピーする』と言い切る最重要データ『不時着時のデータ』が、なぜコピーされていないのか?


 事件に置き換えて考えてみる。


「犯人は『AIのルナ』、被害者は『オートマタのルナ』……。

 事件は『不時着時のデータ』がコピーされていないこと、かな」


 僕達はこれまで証拠を探すホームズのように、ストレージルームやコンソールルームを探し回ってきた。結果は空振り。だがこれは、当然とも言える。何しろ優秀なAIであるオートマタのルナが70年かけて見つけられなかったものを、今更少し探したくらいで見つけられるはずもない。


 そこで、ポアロの思考に切り替えてみる。


 『AIのルナ』は何を考えて、『不時着時のデータ』をコピーしなかったのか。不時着の際は様々な演算処理を行っていたはずだ。処理の負荷でコピーが漏れた?あるいは遅れた?

 いや、スーパーコンピュータ並の演算装置を持つ彼女が、そんな単純なミスをするとは思えない。何しろ他のデータはすべて妥当に格納されているとオートマタのルナも言っていたのだから。


 つまり、答えは一つ。

 『AIのルナ』は、明確な意思を持って『オートマタのルナ』に不時着時のデータをコピーしなかったのだ。


 一方で『不時着時のデータ』は次代の人類にとって、喉から手が出るほど欲しいデータであることも『AIのルナ』は理解していたはず。言ってしまえば『不時着時のデータ』を残すことは彼女の『使命』の一つとも言える。つまり『コピーしないこと』よりも優先されるはずだ。


 ここまでを要約すると『AIのルナ』は『オートマタのルナ』に見つからないよう『不時着時のデータ』を隠した。ただし、そこは人類になら見つけられる場所……。


「ルナさんに見つからない場所で、人類なら見つけられる場所……?

 ……そんな場所、あるわけないか……」


 いや。場所を探そうとするのはホームズの推理だ。ポアロならどう考える?

 『AIのルナ』はどう考えた?『AIのルナ』は自分が隠したデータを、人類なら見つけられると確信していたはずだ……。


 ……そうか。


「つまり……。

 人類がデータを探す、そのごくありきたりな行動の中に鍵がある」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

グリムにヒントをもらったツカサが、これまでと違う方法で不時着時のログのありかを推理する回でした。次はいよいよ―――。


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よろしくお願いいたします。

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