ツカサ
はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。
本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。
https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896
「ツカサさん」
声をかけられて顔を上げる。
「はい」
「これを」
ルナが差し出したのは、一枚の紙だった。
「これは?」
「ツカサさんの事が書かれています。
……ツカサさんが目が覚めてから、エドガーに街に飛んでもらったのは覚えていますか?」
「はい」
「あの時にツカサさんの写真と一緒に身元を教えてほしいと要求していたんです。
アクシスノースには移民全員のデータベースがありますので……。
これはエドガーがタクミさんからの手紙を持ってきてくれた時に一緒に運んできてくれたものです。
先にタクミさんの手紙を開けてからしばらく、バタバタしてなかなか出せずにいたのですが……」
「なるほど」
すこし気まずい表情のルナ。頬の歯車は心なしかいつもより鈍く回転していた。
ルナから差し出された紙を受け取り、何が書かれているかを確かめる。
「調査依頼のあった写真の人物に関して、データベースの検索結果、および、そのご家族の近況を連絡致します。なお、山城司氏に関して本情報には享年が記載されていますが、これはミラ避難民捜索隊の解体に伴い、未救助者に対し失踪宣告が出されたためです。ご留意ください。
■ 基本情報
山城 司 (享年 15歳)男
国籍 日本
奈良県桜井市生まれ。
9 歳 大和インターナショナルスクール 高等部 卒業
10歳 スタンフォード大学 サステナビリティ学部 入学
12歳 スタンフォード大学 サステナビリティ学部 卒業
スタンフォード大学大学院 サステナビリティ研究科 博士課程 入学
15歳 スタンフォード大学大学院 サステナビリティ研究科 博士課程 修了 (Ph.D.取得)
タウセチe 移民船ミラに指定枠で搭乗。
ミラ不時着時、避難民となる。救助されず、失踪宣告により死亡と認定。享年15歳。
■ 家族構成
父 山城 一
指定枠でミラに搭乗。
専門は総合科学。「タウセチeにおける巨大人工植物プラント構築と大気改善のプロセス設計、およびその評価」を執筆。タウセチeの環境改善に貢献。
妻(山城 雪)と共にミラ避難民捜索隊に参加、活動の最中複数の論文を執筆。
享年88歳。
母 山城 雪
指定枠でミラに搭乗。
専門は社会心理学。政治学者 リリー・トウェインと共に「外惑星植民初期における中央集権体制から分権体制への移行モデル」を執筆。タウセチe 政治体制の構築に貢献。
夫(山城 一)と共にミラ避難民捜索隊に参加、活動の最中複数の論文を執筆。
享年97歳。
兄 山城 匠
指定推薦枠でミラに搭乗。
物理学者。アクシスノース 科学省勤務。定年退職済み。
妹 山城 紬
一般枠でミラに搭乗。
ミラ不時着時、避難民となる。救助されず、享年5歳」
「……15歳で博士。専門はサステナビリティ、父親と同じ総合科学か。
こいつは恐れ入った。どうりで頭が切れるわけだ」
気づけばグリムが後ろに立っていた。
「ですね」
ルナが微笑む。
「あの、指定枠というのは……」
「移民船には指定枠、指定推薦枠、一般枠がありました。
指定枠は政治や工学、農業、生物、環境、総合科学など、つまり、アリアへの入植において最も重要とされた分野のプロフェッショナル達です。言い換えれば、アリア到着後の各分野のリーダーとして期待されていた方々、といったところでしょうか。
ツカサさんならお分かりかもしれませんが、ツカサさんとお父様が専攻されていた総合科学、そしてお母様が専攻されていた社会心理学はどちらも移民というミッションにおいて最優先される学問です。
そして指定推薦枠は、指定枠で搭乗した方々から推薦を受けた方々ですね。指定枠の方が自分の作業の助手としてほしい人材を優先的に搭乗させるための枠です。ツカサさんのお兄さん、タクミさんはどなたかから推薦を受けたのでしょう。
そして、一般枠。一般から応募された方々の中から抽選で選ばれた方々、およびそのご家族がこの枠に入ります。指定枠、指定推薦枠の方のご家族も一般枠になりますね」
「僕とタクミは一般枠じゃなかったんですね」
「そのようですね。
といっても、枠の違いで待遇に差があったわけではありません。
強いて違いを挙げるとすれば、搭乗時のエリア分けくらいでしょうか。指定枠と指定推薦枠の方はエリアAに、一般枠の方はエリアBに割り振られていたはずです」
だからあの日、ツムギだけが別のエリアに割り振られ、一人で泣いていたのか。ミラに搭乗したあの日、泣き出したツムギを見かねて、無理を言ってエリアBに乗り換えたのを思い出す。
もしあの選択をしなければ、自分も今頃アクシスノースに居て、タクミと同じ年齢で、同じように生活していたかもしれない。誰かと結婚して幸せな家庭を築いていたかもしれない。
……ツムギを一人残して。
安堵の息を吐く。
「……よかった」
「ふふ、そうですね」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
もし「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ページ下部より【ブックマーク追加】や【☆☆☆☆☆】の評価(星)で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!
よろしくお願いいたします。




