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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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ラビ

 ツムギに抗アレルギー薬の注射を打ってから数時間、ルナの話では薬が効いてくる頃合いだ。付属のパッチテストを行ってさらに12時間後。アレルギー反応は出なかった。


「良かったですね」


「ええ、本当に」

 一時はどうなることかと思った。それを知ってか知らずか、いつの間にかツムギはラビと仲良くなり、ストレージルームの中を二人で駆け回っている。


「さ、ツムギさん、ラビ、外に出ましょう。

 といっても大きな洞窟の中なのですが」


「うん」

 中央制御室に入ってから2日後、無事大空洞に戻る事ができた。キャンプにはラビが拾ってきた大きな電球が灯っており、大空洞の全容を知ることができる。


「うわぁ、ひろーい。

 ……あれ、お墓?」


「うん」

 どこまでツムギに話すべきなのか、わからなかった。ミラが不時着した事、多くの方が亡くなった事、タクミの事、そして両親の事。まず話して通じるのか、仮に通じるとしても話をして良いのか。このような時、相談すべきは両親であるはずだが、相談すべき両親は既にいない。

 少し悩んだ末、アクシスノースに着けば人生経験が豊富なタクミがうまいこと説明してくれるだろう。そう考え、聞かれない限り自分からは話さないようにしよう、そう決めた。

 ステージからキャンプへ降りていくと、そこにはグリムとエドガーの姿があった。グリムは地面に腰を降ろし右膝を立てて座っており、エドガーはそんなグリムの側の岩の上に停まっている。


「おう、二人とも元気そうだな」

 グリムが左手を上げて挨拶をしてくる。


「ツムギ、こちらはグリムさん、あそこに停まっているのがエドガー」


「グリムさん……エドガー」

 体の大きなグリムを怖がるのではないかと思ったが、ツムギの様子を見ると嬉しそうだった。グリムが大きな体を起こし、立ち上がって左手を差し出す。ツムギは差し出された手のどの指を握ろうか少し悩んで、一番下の小指を握った。


「よろしくな」


「うん」

 パイプ椅子にツムギを座らせ、ツムギの隣に椅子を運んで腰を降ろす。辺りを見回すとキャンプには以前に比べ物資が山積みになっていた。きっと捜索隊の物資を運んできたのだろう。


「ツカ兄、ラビちゃんと探検に行っていい?」


「ルナさん、大丈夫ですかね?」


「ええ、探索は終わっているので、ステージの上や、2階、3階客席に上がらなければ危険はありません」

 ツムギの方に向き直る。


「ツムギ、あまりラビから離れないように。

 それと階段は上がったらダメ。落ちたら危ないから。

 あと、お墓の上は通らないように。

 わかった?」


「うん、わかった!

 ラビちゃん行こ!」

 ツムギとラビが走っていく。


「本当に大丈夫でしょうか」


「大丈夫でしょう。

 もともとラビは子守用のオートマタとして開発されたのでツムギさんくらいのお子さんの相手は得意なんです」


「子守用だったんですか」


「発売当初、とても話題になりまして。

 大きな耳にある音感センサーは離れた場所の音を正確に聞き取りますし、拾った音の解析能力も非常に高い。高性能ソナーが搭載されていて子供がどこにいるかすぐにわかりますし、強力な帰巣機能がついているので仮に100km先の街で子供と迷子になっても家まで無事に連れ帰ってくれます。中でもソナーは救助や探索、鉱山でも使用できるほど優秀。

 捜索隊の方でも導入が検討されたんだそうですよ」


「へぇ、すごいですね」


「ですね。私達も助けられています。

 ラビが居なければ、すべての箱を開けて中身を確認しなければなりませんから」


「そういえば、ルナさん、グリムさんは地球出身ですよね。

 エドガーとラビも地球出身なんですか?」


「エドガーは地球出身ですね。

 といっても、私もエドガーもアリア到着後に起動されているので地球の事はデータでしか知りませんが」


「エドガーはミラの中で働いてなかったんですか」


「はい。エドガーの仕事は空からの探索、そして地図の作成ですが、ミラの中で活躍する場所はありませんから」

 確かにミラの中には探索するエリアはないだろう。


「ラビだけはアリアで生産されたのでアリア出身と言って間違いないかと思います」


「ラビは……どうやって仲間になったんです?」

 購入したのか、という言葉が一瞬出そうになって引っ込めた。


「30年くらい前でしょうか。

 列車に置く家具でも無いかと、グリムと粗大ごみ置き場を歩いていた時にたまたま拾ったんです。交通事故にあってフレームが大きく歪み、まともに歩けなくなっていました。調べてみるとフレーム以外は無事だったので、持ち帰って修理したんです」


「粗大ごみ……」


「動かなくなったオートマタは回収業者に依頼してリユース、もしくはリサイクルが義務付けられています。なので、粗大ごみとして出すのは違法になりますね」

 ……リサイクルという言葉が気になった。人間は亡くなれば火葬され墓に入る。

 ではオートマタは?


「人間もオートマタも一緒ですよ」


「え?」


「オートマタは修理できない状況であれば、溶かして別のオートマタに再利用されることになります。

 一部、再利用できない部分、全体の10%~20%は廃棄されますが。

 一方で人間は死ぬと焼却され、そのほとんどは風に乗り、どこかで次の生命に再利用されます。

 一部、遺骨はお墓に残りますが、これも全体の10%ほどでしょう」


「つまり墓があるか無いか、その違いしかない」


「はい。更に言えばお墓を欲しがるオートマタはほとんど居ないでしょうね。

 私も特に欲しいと思いません」


「そう言われると……。

 あまり真剣に考えたことはありませんが、僕も死後にお墓がほしいとはあまり思いませんね」


「ふふ、一緒ですね」

 笑顔のルナがこちらを見ている。オートマタの最期を考えて、人間の自分が悲観的になる必要はない。ルナはそう言いたいのだろう。彼女の頬の歯車はクルクルと回っていた。



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