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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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抗アレルギー薬

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

「ツムギさん、ツカサさん、食事のお時間です」

 マシンルームの中には小さな机が持ち込まれていた。ツムギの前には、フルーツの、桃の缶詰が開けられている。ラビが探索で見つけてきたものだ。


「おいしい」

 舌鼓をうつツムギ。そして、目の前には苔のスープ。


「……」

 ツムギを助けた後、最初の食事くらいは美味しいものを食べさせて上げたいという気持ちはあった。なので缶詰を用意してあげてください、とルナに伝えたのは他ならぬツカサだ。ただ確かにこの伝え方は『僕は苔のスープでいいので』と受け取れたかもしれない。大人しくスープに口をつける。


 苦い。ツムギが少しうらやましかった。

 食事を終えてすぐ、ラビがマシンルームにやってきた。小さな入口から入ってくる。


「ルナ!薬箱、見つけた!」

 手には薬箱。


「ありましたか」

 そして、とても短い手紙。


『ここへ来た方へ。

 捜索隊の物資を残して行きます。

 ご自由にお使いください』


「これは……」


「解散当時の捜索隊のことはわかりませんが、捜索隊が解散されてもまだ個人で捜索を継続する人たちがいたとニュースで見たことがあります。

 そういった方々のために捜索隊の物資を置いていったのでしょう。ここから資材を持って上がるのもそれ相応に大変ですし。持って帰ってもそれで誰かが助かるほど、アクシスノースは困窮していないでしょうから」

 ルナが薬箱から一つ一つ袋や箱を取り出す。おそらく薬の名前と有効期限を確認しているのだろう。


「ありました。

 アリアの大気に含まれるアレルゲン用の抗アレルギー薬ですね。有効期限も問題ありません。

 というわけでツカサさん。ツムギさんに注射を打ってもいいでしょうか?」


「……はい。お願いします」

 注射器の入った袋を破き、注射器を取り出す。針をつけて薬瓶に差し込み、薬瓶から薬剤を移す。針を上へ、ピンと指ではじくと中の気泡が針の方へ登ってゆく。


「ツムギさん。こちらへ来てもらえますか」

 あからさまに嫌な顔をするツムギ。注射をみて何をされるか分かってるのだろう。

 そういえば、ツムギは注射が苦手だったことを思い出す。ミラに搭乗する日も搭乗準備室で同じような顔をしていた。


「ほら、怖くないから」

 そう言ってルナの方へ。ツムギがこちらを見上げる。


「大丈夫」

 なるべく笑顔で、そう言って頭を撫でてやると、ツムギが小さくうなずいた。


「すぐに終わりますからね」

 上腕部を軽く紐で縛り、静脈を浮かせる。


「チクッとしますよ」

 静脈の場所を確認して、すっと針を差し込む。わずかにツムギが顔をしかめたものの、泣き出すことはなく、じっとしていた。


「はい、終わりました」


「手慣れてますね」


「いえ、初めてです」


「え?」


「人類に静脈注射を打つのはこれが初めてです」


「……なるほど、オートマタだから知識として持ってるんですね。すごいな」

 注射を打ったことがないのに、記憶として沢山の注射を経験できる。当たり前のことだが、改めて便利だな、そう感じる。


「いえ、マーニーが大量に持っていたドラマの中に医療ドラマがありまして。

 それを真似ただけです」


「ん?」

 情報が多すぎて、何から咀嚼すればいいのかわからない。


「ふふ、冗談ですよ。簡単な医療の知識は持っています。

 ただ、人類に静脈注射を打ったのは本当にはじめてなので少し緊張しました」


「そう、ですか」


「あ、マーニーが10ペタバイトのアニメやドラマを隠し持っていたのも本当です。

 移民後の人類にも娯楽は必要ですから持っているだけなら、何も悪いことではないのですが。マーニーはかなりの年月をその視聴に費やしていたことがばれまして、アルテミシアが『このミッションを何だと思っているのですか!』と。

 ……あの時は大変でしたね」


 ルナが遠い目をしていた。

 1時間の4K動画を見るのに使用する通信量は大体10Gバイト。1ペタバイトは10,000,000Gバイトなのでおよそ1,000,000時間の動画に相当する。1日は24時間、1年は365日。1,000,000 ÷ 24 ÷ 365 = 約114年。地球を出てアリアにつくまでの時間は約110年。


 きっと本当のことなのだろう。なんとなくそう思った。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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よろしくお願いいたします。

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