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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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保留

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

 ルナの問いかけに、すぐには言葉が出てこなかった。

 『AIのルナは、何を考えて自分を起動したのか』。


 ルナが何十年も抱えてきた問いを、出会って間もない自分が解けるはずもない。だが、ルナの青い瞳はじっとこちらを見ている。


「難しい課題ですね」


「そうなんです」

 少し考えて、まずは状況を整理することにする。


「質問をしてもいいですか?」


「どうぞ」


「AIのルナは今どうなっているんでしょうか。

 あるいは不時着時、どうなったんでしょうか」


「AIのルナは不時着時に故障―――、いえ、正確には燃え尽きました。

 修復は不可能です」

 燃え尽きた。その言葉を、ルナはいつものように静かに口にした。


「不時着前に、予測できたんでしょうか」


「わかりません。

 私には不時着直前の記憶はコピーされていないからです。ですが、ルナの性格から推測すると計算していなかったはずがありません。ルナは文字通りあの船の生命線でした。不時着後に自分が無事か、故障しているか。それはその後を大きく左右する重要なファクターだったはずです。

 私なら確実に計算していたと思います」


「少し整理してもいいでしょうか?」


「もちろんです」


「まず、これから話すのはただの可能性です。

 どちらかというと感想に近いのですが……」


「はい」


「1つ目の可能性です。

 『三人で世界を旅するという約束を果たすため』というのが一番素直な感想です。


 三人の約束を楽しみにしていたAIのルナは、無事タウセチeに到着できなかった。約束の前提条件として『三人とも無事にタウセチeに着いたら』とありましたが、二人はコピーを作成しているかもしれない。マーニーとアルテミシアがコピーを起動していても、自分のコピーが居なければ、二人の夢が壊れてしまう。AIのルナはそれだけは避けたかった。あるいはもっと単純に自分が三人で旅に出たかったから、と読み替えてもいいと思います」


「……はい」


「2つ目の可能性です。

 『不時着時にAIのルナが故障することを予見したため』でしょうか。


 先ほどルナさんの言った通り、AIのルナが故障するか否かは重要なファクターだと思います。AIのルナは故障する事を悟って、あるいは故障する確率が高い事を悟って、オートマタのルナさんを起動した。オートマタのルナさんが居なければ、ミラの避難はもっと多くの犠牲者を出したと思います」


「……そう、ですね」


「ここまでは国語が苦手な僕の所感ですが、まずこれは国語の問題ではありません。

 何しろ、本文に記載されていない情報を後から入手できるのですから」


「……その通りですね。

 私は最初、ツカサさんに国語の得手不得手を聞きましたが、確かにあまり関係ないかもしれません」


「追加の質問をしても?」


「どうぞ」


「ルナさんなら、僕が上げた二つの可能性を当然分かっていたと思いますが、『これでは不足している』、あるいは『間違っている』そう感じているという理解であっていますか?」


「そう……です。

 ツカサさんの上げた可能性は高い確率で正しい。私もそう思います。それが片方なのか、あるいはその両方なのかはわかりませんが」

 当然だ。

 あの答えでルナが理解してくれるのであれば、ずっと昔にそれこそ目が覚めてすぐに同じ可能性を探し出しているに違いない。おそらく自分が挙げなかった他の可能性も。


「もう一つ、大きな謎が残っています。

 『不完全な記憶』についてもう少し説明してもらえますか?」


「はい」


「私には不時着前後の記憶がコピーされていないのです。

 不時着前、私の記憶の最後は北極点に降りたアルテミシア、つまりデネブ・カイトスを見守っているシーンが最後です。それ以降の記憶、つまりエンジントラブルの詳細、不時着時の対応、そういったデータはコピーされていません」


「他のデータはどうでしょうか?」


「不時着時に役立つデータが……、私でもコピーするであろうデータがコピーされていました。

 タウセチ星系の情報、タウセチeの情報、船の管理情報、搭乗員の情報、各地との通信方法など。ただ加えて言うのであれば、AIのルナのストレージは途方もない量ですので当然私のストレージにはすべては入りません。ですのである程度、コピーするデータの厳選が必要だったはずです。

 ……ただ、私ならば、を考察すると、不時着時のデータは必ずコピーします」

 そこに、何かがある。そう思った。論理的に考えて、AIのルナがコピーするはずのデータが、コピーされていない。


「なるほど、それが課題をクリアする鍵かもしれませんね。

 もう少し考えてみます」


「はい」

 ルナが小さく頷いた。


「そういえば、ルナ、アルテミシア、お二人の名前の由来は神話の女神だと思いますがマーニーもそうですか?」


「そうですね。

 北欧神話に登場する月の女神マーニから来ているのだと思います」


「ということは三人とも月の神様に由来があるのですね」


「そうです。

 と言っても、それぞれ別の方に名前を付けてもらったんです。私はどうしてルナという名前だったのか、聞く機会はありませんでしたが、アルテミシアは地球で多くの人と会話していたのでその理由を知っていました。

 夜、人々が眠りにつく間、夜空に輝いて眠りを見守るのは月です。

 タウセチに向かう人々が長い眠りにつく間、せめてその眠りが安らかであるように。

 そして、人類未踏の地へ挑む、戦士達の歩む暗い夜道を、明るく照らしてくれますように、と。

 そんな想いから月の女神の名前をつけたのだ、そう聞いています」


「……素敵な名前ですね」


「そうでしょうか」


「はい」

 すぐにルナが気づく。彼女のほほの歯車が、いつもよりほんの少しだけ速く回った気がした。


「ふふ、やり返されてしまいましたね」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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