ツムギ
はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。
本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。
https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896
ツムギを寝かせた後、ルナと少しだけ雑談をした。主な話題はこれからの事。
「夜になってから大空洞を出発しますが、向かう先は北が良いでしょう。
アクシスノースにはツカサさんのお兄さん、タクミさんがいらっしゃることですし、これからのお二人の生活のことを考えるとアクシスノースが一番有力な候補地になるかと思います」
「それはそうですね。
その後、みなさんはどうされるつもりなんでしょう?」
「まだ細かいことは考えていないのですが、また今までのような生活に戻るつもりです。グリムと機関車両は本格的な修理が必要でしょうから、しばらくはアクシスノースに留まるかと思います。
すぐに会えなくなったりはしませんので、そこは安心してください」
「……ツカ兄……?」
気づくとツムギの目が開いていた。数時間前まで熱があったからか、声が少しかすれている。頬はピンク色で、まだ微熱があるのかもしれない。
「うん。おはよう。ツム。
大丈夫か?」
「……うん……なんかね。
……夢見てた」
視線を天井に移して、思い出すように言うツムギ。
「どんな?」
「……水の中にいて、ふわって上がってくの。
ぜんぜん怖くなくて……、あったかかった……」
「……僕も見たよ。多分、同じ夢」
「ツカ兄も……?」
「お二人は……『星の記憶』という言葉をご存じですか?」
「……わかんない」
「僕も聞いたことがありません」
「ある種の臨死体験をすると、多くの人が似たような夢を見るんだそうです。
暗く冷たい水底にいて、ゆっくりと明るい水面に向かって浮かび上がっていく、そんな夢だそうです」
「はじめて聞きました」
「……私も……」
「地球でもあるんですよ。
ただ、夢の内容は少し違うそうですが」
「違うんですか?」
「はい。なんでも川の畔に立っていて、川や川の向こう側を静かに眺めている、そんな夢だそうです。
ときには既に亡くなった方とお会いすることもあるのだとか……」
「ん?
もしかして三途の川ですか?」
「あ、それですね。
当然私には経験がないのですが、地球上で臨死体験をした方は、どこの国でも同じような川の夢を見ることがあるのだそうです」
「へぇ……」
「そして、ここアリアでは―――水底の夢を見るんです。
一部では、星が自分の記憶を夢という形で伝えているのだ―――、と。
なので、『星の記憶』と呼ばれているんです」
「……なんか、素敵……」
「ふふ、そうですね」
「たしか、三途の川は星の磁場が脳に影響を与えていることが立証されていませんでしたっけ?」
「ツカ兄……、台無し……」
「ふふ」
「さ、ツムギさん。
まだ少しだけお熱があるようです。
あまり無理はせず、もう少しだけ休んでください」
「……うん」
頭を撫でてやる。
汗をかいていたのだろう、ツムギを撫でた手は少しだけ湿っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ツムギが無事目覚めました。本作における前半はここまでということになります。
後半のものがたりが次回から始まります
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