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黄昏急行 ~昼が来れば焼け死ぬ星で僕は仲間と旅をする~  作者: わけあり団子


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オペラ座

はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。

https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896

 大空洞に降りてからしばらく経つと、少し前まで灼熱の世界にいたのが嘘のように肌寒いと感じるようになった。周辺を眺めるとラビが集めてきたものの中に毛布があったのでそれを拝借して肩にかける。


「よう」

 大きな荷物、核融合炉を抱えたグリムだった。自分とツムギが格納されていた空洞にあったもので間違いないだろう。少し離れたところに抱えた核融合炉を下ろす。


「グリムさん、これ借りてもいいですか?

 少し―――。」


「どうぞ!」

 元気な声がして振り返ると、ラビがいた。


「ただいま!」


「おかえり、ラビ。それと、ありがとう」


「どういたしまして!」

 ピョンピョンと跳ねるように駆けてくる姿はウサギにも見えるが、大きさを考えると子供のカンガルーのようにも見える。そしてラビの手には大きな電球。


「いいもの見つけた!」


「お」


「それは―――」

 なんですか、と言いかけた言葉が途中で消える。後ろからルナの声が聞こえた。


「あら、みんな揃いましたね」

 振り返るとルナさんとエドガーだった。


「ルナさん、おかえりなさい」


「ただいま戻りました。ツカサさん」

 ラビが持っていた電球を差し出し、グリムが受け取る。


「ルナ、ラビが面白いもんを拾ってきたぞ。

 ミラの船内でつかわれてたLED電球だな、どうやらまだ使えそうだ」


「なるほど、余ってるケーブルがあれば使えそうですね。

 ラビ、すみませんが使えそうな電源ケーブルがどこかに落ちてないか探してみてもらえませんか?」


「向こうにあったから、拾ってくる!」


「どうするつもりなんですか?」


「ふふ、秘密です」


「取ってきた!」

 ラビの持ってきたケーブルをグリムが裂き被覆を剥ぐ。受け取ったルナが裂いた二つのケーブルの先端に何かを取り付け、グリムが電源にケーブルを接続した。


「行きますよ」

 ブンという音と共に、これまで闇に閉ざされていた視界が広がった。

 電球から放たれた光は空洞内を照らし、今まで闇に隠れていた大空洞の全容が見て取れた。こうしてみるとミラ大空洞の形が縦に長いオペラ座だとルナが形容した意味がよくわかる。流石に最上階席の列車は見えないが、最上階から急斜面で降りた先が5階席、そして4階席、3階席、2階席、そして今居るフロア席のようになっている。それぞれの階の奥行きは20mほどだろうか、上に行くほど奥行きは狭まっているように見えた。一番下の客席からステージまでは100mほど。どの客席もゆっくりと今いる辺りに向けて傾斜しており、赤いビロード張りの客席を並べればそのまま観劇ができそうに見えた。そして振り返ると一段高くなったステージがあり、ステージの上には大きな黒い金属製の人工物。


「ルナさんがオペラ座と例えた理由がわかりました」


「……そうですね」


「……あれは」

 墓にしか見えない。分かってはいたが、この目で確かめたかった。

 すぐ近くの棒に近づいてみると、黒い石でできた四角い棒の表面には、文字が刻まれている。『ウィリー・クライン ここに眠る』と書いてあった。隣の棒には『リチャード・ヤン ここに眠る』。

 思い出せないが、ひょっとしたら彼らと知り合いだったりしたのだろうか。そして、何か一つ違っていればここに眠っていたのは自分で、助け出されたのは彼だったかもしれない、そんな恐怖。


「……ここは墓地でもあるんですね」


「そのようです」


「カァ」


「舞台の上に慰霊碑のようなものがあると。

 行ってみますか?」


「はい」

 ルナに促されオペラ座でいうところのステージの階段を上がると広い広場だった。奥には黒い巨大なコンテナのような人工物。


「あれはなんですか?」


「あれはミラの中央制御室です。

 ミラ不時着時、この大空洞の天井部分が崩壊しまして、あの中央制御室が落ちそうになったんです。あれが落ちてきたら危ないと思ったんでしょうね、捜索隊の方々が上から降ろしたんでしょう」


「中央制御室……」


「先ほど、中央制御室の周りを調べてみましたが、こじ開けたような形跡もなくきれいなものでした。コンソールルームには立ち入った形跡がありましたが、メインのストレージルームには誰も立ち入っていないようですね」


「どうしてでしょう。

 中には高性能の演算装置や膨大なストレージがあるのでは?」


「演算装置はありません。膨大なストレージだけです」


「ストレージだけ……」


「演算装置のあるコンピュータルームは不時着時に燃え尽きてしまいましたので……。

 ここにあるのはストレージルームとコンソールルームだけになりますね。そして、ストレージルームが放置された理由ですが、単純にそれほど価値を見いだせなかったのだと思います。


 捜索隊は北のアクシスノースに本部がありましたので、ここで入手したストレージは基本的にアクシスノースに運ばれるわけですが、アクシスノースには移民船バテン・カイトスがあります。人類が必要なデータであれば基本的にバテン・カイトスも所持しているはずです。全くの無価値とは言いませんが、大変な苦労をしてまで既に所持しているデータを持ち帰る方は居ないでしょう。


 仮にあの中のデータがほしい人が居たとしても、すべてのデータはコンソールルームからダウンロードできますしね。そう考えればこの頑丈な箱に、捜索隊が価値を感じなかったのも頷けます」

 ルナの説明を受けながら広場の奥に設置された階段を登ると、そこには幅が3m、奥行きが30mほどの空間にでた。


「カァ」

 ここだ、と言わんばかりにエドガーの正面に、見上げるほどの大きな黒い石碑。石碑には数え切れないほどの名前が刻まれていた。


「ここに眠っている方々の名前です」


「こんなに……」


「……はい」

 手を合わせ頭を下げる。

 振り向くとオペラ座の全容が見えた。


「これだけ……広い空間なら1万のポッドも収納できたのでは?」


「そう、ですね。物理的には可能かもしれません。

 ですが、あのオペラ座の天井部分からロープで一つ一つポッドを降ろしたんです。もちろん後半は滑車を作り一度に複数のポッドを下ろせるようにしましたが、それでもとてもすべては降ろせませんでした。それを待つくらいなら別の空洞に移したほうが速い。

 わかりますか?」


「はい」

 振り返るとルナが天井を見上げていた。ルナの視線を追って天井を見上げる。


「高いですね……」


「はい」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

大空洞の全容が見れる回になります。ランタンだけではちょっと暗いでしょうしね。


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