大空洞
はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。
本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。
https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896
エドガーはすぐに戻ってきた。
大空洞の高さは大体500mほどで、最下層の温度は20度前後に保たれており、空気も正常とのことだった。おそらく最優先事項だけを伝えに戻ったのだろう。それだけを伝えて再び調査に飛び立っていく。
列車を残し、全員で大空洞を下る。
ルナいわく、大空洞は底の深いオペラ座のような作りになっているらしい。客席が舞台を取り囲むように円形に配置され、上から下に向かって深くなっていく。今は最上段の入口から、客席の階段を下りているところらしい。といっても人間の目には真っ暗な空間が広がっているだけのように見える。
通路と階段は整備されており、階段部分には落下防止柵が付いていた。間違って転んでも落ちることはなさそうだ。何度かつづら折りの階段を下ると平坦な通路に出る。
前を歩くグリムは左腕でポッドを肩に抱えているが、重量のバランスが悪く、体を大きく傾けて歩いていた。
「グリムさん、大丈夫ですか?」
「おう、これでも毎日ダンベルで鍛えてるんでな」
「……それって、効果あるんですか?」
思わずツッコミを入れてしまう。
「効果もありませんし、列車にダンベルも置いてません。
グリム、きつくなったら言ってください。
少し休憩しましょう」
ツッコミを入れるべきなのか悩ましい。ルナを見ると笑みを浮かべてこちらをみている。
「……それって効果あるんですか?」
「クククッ、ツカサもわかってきたな。オートマタが休憩しても何も回復なんかするもんか」
思わず苦笑いになった。
「いつもこんな会話を?」
「ここ2年、割と暇してましたからね。
ですが、ツカサさん」
「はい」
「きつくなったら言ってください。
少し休憩しましょう」
「はい」
人間なので素直に頷いておいた。
結局、5度の休憩を挟み3時間掛けて大空洞の一番深いところまで階段を降り続けた。数時間前まで死と隣り合わせの灼熱と轟音の中に居たのが嘘のような、涼しさと静寂の世界が広がっていた。階段を一番下まで降りた場所は少し下り傾斜があり、100mほど奥へと進むと広場のような場所に出る。
広場には捜索隊が置いていったのだろうパイプ椅子と机が置かれてあった。
「18日後、地上は昼から夜に変わります。そのタイミングで私たちも脱出しましょう。
それまでは、ここでキャンプですね」
ふと気づくとグリムが大空洞の上、来た道を見上げている。
「それにしても……。
またここに来ることになるとはな。これが懐郷の念ってやつか?」
「どうでしょう。
ただ嫌な事を思い出してるだけかもしれません」
「はは、有り得るな」
「何かあったんですか?」
「……まぁ、いろいろとな」
「そう……ですか。
それにしても、こんなに歩いたのは180年ぶりです」
「年寄りだ!」
「ラビ、年寄りは酷いだろ。
とは言え、おそらく相当なご高齢であらせられるからな。
後期高齢者でいいんじゃないか?」
「ラビもグリムも、酷いですよ。
せめてお爺さんくらいにしてあげなさい」
ルナが笑顔で椅子を広げ、横に置いてくれる。
「さ、お爺さん。足が疲れたでしょう。
椅子をどうぞ」
「思ったより、来るものがありますね。
やめればよかった」
「ふふ、冗談ですよ。本気になさらないでください。
グリム、こっちへ。
列車から部品をいろいろ持ってきました。
直せるものは直してしまいましょう」
「ああ、悪いな」
「ラビ、すみませんがこの辺りの探索をお願いします。
最優先はツカサさんの食料ですね。
その後は私と一緒に細々としたものを列車から運んでしまいましょう」
「わかった!」
「そういえば、エドガーは?」
「空洞の内部をある程度は把握しておきたいので、地図の作成をお願いしています。
私は、ツムギさんの解凍ですね」
「ここで解凍して大丈夫なんでしょうか」
「ポッドの耐久も180年なのです。なので、万が一を考えると早めに解凍しておいたほうがいいと思います」
「わかりました。お願いします」
「はい」
自分がどうしてアクシスノースで解凍されなかったのか、少し考えたことがある。
同じ理由なのだろう。
ルナがポッドに近づき操作パネルを操作する。5分と時間はかからなかった。
「……あとは12時間ほど待つだけですね」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
前回に引き続き大空洞を下るシーンになりますが、会話がこれで面白く感じてもらえるのか、不安になった場所でもあります
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