問題点
はじめまして、本作を開いて頂きありがとうございます。
本作品はカクヨムでも投稿しています。小説の内容は一切差はありません。
https://kakuyomu.jp/works/2912051599391516896
「ツカサさん」
空洞の入口から声がして振り返ると、そこにはルナと彼女の肩に止まるエドガーの姿があった。本来であれば二人は近くのターンテーブルで列車を再び西に向けた後、すぐに合流する予定だった。
「ルナさん、遅かったですね。何かありましたか?」
「はい、少し予想外の出来事がありまして。
……計画を大きく変更しようと思います」
静かにそう言ったルナの青い瞳は真剣そのものだった。何から話そうか悩んでいるのだろうか、やや間があってルナが再び口を開く。
「ツカサさんは、ダウンバーストという言葉をご存知ですか?」
「えっと……積乱雲で冷やされた空気が圧縮されて重くなり、重くなった冷たい空気の塊が地面に向かって、一気に降下してくる気象現象ですか?」
「そうです、それです。
地球ではダウンバーストが原因で航空機が墜落することもあったと聞いています。
ただアリアでは……特に北半球は乾燥した場所ですので積乱雲は発生しません。代わりに猛烈な吹き下ろしの風を総じてダウンバースト、そう呼ぶのです。
普通に考えれば上空の冷たい空気が地表付近に降りてくるため、今の私たちにとって渡りに船のように感じるかもしれません。ですが、ここアリアでは冷やされる前の熱い空気とは、500~600度の超高温の空気のことなのです。
冷やされた空気といっても……」
ルナが言いたいこと、そして言いにくいことはすぐにわかった。
「その風は僕達にとって……いえ、僕にとって致命的な高温の風が降ってくる……」
「そうです」
「そもそもの予定ではツムギさんを助け出した後、私たちは西へ逃げる予定でした。
あの列車で全力で走れば昼と夜の境界線、いわゆるハビタブルゾーンに復帰するまでの時間はおよそ4時間。ツカサさんにはその間、冷水の入った水筒と客車のコンパートメントで耐えてもらうつもりでした。ただご存じの通り、あのコンパートメントは仮設のハリボテ、言ってみれば穴だらけの状態です。
もしダウンバーストが発生すれば5分~15分は上空からの風が吹き続けます。
あの個室ではとても防ぎきれないでしょう」
疑問が浮かぶ。が、聞くのは少し怖かった。でも聞いておくべきだと思った。
「ダウンバーストが発生すると僕はどうなるんでしょうか」
「一呼吸するだけで気道と肺が焼かれ、息を止めていても一分もすれば全身に重度の火傷を負います」
「つまり……」
「ツカサさんが助かる見込みはありません」
覚悟していたつもりでも、はっきりと「助かる見込みはない」と告げられると、足元が抜けるような恐怖があった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
前章で触れた風が人間にとって致命的であることが明かされるシーンです。強烈な吹き下ろしの風をダウンバーストと呼ぶ点に関しては賛否あるかもしれませんね。
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